私は逃げます

恵葉

文字の大きさ
83 / 83
第二章

レイモンドとトマス

しおりを挟む
フェデリコ様の護衛である私は、レイと名乗る少年に接触された。
ドナテッロ家のものとバレたのかと焦ったが、そうではなかった。
向かう方向が同じであり、こちらは馬を持っていることもあり、同行を願えないかとの事だった。
私の馬は、元々は軍馬なので、大荷物でなければ、私の他に少年一人を乗せても余裕で走れる事が出来る。
あまりお金を払えるわけではないが、もし出来たらと頼んできた。
諸事情あって、先を急ぎたいので、乗合馬車では時間が掛かり過ぎてしまうとか。

「何をそんなに急いでいるのですか?」

「詳しくは申し上げられないのですが…ある人の身に危険が迫っているかもしれなくて、それを止めなければいけないのです。」

「それを相手の方や、相手の方の身内に早馬などで知らせては?」

「…私が悪いのですが、私は今、彼らとの信頼関係が全く無いので、知らせたところで信じてもらえるとは思えません…それに危害を加えようとしている人物を捕まえなくてはならないのです…。」

「それは…とにかく急がなければということですね?」

「はい…なので行く先が同じ場所までで構いませんのでご協力いただければ…。」

「最終的にどこの街へ行かれるつもりなのでしょうか。」

「まだ完全には分からないのです…行く先々で情報を拾いながら向かっているので…。」

「わかりました…私は明確な目的地があるわけでもないので、乗り掛かった舟ですから可能な限りご一緒いたしましょう。」

「ありがとうございます…とりあえずはこの街でつかんだ情報で、ここから普通に移動したら、二日ほど掛かる街までの情報が得られましたので、そこまで急ぎたいと思います。」

どうもレイモンド様には、私たちが知らない何か事情があるようだ…。
それをフェデリコ様へお伝えしたいのだが、しばらくは難しい。

それにそうはいってもまだレイモンド様が私を完全に信用しているとは言い難く、ここで失敗をしてしまうと、事態を更に悪化させる可能性もある。
ここは慎重に動かなければいけない。
なので私の方から積極的にフェデリコ様へ繋ぎをつけるのはやめておこう。

レイモンド様とは、一旦別れた。
私は馬を休ませて、更に出来るだけ早く出立する準備をしなくてはならないし、レイモンド様も何か準備があるらしい。
深夜に再び、馬を預けた厩近くで合流することになった。
私は水と食料を入手しようと街の中心地へ向かおうとし、運良くフェデリコ様を見付けた。
さり気なく近付き、そっと告げた。
「向かう方角が同じなら、同行させてほしいと頼まれ、対象者と行動を共にすることになりました…」
「了解」
そして私は喧騒の中へ紛れ込んだ。

準備は早々に済ませ、私の馬が見えるところにあるベンチに横になり、仮眠を取った。
深夜、人の気配を感じ、いかにも寝ぼけ眼を無理やり開けていると言わんばかりに大あくびをしながら身体を起こした。

「レイ様…もう時間ですか?」

「こんな夜中に急き立てるようですまない。しかしどうしても少しでも早く向かいたいんだ。」

「お急ぎって事は分かっていますから、大丈夫ですよ。」

私は微かに微笑み、レイモンド様の荷物を受け取り、私の荷物と共に、馬の背に固定した。

馬の鞍は一人用ではあるが、私の身体に対して大きめなので、まだ細い少年一人、乗せた所で問題はないだろう。
しかし彼に背を向けるのは、流石にそこまでの信頼は持てないので、彼には私の前に座ってもらおう。

「レイ様は、申し訳ないが、私の前に座ってもらえますかな?
流石に二人乗せて飛ばす事はないので、鞍の前の部分をしっかり掴んでください。
先ずは私が乗って、引っ張り上げますね。」

そう言って私は愛馬に飛び乗った。
彼に手を差し出し、つかんだ腕を引き上げた。
男二人でぴったり着くのもあれだが、仕方がないので、安定感のために、レイ様と私の腰を紐を巻いてしっかり結んだ。

「うん…やっぱり野郎同士でというのは微妙だな…」ボソッと呟いたが、レイ様に言ったつもりではなかった。
しかし聞こえてしまったようで、耳を赤くしてやはりボソッと「すまない…」と返ってきてしまった。

「さて!出発しますか!」

明るくそう言って、馬に合図を送った。
この馬は、とても賢いので、叩いたり強く蹴ったりせずとも、手綱と軽い合図で動いてくれる。
今夜も黙って歩き始めた。

街の門のところまで来ると、門番が詰所から出てきた。

「こんな時間に出かけるのか?」

「すまない!こいつが早く婚約したての彼女のところへ帰りたいと急かすもんでなぁ。悪いが通して貰えないか?」

そう言って、馬の上からこっそりとドナテッロ家の家臣という身分証と、銅貨を2枚出した。

「あんたも大変だなぁ。」

そう言いつつ、快く門を開けてくれた。

「夜道は盗賊にも気を付けろよ!」

そう言って見送ってくれた。
しおりを挟む
感想 73

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(73件)

サヴァ
2025.03.07 サヴァ

悲しい!
アル、頑張れ!男を見せてリーナを
救うんだ。

解除
サヴァ
2025.03.05 サヴァ

ああっ…駄目だレイ…
そんな短絡的な方法じゃリーナを幸せに出来ないし
実家の名誉も下げてしまう。

解除
かりりん
2025.01.09 かりりん

レイとキスだけの関係に留まって良かったです。
未来のない恋は辛いですね。

解除

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

エミリーと精霊

朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。 名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。