49 / 83
第一歩
しおりを挟む
宿屋では、部屋を譲った二人連れと、晩御飯も一緒に食べる事になりました。
全員揃ったところでアルが尋ねました。
「ところで名前は?聞かない方が良いのかな?であれば、何と呼んだら良いか教えてもらえる?」
相手はどこの国のとかも分からない、されど着ているものや所作から高位貴族と思われ。
それが従者と二人きりで旅というのも、訳ありとも考えられるので、名乗るかどうかを相手に尋ねた。
「宜しければ私の事はハルと呼んでいただければ。
彼は供をしてもらっているダレンだ。そちらは?」
「私はアルフレッド、アルと呼んでくれ。彼女はマリーナ、私たちはリーナと呼んでいる。
そしてレイモンド、レイ、レイの弟のアンドリュー殿、リーナの侍女兼護衛のマーサ、護衛のダン、ロニー、マイカ、御者をしてもらっているジム、ショーン、ラルフ、エミリオだ。
私とレンとリーナはまあ…幼馴染みたいなものだな…。」
「友と大勢で旅とは羨ましいな…。」
「まあ遊びではないのだけれどな。
俺…私…すまないが、普段通りの喋り方でも良いか?堅苦しいのは苦手なんた。」
「あぁ、もちろん、気を使わないでくれ。」
「ありがとう…それで俺とリーナが、この国の学校へ留学をしようとしていて、今回はその受験のために来ているのだ。」
「レイやアンドリューは留学しないのか?」
「レイたちはまだ今回は、あちこち見て回って、それからだな、この先の事を考えるのは。」
自己紹介をしている間に、頼んだ料理が運ばれ始めたので、暫くは食事に集中した。
隣国で陸続きとはいえ、やはり多少は料理なども変わってくる。
トマトソースで煮込んだ、まるで米粒のようなパスタが出てきた。
心の中で、前世でギリシャで食べたパスタの様だと感動していると、レイが言った。
「これは我が国の南の方の離島にあるパスタと似ているね。
形状は異なるけど、この粒粒なのが似てる…。」
「え?!そうなの?!レイ、その離島へ行ったことがあるの?凄いもの知りだね!」
驚いて言うと、何でも、まだアンドリュー様が生まれる少し前に、家族旅行で行ったのだとか。
かなり幼い頃の思い出で、初めて見た時、その粒粒の見た目をまるで鳥の餌だと思ったのだとか。
ところが食べてみたら、とても美味しくて、滞在中は毎日のように食べたがったのだそうです。
「あの島へ隠居するのもありかな…。」
レイがボソッと呟くのを、私は聞き逃しませんでした。
「いやいや!隠居するのはまだ早いでしょ…。人生これからよ!」
レイは返事はせずに、寂しそうに微笑んでいましたが…でも私は騙されませんよ…。
その夜は他愛ない話で過ごしました。
翌朝は、私たちも、ハルとダレンも、出立は早かったので、宿屋の前でお別れしました。
「いつかまた会うことがあれば、また食事でもしよう!
それと今回、俺たちはここに滞在するし、今回の受験で失敗しなければ、また一ヶ月後にはここに戻ってくる。
もし、近くに来ることでもあれば、連絡してくれ!」
アルはそう言って、私たちが滞在する予定の、アルの叔母様の邸の住所をメモした紙を渡しておりました。
二度と会うことは無いかもしれないし、また会うかもしれないし…。
これもまた一つの旅の醍醐味かなと思います。
そして私たちはいよいよアルの叔母様の邸へ向けて、出発しました。
予定通りなら、午後のお茶くらいの時間までには着いているはず。
お天気にも恵まれ、順調に旅は進みました。
馬車の中では、相変わらずレイは、あまり話さず、少しボーっとしていて。
「ねえ…もしも可能なのであれば、レイもいっそ、留学してしまえば?
例え、1年とか2年とか3年でも、少なくとも私たちの国の社交界とは物理的に距離を置くことが出来ると思うんだけど?」
「それは難しいよ、リーナ…。私は嫡男だから…。」
「嫡男だと何で難しいの?」
「私たちの国では、嫡男は後を継ぐために父親や執事から領地経営を学ばなければいけないんだ。
それに留学すると、何かあってもすぐに帰る事は出来ないだろ?
だからどこの家も、嫡男を他国へはあまり行かせたがらないんだ。
今回、私が行かせてもらえたのも、妹の事もあったのと、マスターソン公爵のお陰なんだ。」
「アルの家でもお兄様は留学とかしていないの?」
「うちはそもそも叔母上が他国へ嫁いでいるし、父上の従兄弟たちで他国の貴族もいるから、兄上も他国へは行っているよ。
行っているけど、兄上の場合は短期留学だったな…。
一年間の期間限定で、俺たちが留学しようとしている学校と、それからまた別の国の学校へも同じく一年間の期間限定で留学したよ。
でも留学先の学校を卒業までというのは、兄上は無くて俺だからだな…。」
「そういうものなの?」
「そういうものだな…。」
「でも…この国の方が学校制度は進んでいるし、卒業出来れば家の為にもなると思うんだけどね…。」
皆が沈黙した…。
「兄上…父上に短期留学で交渉してみるのは如何でしょう?
それで兄上の成績が優秀であれば、勿体ないからそのまま卒業までと、更に延長する交渉も可能なのではないでしょうか?
我が家は男は私も居るのですから、代わりに私が父上の手伝いをし、将来は兄上の補佐をと説得すれば、いけるのではないでしょうか?
いや!今回の事で家に汚点を付けてしまった今だからこそ!他家とは異なる、新たな方法で家を盛り上げなくてはいけないのではないでしょうか?」
「それではお前が犠牲になってしまうだろ?」
「ふっ…兄上…甘いですよ。
兄上が留学できれば、私が留学するハードルも下がるのです。
兄上が帰国したら、入れ替わりで、私は短期ではない留学を目指します。
そして!あわよくば私は他国の高位貴族の元へ婿入りし、我が家をマスターソン家のように、他国とも太い繋がりを持つような家にしたいのです!
私は転んでも、ただでは起きませんよ。
次男には次男の強みというものがあるのです。
それは長男を見て、それを参考に上手く立ち回る事ですから!」
「アンドリュー…知らない間に随分、大人になったんだね…。」
馬車の中で、レイとアンドリュー様の将来についても、少しだけ話が出来、レイも少し明るくなったようでした。
先が見えないって辛いですからね。
そうこうしているうちに、アルの叔母様の嫁ぎ先である、ドナテッロ公爵家のお屋敷へ到着致しました。
いよいよここからこの国での第一歩が始まる!…はず!うん!始まるよね?!
これから受験なんだけど…受験に失敗したら、大きなチャンスが一つ潰れてしまうけど…。
でも大丈夫だよね!うん!大丈夫!
頑張ろう…受験もだけど、アルの叔母様ご一家に少しでも気に入られるように…。
頑張ろう…。
驚いた!門からお邸が遠い!お邸も最早まるで宮殿のよう!
これ、本当に貴族の邸?!という感じで。
こんなところに本当に滞在してしまって良いのかな?!私?
門をくぐり抜けて馬車が正面の玄関にたどり着く頃、玄関にはずらっと使用人の皆様が並びまして。
正直言って、どこのお偉い方々のお出迎え?という感じで、焦ってしまいました。
執事さんらしき方が、ご案内をしてくださいました。
「ようこそいらっしゃいました。アルフレッド様、お友達の皆様も。
どうぞ中へ、奥様と旦那様がお待ちです。」
「久しぶり!ジェラルド!皆を紹介するよ!
スチュアート侯爵家のレイモンドと、その弟のアンドリュー、フォーサイス伯爵家のマリーナ、そしてうちから連れてきた、マリーナの侍女兼護衛のマーサ、護衛のダン、ロニー、マイカ、御者はジム、ショーン、ラルフ、エミリオだ。
これから宜しく頼みます!」
「皆様、こちらこそよろしくお願い致します。さ!さ!どうぞ中へ!」
執事のジェラルドさんに促され、中へ入ると、何と!ドナテッロ公爵ご一家と思われる皆様が勢ぞろいしておりました…。
これは…何だろう?何故に勢ぞろい???うーん…深く考えるのは止めておこう…。
「遠いところをよくいらしてくださった。我が家だと思って、寛いでください。
あ、その前に家族を紹介するよ。
私がこの家の当主のジャン・マルコ・ドナテッロです。
気軽にジャンお兄様と呼んでくれたまえ!」
「父上!何を言っているんですか!」
「頭が固いなぁ。はぁ…。じゃあジャンで良いよ…。」
「いやいや!叔父上!そんな公爵なのに呼び捨てに出来るわけないでしょ!
もう良いや!俺が紹介します。
叔父の事は…ジャン・マルコとでも呼んでやってください。
そして俺の父の妹で、叔母のリサ・マリー・ドナテッロ公爵夫人です。」
「私の事はリサと呼んでね!勿論、お姉さまでも良いわよ!」
「叔母上…。
えっと…ドナテッロ家の長男で俺の従兄弟のフェデリコと、次男のアンドレアです。」
「兄上の事はフェデリコと、そして俺の事はアンドレア兄さまと呼んでくれると嬉しいな!」
ロングヘアを後ろで一つに結んだ金髪に、緑が買った綺麗な蒼い目の素敵な男性が、私の手を握って背中にキラキラの光を背負って仰いました。
私は返事に困って固まった…。
「おいおいおい!何を言っているんだ!お前は俺と同じ歳だろ!レイモンドだって同じ歳なんだ!
あ、これ、レイモンド…レイって呼んでやって!
それで何を初対面のリーナの手を握っているんだ!」
そう言ってその手を剥がしてくれました。
「え!?じゃあリーナちゃんはアルの事をお兄様って呼んでいるの?」
「呼んでませんよ…アルフレッド様はアル、レイモンド様はレイです。
レイの弟のアンドリュー様はアンドリュー様ですが…。」
「リーナちゃんは俺たちの幾つ下なの?」
「アルは15歳で私は11歳になりましたので、4つですね。
あ、アンドリュー様も私と同じ歳です。」
「リーナちゃん、可愛いね!アルの事はほっといて、俺の事はお兄様と呼んで良いんだよ、本当に!
俺、自分が下だからさ、お兄様って呼ばれたいんだよね…。」
「それを言うならリーナ!先ずは俺をアルお兄様と呼ぶべきだろ?!」
「え…アルは…アルだし…。」
「まあまあ!早速仲良しさんになって!良かったわ!
でも先ずはお茶でも頂きながらお話しましょ!」
「母上、先ずは一旦、それぞれの部屋に案内した方が良いのでは?」
ご長男のフェデリコ様が仰ってくださいました。
うん、先ずは部屋で一息…一息で良いので一息つきたい!
フェデリコ様は、シルバーブロンドの肩下のセミロングヘアにグレーがかった青い瞳に眼鏡の、とても知的なそれこそお兄様!と呼びたくなるような男性です。
フェデリコ様がこのご家族の中で、一番落ち着いて見える…。
「じゃあリーナちゃんは私が案内してあげるね…私の隣の部屋で良いかな?」
私の手を取って指先に口付けながら言われた瞬間、再びアルがその手を引き剥がしてくれました。
「フェデリコ兄さん!リーナはそういうの慣れていないんだから、止めてください!
っていうかフェデリコ兄さんの隣の部屋は、アンドレアの部屋でしょうが!」
「あ、覚えてた?でもさ、どうせなら可愛い子が隣の部屋にいた方が楽しいじゃない?」
「リーナ…フェデリコ兄さんは、黙っていれば、クールなイケメンに見えない事もない…が!信用しちゃいけない!
フェデリコ兄さんというか、この兄弟はいつもこんな感じなんだ!
女性が居たら、口説くのがマナーくらいに思っているから!」
あ、そうなんだ!前世のイタリア人くらいに思っておけば良いって事ね?!OK!
「アル!大丈夫だよ!私、社交辞令くらいは分かるから!」
結局、アルとレイ、アンドリュー様の部屋は、3人並びの部屋で、私の部屋は公爵夫妻の隣の部屋となりました。
留学が叶えば、こちらでお世話になる事になっております。
ここが新たな第一歩…。
全員揃ったところでアルが尋ねました。
「ところで名前は?聞かない方が良いのかな?であれば、何と呼んだら良いか教えてもらえる?」
相手はどこの国のとかも分からない、されど着ているものや所作から高位貴族と思われ。
それが従者と二人きりで旅というのも、訳ありとも考えられるので、名乗るかどうかを相手に尋ねた。
「宜しければ私の事はハルと呼んでいただければ。
彼は供をしてもらっているダレンだ。そちらは?」
「私はアルフレッド、アルと呼んでくれ。彼女はマリーナ、私たちはリーナと呼んでいる。
そしてレイモンド、レイ、レイの弟のアンドリュー殿、リーナの侍女兼護衛のマーサ、護衛のダン、ロニー、マイカ、御者をしてもらっているジム、ショーン、ラルフ、エミリオだ。
私とレンとリーナはまあ…幼馴染みたいなものだな…。」
「友と大勢で旅とは羨ましいな…。」
「まあ遊びではないのだけれどな。
俺…私…すまないが、普段通りの喋り方でも良いか?堅苦しいのは苦手なんた。」
「あぁ、もちろん、気を使わないでくれ。」
「ありがとう…それで俺とリーナが、この国の学校へ留学をしようとしていて、今回はその受験のために来ているのだ。」
「レイやアンドリューは留学しないのか?」
「レイたちはまだ今回は、あちこち見て回って、それからだな、この先の事を考えるのは。」
自己紹介をしている間に、頼んだ料理が運ばれ始めたので、暫くは食事に集中した。
隣国で陸続きとはいえ、やはり多少は料理なども変わってくる。
トマトソースで煮込んだ、まるで米粒のようなパスタが出てきた。
心の中で、前世でギリシャで食べたパスタの様だと感動していると、レイが言った。
「これは我が国の南の方の離島にあるパスタと似ているね。
形状は異なるけど、この粒粒なのが似てる…。」
「え?!そうなの?!レイ、その離島へ行ったことがあるの?凄いもの知りだね!」
驚いて言うと、何でも、まだアンドリュー様が生まれる少し前に、家族旅行で行ったのだとか。
かなり幼い頃の思い出で、初めて見た時、その粒粒の見た目をまるで鳥の餌だと思ったのだとか。
ところが食べてみたら、とても美味しくて、滞在中は毎日のように食べたがったのだそうです。
「あの島へ隠居するのもありかな…。」
レイがボソッと呟くのを、私は聞き逃しませんでした。
「いやいや!隠居するのはまだ早いでしょ…。人生これからよ!」
レイは返事はせずに、寂しそうに微笑んでいましたが…でも私は騙されませんよ…。
その夜は他愛ない話で過ごしました。
翌朝は、私たちも、ハルとダレンも、出立は早かったので、宿屋の前でお別れしました。
「いつかまた会うことがあれば、また食事でもしよう!
それと今回、俺たちはここに滞在するし、今回の受験で失敗しなければ、また一ヶ月後にはここに戻ってくる。
もし、近くに来ることでもあれば、連絡してくれ!」
アルはそう言って、私たちが滞在する予定の、アルの叔母様の邸の住所をメモした紙を渡しておりました。
二度と会うことは無いかもしれないし、また会うかもしれないし…。
これもまた一つの旅の醍醐味かなと思います。
そして私たちはいよいよアルの叔母様の邸へ向けて、出発しました。
予定通りなら、午後のお茶くらいの時間までには着いているはず。
お天気にも恵まれ、順調に旅は進みました。
馬車の中では、相変わらずレイは、あまり話さず、少しボーっとしていて。
「ねえ…もしも可能なのであれば、レイもいっそ、留学してしまえば?
例え、1年とか2年とか3年でも、少なくとも私たちの国の社交界とは物理的に距離を置くことが出来ると思うんだけど?」
「それは難しいよ、リーナ…。私は嫡男だから…。」
「嫡男だと何で難しいの?」
「私たちの国では、嫡男は後を継ぐために父親や執事から領地経営を学ばなければいけないんだ。
それに留学すると、何かあってもすぐに帰る事は出来ないだろ?
だからどこの家も、嫡男を他国へはあまり行かせたがらないんだ。
今回、私が行かせてもらえたのも、妹の事もあったのと、マスターソン公爵のお陰なんだ。」
「アルの家でもお兄様は留学とかしていないの?」
「うちはそもそも叔母上が他国へ嫁いでいるし、父上の従兄弟たちで他国の貴族もいるから、兄上も他国へは行っているよ。
行っているけど、兄上の場合は短期留学だったな…。
一年間の期間限定で、俺たちが留学しようとしている学校と、それからまた別の国の学校へも同じく一年間の期間限定で留学したよ。
でも留学先の学校を卒業までというのは、兄上は無くて俺だからだな…。」
「そういうものなの?」
「そういうものだな…。」
「でも…この国の方が学校制度は進んでいるし、卒業出来れば家の為にもなると思うんだけどね…。」
皆が沈黙した…。
「兄上…父上に短期留学で交渉してみるのは如何でしょう?
それで兄上の成績が優秀であれば、勿体ないからそのまま卒業までと、更に延長する交渉も可能なのではないでしょうか?
我が家は男は私も居るのですから、代わりに私が父上の手伝いをし、将来は兄上の補佐をと説得すれば、いけるのではないでしょうか?
いや!今回の事で家に汚点を付けてしまった今だからこそ!他家とは異なる、新たな方法で家を盛り上げなくてはいけないのではないでしょうか?」
「それではお前が犠牲になってしまうだろ?」
「ふっ…兄上…甘いですよ。
兄上が留学できれば、私が留学するハードルも下がるのです。
兄上が帰国したら、入れ替わりで、私は短期ではない留学を目指します。
そして!あわよくば私は他国の高位貴族の元へ婿入りし、我が家をマスターソン家のように、他国とも太い繋がりを持つような家にしたいのです!
私は転んでも、ただでは起きませんよ。
次男には次男の強みというものがあるのです。
それは長男を見て、それを参考に上手く立ち回る事ですから!」
「アンドリュー…知らない間に随分、大人になったんだね…。」
馬車の中で、レイとアンドリュー様の将来についても、少しだけ話が出来、レイも少し明るくなったようでした。
先が見えないって辛いですからね。
そうこうしているうちに、アルの叔母様の嫁ぎ先である、ドナテッロ公爵家のお屋敷へ到着致しました。
いよいよここからこの国での第一歩が始まる!…はず!うん!始まるよね?!
これから受験なんだけど…受験に失敗したら、大きなチャンスが一つ潰れてしまうけど…。
でも大丈夫だよね!うん!大丈夫!
頑張ろう…受験もだけど、アルの叔母様ご一家に少しでも気に入られるように…。
頑張ろう…。
驚いた!門からお邸が遠い!お邸も最早まるで宮殿のよう!
これ、本当に貴族の邸?!という感じで。
こんなところに本当に滞在してしまって良いのかな?!私?
門をくぐり抜けて馬車が正面の玄関にたどり着く頃、玄関にはずらっと使用人の皆様が並びまして。
正直言って、どこのお偉い方々のお出迎え?という感じで、焦ってしまいました。
執事さんらしき方が、ご案内をしてくださいました。
「ようこそいらっしゃいました。アルフレッド様、お友達の皆様も。
どうぞ中へ、奥様と旦那様がお待ちです。」
「久しぶり!ジェラルド!皆を紹介するよ!
スチュアート侯爵家のレイモンドと、その弟のアンドリュー、フォーサイス伯爵家のマリーナ、そしてうちから連れてきた、マリーナの侍女兼護衛のマーサ、護衛のダン、ロニー、マイカ、御者はジム、ショーン、ラルフ、エミリオだ。
これから宜しく頼みます!」
「皆様、こちらこそよろしくお願い致します。さ!さ!どうぞ中へ!」
執事のジェラルドさんに促され、中へ入ると、何と!ドナテッロ公爵ご一家と思われる皆様が勢ぞろいしておりました…。
これは…何だろう?何故に勢ぞろい???うーん…深く考えるのは止めておこう…。
「遠いところをよくいらしてくださった。我が家だと思って、寛いでください。
あ、その前に家族を紹介するよ。
私がこの家の当主のジャン・マルコ・ドナテッロです。
気軽にジャンお兄様と呼んでくれたまえ!」
「父上!何を言っているんですか!」
「頭が固いなぁ。はぁ…。じゃあジャンで良いよ…。」
「いやいや!叔父上!そんな公爵なのに呼び捨てに出来るわけないでしょ!
もう良いや!俺が紹介します。
叔父の事は…ジャン・マルコとでも呼んでやってください。
そして俺の父の妹で、叔母のリサ・マリー・ドナテッロ公爵夫人です。」
「私の事はリサと呼んでね!勿論、お姉さまでも良いわよ!」
「叔母上…。
えっと…ドナテッロ家の長男で俺の従兄弟のフェデリコと、次男のアンドレアです。」
「兄上の事はフェデリコと、そして俺の事はアンドレア兄さまと呼んでくれると嬉しいな!」
ロングヘアを後ろで一つに結んだ金髪に、緑が買った綺麗な蒼い目の素敵な男性が、私の手を握って背中にキラキラの光を背負って仰いました。
私は返事に困って固まった…。
「おいおいおい!何を言っているんだ!お前は俺と同じ歳だろ!レイモンドだって同じ歳なんだ!
あ、これ、レイモンド…レイって呼んでやって!
それで何を初対面のリーナの手を握っているんだ!」
そう言ってその手を剥がしてくれました。
「え!?じゃあリーナちゃんはアルの事をお兄様って呼んでいるの?」
「呼んでませんよ…アルフレッド様はアル、レイモンド様はレイです。
レイの弟のアンドリュー様はアンドリュー様ですが…。」
「リーナちゃんは俺たちの幾つ下なの?」
「アルは15歳で私は11歳になりましたので、4つですね。
あ、アンドリュー様も私と同じ歳です。」
「リーナちゃん、可愛いね!アルの事はほっといて、俺の事はお兄様と呼んで良いんだよ、本当に!
俺、自分が下だからさ、お兄様って呼ばれたいんだよね…。」
「それを言うならリーナ!先ずは俺をアルお兄様と呼ぶべきだろ?!」
「え…アルは…アルだし…。」
「まあまあ!早速仲良しさんになって!良かったわ!
でも先ずはお茶でも頂きながらお話しましょ!」
「母上、先ずは一旦、それぞれの部屋に案内した方が良いのでは?」
ご長男のフェデリコ様が仰ってくださいました。
うん、先ずは部屋で一息…一息で良いので一息つきたい!
フェデリコ様は、シルバーブロンドの肩下のセミロングヘアにグレーがかった青い瞳に眼鏡の、とても知的なそれこそお兄様!と呼びたくなるような男性です。
フェデリコ様がこのご家族の中で、一番落ち着いて見える…。
「じゃあリーナちゃんは私が案内してあげるね…私の隣の部屋で良いかな?」
私の手を取って指先に口付けながら言われた瞬間、再びアルがその手を引き剥がしてくれました。
「フェデリコ兄さん!リーナはそういうの慣れていないんだから、止めてください!
っていうかフェデリコ兄さんの隣の部屋は、アンドレアの部屋でしょうが!」
「あ、覚えてた?でもさ、どうせなら可愛い子が隣の部屋にいた方が楽しいじゃない?」
「リーナ…フェデリコ兄さんは、黙っていれば、クールなイケメンに見えない事もない…が!信用しちゃいけない!
フェデリコ兄さんというか、この兄弟はいつもこんな感じなんだ!
女性が居たら、口説くのがマナーくらいに思っているから!」
あ、そうなんだ!前世のイタリア人くらいに思っておけば良いって事ね?!OK!
「アル!大丈夫だよ!私、社交辞令くらいは分かるから!」
結局、アルとレイ、アンドリュー様の部屋は、3人並びの部屋で、私の部屋は公爵夫妻の隣の部屋となりました。
留学が叶えば、こちらでお世話になる事になっております。
ここが新たな第一歩…。
653
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。
エミリーと精霊
朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。
名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。
絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。
王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。
最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。
私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。
えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない?
私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。
というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。
小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。
pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。
【改稿版について】
コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。
ですが……改稿する必要はなかったようです。
おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。
なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。
小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。
よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。
※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。
・一人目(ヒロイン)
✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前)
◯リアーナ・ニクラス(変更後)
・二人目(鍛冶屋)
✕デリー(変更前)
◯ドミニク(変更後)
・三人目(お針子)
✕ゲレ(変更前)
◯ゲルダ(変更後)
※下記二人の一人称を変更
へーウィットの一人称→✕僕◯俺
アルドリックの一人称→✕私◯僕
※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる