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ワタシは大きく息を吐くと自分のカップに紅茶を注ぐと一口飲んだ。甘く穏やかな香り、そしてコクがあって力強い味わいが何ともたまらない。ミルクティーにするのがオススメではあるものの、この紅茶をストレートで飲みつつチョコレート系のお菓子と一緒に楽しむのがワタシのオススメよ。この標高600メートル以下で育てられるというローグロウンティーは茶葉の産地によって風味が変わるのよ?
「それにしても不思議ね」
「あ?何がだ?」
「要ちゃん羽ありオヤジの事何で見えるのかなって。」
「あー、確実ではないが座敷童子の血をひいているじゃねえかと思ったことはある。」
「え?」
「そういうあやかしの類いの血を引いてると視えないものが視えたりする事がある。それじゃねえかと思うんだがな。」
なるほどね。それを考えたらワタシの周りファンタジーの集まりみたいなものね。
「……そういえば要ちゃん、この羽ありオヤジについて一つ分かったことあるの。」
要ちゃんはコテンと首をかしげた。表情は相変わらず死滅しているが目は口程に物を言うのよ。とても目を輝かせているものだからついハグしてしまう。
「……っ要ちゃん可愛いわぁ~!」
思わず要ちゃんに抱きつき頭を撫でるともっと撫でろと言わんばかりに頭を押し付けてくる。
「……(可愛いのはさくさくなんだけどな)一つ分かったことって何?」
「この羽ありオヤジって妖精の分類らしいの。願いを叶えてくれるって言われてるみたいね。オヤジの姿の妖精ってなんか正直ちょっとって思うのだけど。……あ、それとねおっさんの実家の近所にうさ耳のオヤジもいるらしいのよ。」
「……えっ!うさ耳のオヤジ!見たい!」
あらそっちの方に食い付いたのね、要ちゃん(笑)。目を輝かせている要ちゃんはとっても可愛いのよねぇ。
「誰か私の事呼びましたか?」
しろちゃん先生も視た事あるみたいだしその内出会えそうな気がするわ……ってえ゛っ!うさ耳オヤジ………………ってあらなんてダンディーなイケおじっ!
黒髪をオールバックにしており、目にはモノクルつけているのがなんとも知的な印象を受ける。黒のスーツ姿は彼によく似合っていた。
「あ、久しぶりぃ~うっちゃん!」
「貴方でしたか……うっちゃんは止めなさいとあれ程言ったのに本当に困った人ですね。」
オッサンにうっちゃんと呼ばれたその人は優雅な動きで何処からか杵を取り出すとオッサンに振り下ろした。
「ぎゃっ!危ないだろぉー!おっさん頭カチ割れるところだったぞぉ!」
「貴方にはそれ位が丁度良いのですよ。」
美しくも見えない動きで杵を何処かに収納すると此方に気付いたのか、笑顔を向けた。
「……珍しい組み合わせですね。翅と退魔師が揃っているのは」
「偶然だ。」
「おっさんここでお世話になってるんだぞぉ。」
「そこの」
ため息を吐いたうさ耳付きダンディーイケオジは杵を構え直した。
「また貴方は人様にご迷惑を……。お仕置きが必要ですね。」
「ちょっと待ってちょうだい。逃げ回られて家具が壊れるのは困るからお仕置きは後にしてもらえないかしら。」
此方を向いた彼は驚いた顔をしながら何やら納得したような顔をした。杵を背中に背負うと翅ありオヤジに視線を向けた。冷や汗流しまくっているオッサンは彼に拝むような動作をしていた。
暫く無言が続いたものの再びため息を吐くとオッサンの何らかの頼み事を了承したようだった。
「翅の。出会いとは大切ですよ。特に私達の様な存在にとっては。言える内に言わないと言えなくなります。よく覚えておきなさい。後悔しない為に……。」
「……分かってますよーだ。」
完全に拗ねてしまった翅ありオヤジはふよふよと何処かに行ってしまった。その背中が何処か寂しげに見えたのは気のせいではないと思う。言える内に言わないといけない言葉って何だろう。何を隠しているのかしら。あのオヤジ。追いかけるべきか悩んだものの要ちゃんの「一人になりたい時、あると思うよ。見守ってあげるのも優しさだよ、さくさく。」という言葉に従うことにした。
彼は姿勢を正すと美しい所作で挨拶した。
「……お初にお目にかかります。私、妖怪郵便局の宇崎史郎と申します。過去であろうと未来であろうと場所時間問わず、届け物が姿形のないモノであったとしても届ける相手の名前が不明の場合であってもお届け致しましょう。」
……………………それは……。
「……死んだ人にも届けることってできるの?」
要ちゃんがポツリと呟くように言った。揺れた瞳には疑いと期待が込められていた。
「えぇ。」
要ちゃんが消えてしまいそうな気がして咄嗟に要ちゃんを抱き締めてしまった。要ちゃんがどうしたのと言わんばかりにきょとんと首をかしげる。
「……なんでもないわ。本当になんでもないの。」
ただ、ほんの少しだけ不安になっただけなの。だからお願い。要ちゃん……貴方は消えないでね。
「初めての方には無料配達チケットをプレゼントしております。お受け取りください。使う際はそのチケットを破れば直ぐに対応致します。では失礼。」
無言で受け取ったワタシと要ちゃんは、宇崎さんが帰った後も暫くそのチケットを見ていた。その様子をしろちゃん先生は声をかけるのを躊躇い、暫く心配そうに見ていた。
「それにしても不思議ね」
「あ?何がだ?」
「要ちゃん羽ありオヤジの事何で見えるのかなって。」
「あー、確実ではないが座敷童子の血をひいているじゃねえかと思ったことはある。」
「え?」
「そういうあやかしの類いの血を引いてると視えないものが視えたりする事がある。それじゃねえかと思うんだがな。」
なるほどね。それを考えたらワタシの周りファンタジーの集まりみたいなものね。
「……そういえば要ちゃん、この羽ありオヤジについて一つ分かったことあるの。」
要ちゃんはコテンと首をかしげた。表情は相変わらず死滅しているが目は口程に物を言うのよ。とても目を輝かせているものだからついハグしてしまう。
「……っ要ちゃん可愛いわぁ~!」
思わず要ちゃんに抱きつき頭を撫でるともっと撫でろと言わんばかりに頭を押し付けてくる。
「……(可愛いのはさくさくなんだけどな)一つ分かったことって何?」
「この羽ありオヤジって妖精の分類らしいの。願いを叶えてくれるって言われてるみたいね。オヤジの姿の妖精ってなんか正直ちょっとって思うのだけど。……あ、それとねおっさんの実家の近所にうさ耳のオヤジもいるらしいのよ。」
「……えっ!うさ耳のオヤジ!見たい!」
あらそっちの方に食い付いたのね、要ちゃん(笑)。目を輝かせている要ちゃんはとっても可愛いのよねぇ。
「誰か私の事呼びましたか?」
しろちゃん先生も視た事あるみたいだしその内出会えそうな気がするわ……ってえ゛っ!うさ耳オヤジ………………ってあらなんてダンディーなイケおじっ!
黒髪をオールバックにしており、目にはモノクルつけているのがなんとも知的な印象を受ける。黒のスーツ姿は彼によく似合っていた。
「あ、久しぶりぃ~うっちゃん!」
「貴方でしたか……うっちゃんは止めなさいとあれ程言ったのに本当に困った人ですね。」
オッサンにうっちゃんと呼ばれたその人は優雅な動きで何処からか杵を取り出すとオッサンに振り下ろした。
「ぎゃっ!危ないだろぉー!おっさん頭カチ割れるところだったぞぉ!」
「貴方にはそれ位が丁度良いのですよ。」
美しくも見えない動きで杵を何処かに収納すると此方に気付いたのか、笑顔を向けた。
「……珍しい組み合わせですね。翅と退魔師が揃っているのは」
「偶然だ。」
「おっさんここでお世話になってるんだぞぉ。」
「そこの」
ため息を吐いたうさ耳付きダンディーイケオジは杵を構え直した。
「また貴方は人様にご迷惑を……。お仕置きが必要ですね。」
「ちょっと待ってちょうだい。逃げ回られて家具が壊れるのは困るからお仕置きは後にしてもらえないかしら。」
此方を向いた彼は驚いた顔をしながら何やら納得したような顔をした。杵を背中に背負うと翅ありオヤジに視線を向けた。冷や汗流しまくっているオッサンは彼に拝むような動作をしていた。
暫く無言が続いたものの再びため息を吐くとオッサンの何らかの頼み事を了承したようだった。
「翅の。出会いとは大切ですよ。特に私達の様な存在にとっては。言える内に言わないと言えなくなります。よく覚えておきなさい。後悔しない為に……。」
「……分かってますよーだ。」
完全に拗ねてしまった翅ありオヤジはふよふよと何処かに行ってしまった。その背中が何処か寂しげに見えたのは気のせいではないと思う。言える内に言わないといけない言葉って何だろう。何を隠しているのかしら。あのオヤジ。追いかけるべきか悩んだものの要ちゃんの「一人になりたい時、あると思うよ。見守ってあげるのも優しさだよ、さくさく。」という言葉に従うことにした。
彼は姿勢を正すと美しい所作で挨拶した。
「……お初にお目にかかります。私、妖怪郵便局の宇崎史郎と申します。過去であろうと未来であろうと場所時間問わず、届け物が姿形のないモノであったとしても届ける相手の名前が不明の場合であってもお届け致しましょう。」
……………………それは……。
「……死んだ人にも届けることってできるの?」
要ちゃんがポツリと呟くように言った。揺れた瞳には疑いと期待が込められていた。
「えぇ。」
要ちゃんが消えてしまいそうな気がして咄嗟に要ちゃんを抱き締めてしまった。要ちゃんがどうしたのと言わんばかりにきょとんと首をかしげる。
「……なんでもないわ。本当になんでもないの。」
ただ、ほんの少しだけ不安になっただけなの。だからお願い。要ちゃん……貴方は消えないでね。
「初めての方には無料配達チケットをプレゼントしております。お受け取りください。使う際はそのチケットを破れば直ぐに対応致します。では失礼。」
無言で受け取ったワタシと要ちゃんは、宇崎さんが帰った後も暫くそのチケットを見ていた。その様子をしろちゃん先生は声をかけるのを躊躇い、暫く心配そうに見ていた。
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