私は逃げます

恵葉

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第二章

アンドリューの事情

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少しはこちらを信用してくれたのか、アンドリューも何故レイモンドを追っているのか、話し始めた。

「父から、これ以上、兄が愚行を起こさないように見張って、行動に移す直前で止めるように言われました。
直前で止める理由は、愚行を起こそうとしたことを理由に、この先の兄の行動を制限するためです。」

要するに軟禁か下手すれば幽閉だろう…これ以上は問題を起こさせないためにというところかな。

「それでここ数ヶ月、護衛や他のものと交代で、ドナテッロ家を見張らせていただいておりました。
兄は必ず現れるだろうと。
実際に兄は現れました。現れて、兄はずっとドナテッロ家の邸を見張っているようでした。
リーナ嬢の居場所を探っていたのだと思うのですが、フェデリコ殿が戻られてから、兄の行動に変化が出まして、急にどこかへ向けて出発したのです。
それで追ってきました。」

「…おそらく、私がリーナの居た場所から戻ったのだろうと踏んで、そのルートを辿っているのだと思いますよ。
実際に私が居た先にリーナは居ます…。
レイモンド殿がトマスに接触した以上は、この先はトマスが上手く誘導してリーナの居場所周辺までは連れてきてくれるでしょうから、先回りするという手もありますが、どうしますか?」

「そこまで協力してくださる理由は…やはり、兄を捕まえたいということでしょうか…。」

「…レイモンド殿については…捕まえたいというよりも、これ以上問題は起こして欲しくないという方が正しいかな。というか、レイモンド殿が何かすれば、リーナが傷つくんだ…もうあの子に傷ついて欲しくないというのが私たちの総意だよ。
だからレイモンド殿が何をするつもりなのか、見張っているところだよ。
リーナを傷つけることがなければ、別に彼を捕まえようとか考えてはいない。」

「そうですか…。では出来る事なら、協力していただけるととても助かります。」

それからこの先の行動について、話し合った。

私が戻ったルートを逆に辿っているのだろうから、それを追いかける案が一つ。
もしくはいっそ先回りして待ち伏せるというのが一つである。

「先回りする場合、トマスとの連絡は取れなくなるな…。
そうするとレイモンド殿の目的などの情報が遅れることになる。」

「ではこれまで通り、後を追う形にした場合のデメリットは?」

「もしもレイモンド殿が最終的に何かの行動に走ろうとした場合に、止めるのに間に合わない可能性がある…。」

「…では途中までは後を追い、あと数日で到着という時点で、兄上を追い越して先回りするのはどうでしょうか。」

「そうだな…現時点では、それが良いかもしれない…到着直前までに、新たな情報が得られれば、その時点でまた計画は変更すればよいかな。」

「彼らは、今夜中にこの街を立つと思われる。なので我らは早朝に立つとしよう。
君たちはどこに泊まる予定かな?」

「私たちは今夜は幌馬車の中で寝るつもりです…。」

「…今夜は我らの宿に泊まりなさい。まだ話したいこともあるから、君の護衛は私の護衛と一緒の部屋で良いかな?
アンドリュー殿は私の部屋へ。
この先はさらに厳しい旅になるかもしれないから、まともに休める時は、しっかり休みなさい。
明日の朝は、日の出前に出立で良いかな?」

こうして我らは行動を共にすることになった。

宿で一緒に過ごしながら、アンドリュー殿からレイモンド殿の話を聞いていると、彼は非常に優秀な兄だったらしい。
そしてリーナの事も、本当に想っていたらしい。
最初は、リーナを婚約者に望んでいたのは、アンドリュー殿だったとか。
しかしアルフレッドに対抗するにはと、レイモンド殿が出てきて、一緒に過ごすうちに、やがてはレイモンド殿自身がリーナにすっかり心奪われていたらしい。
そして兄思いでもあったアンドリュー殿は、レイモンドにだったらと、リーナを諦めたとか。

アンドリュー殿は、最初から自分がリーナとアルフレッドの間に横やりを何て考えなければと落ち込んでいた。
しかしリーナが遭遇した危険や不幸の数々は、別にレイモンドのせいではない。
それに彼らの家は、かなり落ちぶれてきている。
現状ではレイモンド殿が後を継ぐのだろうが、彼が責めを負うほどの何かをしたわけではない。
彼はまだ若いのだから、何とか立ち直って欲しい。

まあまずはレイモンド殿がこれ以上何も問題を起こさないように、いや、起こさせないようにするのが先だろう。
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