帝国皇子のお婿さんになりました

クリム

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第5話 性の乱

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 忙しいのか昼は1人で食事をし、アフタヌーンティーに招かれた殿下の部屋には、殿下以外にもう1人。殿下以上の高身長で、銀髪を肩口でぱつんと切ったボブカットの白衣の女の人がいた。

「ありがとうございます、来てくださって」

 殿下が私の手を取り、椅子に座らせる。クーちゃんは私の後ろに控えている。殿下は政務用の服だ。

「こちらはポーター・ジェイ。わたしの叔母方の従姉妹。ポーターがあなたを探し当てたのです」

 殿下の言葉に頷いて、

「皇家でもない医師一族の男爵家ですから、名前でお呼びください、殿下。詳しい事情を説明した方がいいと思いまして。私は治癒師で医者ですわ。食べながらの話してもよろしいかしら、殿下。毒味は銀のカトラリーで済みますわ。ーーそちら、下がってくださるかしら」

静かに告げる彼女はどちらかというと私より低い響く声で告げる。

 既にフルーツとシロップがかかるデザートクレープが用意されていて、お茶をポーター様が入れてくださる。私の方が上の地位になるから、殿下に一礼してから、

「こちらは皇太子殿下と私の性を知る者として、同席させます。殿下、ポーター様、この者はクー・チャン。アスター王家の、いえ、私の懐刀です」

と話すと肩をすくめたポーター様と、頷く殿下に安心した。2対1は割に合わない。

「ーーよろしいでしょう。さあ、殿下、少しは召し上がってください。悪阻は始まっているでしょうが」

 悪阻……妊娠初期か。そんな疑問を考えているうちに、もぐもぐタイムは終わる。

 男妊娠出産は、オメガバースで流行った案件だ。あの時は下世話にもどこから産むのか争論があった。肛門?やおい穴、さまざまな憶測の中でら決着は帝王切開で終了した。ちなみに前世の私は、2人とも逆子だから帝王切開だ。

 思い返せば獣人ボーイズ系もブレイクしていたし、おねショタやおにショタも流行りつつあった。血の繋がり系も読んだなあ。

 つまりは、殿下とポーター様が恋仲で、実はポーター様も両性か男ーー

「失礼ですが、顔に出ています。皇太子妃殿下。私は紛れもなく女です。殿下の性には驚かれたと思いますが、殿下は完全両性具有体です。双方の機能を持ち合わせています」

 おや、ばれていた。完全両性具有でも陰嚢……玉はないけど。

 殿下は少しもぐもぐとしながらえづいた。妊娠初期の悪阻だ。

「無理をしないで横になってください。水が飲めれば大丈夫ですよ」

 医者の前で失礼だったかなと思ったが、前世の私がそうだったのだから間違いはない。水が飲めなくなれば、間違いなく入院か点滴だが。

「治癒魔法で楽にしますね」

 背中に手を手を当てるポーター様を見て、『手当て』は実は治癒魔法で、私のように異世界へ降り立った者が行った施術ではなかろうか。この今世では錬金術もある。媒介物質は必要だが。そうなると、前世の錬金術も絵空事ではないかもしれないーーは、置いておくとして、では、殿下のお腹の子の父親は誰だろう。

「さて、殿下から下腹の痛みを訴えられ診察したところ、懐妊を知りました。殿下が両性だと知るのは、正王妃様と私と私の母のみ。王も側室妃もその子供である皇子様方も姫も私の母がしております。しかも、側仕えであり王宮医師でもあります。そこでお世継ぎ問題も解決をしていかなくなりました」

 楽に横たわった殿下がこちらを向いて頷く。なるほど、そこは理解。皇太子殿下が出産なんてねえ。何しろ皇太子殿下は見目麗しくとも男性なんだから。

「私は『行き遅れている公爵以上の姫』を片っ端から調べました。国内では散々たるものでしたが、諜報専門の冒険者に探らせると、国外にあなた様がいました」

「冒険者……それは盲点でしたね、主様」

「クーちゃん、畳みかけるように言わないで」

「ええ、10も数えない年頃の王子が魔物の間引きを冒険者としていたなんて。でもそれがある時からぷつりと途絶え、第2王子が台頭し始めました」

 王宮では気をつけていたつもりだったが、国に出る魔物退治に第1王子の責務とし出ていたけど、楽しすぎて油断していた。

「病気だとかなんとかで理由はともあれ王宮に引きこもり、そのあとは分からずじまい。間諜に調べさせると、第2王子が王太子になり婚約式まで行われている。そこに姫が静養先から帰ってきて離宮に移るなんて、おかしいでしょう?そこで姫殿下は第1王子ではないかって思い、アスター王国に揺さぶりをかけました」

 間諜ってスパイだ、王宮にスパイがいたなんてすごいな。確かに、私の変わり身なんて、とりかへばや物語ではなく、有明の別れ的な1人2役だ。

 しかし実際、実感すると難しいものだった。今まで男として生きていて、帝王学を学び剣を嗜み、しかも、そこそこに強かったし楽しかった。でも、胸が膨らみ始め体付きがなだらかなラインを作り出すと、姫として生きろと言われて。

 私は今前世覚醒して、50代のおばちゃんとして生きていた記憶を元に自覚できているけれど、ハルシオンとしての感情と記憶があるから、悔しくて堪らない。

「それで、表向き『姫』の私が殿下の子を生んだことにすれば良いのですね。分かりました。次は、やはり『誰が父親』なのか、です」

 まさか、近衛とか、まあ、王族警護近衛ってそういう役割も果たすらしいし、成人した皇太子だからねえ。

 その子供問題を早急に、明らかにする必要があるのだ。

 ――そんなことを考えながら温いお茶に口をつけた時だった。

「わ……わたしです」

 わたし?

 ソファの側に誰かいた?ソファ廊下の向こうから小さな声で告げるのは殿下。

 引き攣った笑顔で笑うポーター様が、腕組みをして長い足を組んだ。

「この馬鹿は、自分の男性器を女性器に入れて自慰をしていたのよ、この馬鹿はっ!」

「馬鹿って2回も言わないでぇ……」

 性が暴走してる。
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