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一章 男爵家の次男坊
2 マギー商会
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朝ごはんが終わり兄様と町へ出かける準備をして出かける。町の真ん中にある役場に向かう兄様と分かれた僕は、その近くにあるマギー商会の前を通った。マギー商会の受付には姉のリアンが座っていて、僕に頭を下げた。それから弟のリュトが店から出てくる。
リュトは凛々しいくせに甘めの顔をした、焦げ茶のふわふわとした髪の成人年齢に半年前になった奴で、悔しいことだが僕よりかなり背が高い。茶髪はアリシア王国ではポピュラーな髪色で、自信がなさそうに垂れた眉頭とうるうるの茶色の瞳が大型犬を思い出させる。
うん、相変わらずワンコだな。
「リュト、おはよう」
「ノリン様、おはようございます!今日は宿題もしっかりやりました!」
「そうなんだね、丸付け楽しみにしているよ。リアンも、おはよう」
「おはようございます、ノリン様。先に二階へどうぞ」
とリュト以上に背が高いリアンの誘導の元、午前中のリュトの家庭教師として部屋に入った。
貴族の子供は大抵屋敷内に家庭教師を雇い読み書きを学ぶが、それが出来ない貴族の子供や町の裕福な家庭の子供たちは神殿学舎で読み書きを学ぶ。
僕の兄様も神殿学舎で読み書きを習っていたが、僕はお金が払えなくていってはいない。が、オーガスタ時代の教育が魂に染み付いていて覚えている。僕がリュトに教えているのは算術で、しかもかつて魔の森で習っていた算盤だった。
「その前に父に会っていってください」
リアンに言われてリュトに後で会う事を約束して、僕はマギー商会の社長の部屋へ向かい扉をノックした。
部屋の中から
「空いているよ」
と声が上がったのを聞いて僕は
「マギー、失礼します」
と断ってから扉を開ける。そこには平民ながら洒落たスーツに身を包んだ壮年のマギーがいた。いくら僕が小さくても貴族と平民の違いは大きく、しかし僕は名前を呼び捨てにする代わりに敬語を用いて年長者に敬意を払っている。
柔らかい茶髪を後ろへと撫でつけるような髪型をして、中肉中背でやや丸い顔には柔和な笑顔が浮かんでいる。マギーは座っていたが、僕を見るとソファから立ち上がり、一応貴族の僕に礼を取った。
「おはようございます、マギー」
「おはようございます、ノリン様。いつも愚息の算術指南をありがとうございます。実はリュトが今年の貴族学舎一年生の『御用伺い見習い』に抜擢されまして、ノリン様の家庭教師のおかげでございます。これから毎週金曜日の貴族サロンにてマギー商会の紹介が始まります。ノリン様は貴族学舎へは?」
「資格試験の順番はまだ来ていません。男爵だから一番最後になると思います。それに僕の屋敷には馬車がありませんし」
万が一試験に合格したら、馬車を借りるお金の出処について話し合わなくてはならないし、めんどくさいと思いながら僕は小さく息を吐いた。
マギー商会の主人マギーは王都の貴族の御用伺いの一人だ。何人かの貴族と契約し御用伺いをしていて王族も含まれているが、残念ながらツェッペリン男爵家は含まれていない。貴族の信頼も厚く御用伺い傍ら、使用人の教育もして貴族屋敷に派遣もしている優秀なやり手の人間だ。長女のリアンも同じ年頃の貴族の子女の御用伺いをしている。
リアンが成人年齢になり貴族学舎のサロンに通い貴族の子弟子女の御用伺いになったように、リュトも貴族学舎の子弟子女の御用伺いになるべく努力しているのだ、現在進行形で。
「ノリン様が貴族学舎に行っていただければありがたいのですが」
使用人に見られていない事を確認してから、マギーはぼそりと呟いた。こちらにリュトのフォローを押し付ける算段だろう。
「それはそうと愚息の祝いとして、お礼をしたいのですが」
「お肉、ください」
きっぱり言った。それはもうきっぱりと言ったから控えていたリアンが、
「ぅふっ……」
と吹き出してしまったくらいだ。
「ーーグラミー商会から我が商会に御用伺いを変えられてはどうでしょうか」
マギーの言い分はもっともで、元凶はそこであるが、僕は次男坊。僕が言い出せるわけもなく、僕は曖昧な笑いを浮かべて部屋を出た。
一階の半地下の調理室の横がリュトの与えられた子供部屋で、扉を開けると窓ガラスを横にして黙々と計算をしているリュトがいた。貴族風のシャツと裾が窄まる半ズボンを履いているリュトは、自主勉強をしているようだった。案内のリアンがピンクのフレアドレスの脇を掴み軽く広げて礼をしてからいってしまう。看板娘は大変だなと見送った。
「ノリン様、丸付けお願いします」
「ああ、うん。ーーあれ、これ違う。これも。九九忘れた?」
「う……。ええと、七の段が苦手で、でも他はできるんです。積み上げ算とか、ほら全問正解でーーだめですか?」
「だめだよ。御用伺いは品数に対して費用がいくらになるか、お付きの者にすぐに話さなきゃ。御用伺い見習いはリュトだけじゃないんだよね?」
「あ、はい。三人抜擢されたと聞いています。別枠で留学してくる王族の御用伺いもくるそうです」
「そんなベテランは眼中に入れなくていいよ、リュト」
「ですよねー。正直、俺がなんで御用伺い見習いになったのか理解不能なんですよ。父ちゃんが金積んだのかとか。俺は頭が悪いし、姉ちゃんのあとをついていくのかやっとなのに、どうしようノリン様」
多分……やればできる子だ、うん、だ、大丈夫。マギー商会は新進気鋭上り調子の商会で、長女に次いで長男までが御用伺い見習いに抜擢されて注目を浴びている。
商会で取り扱う商品な食料品から魔具までだが、王立貴族学舎で令息と令嬢についているそれぞれのお付きのメイドやスチュアートや護衛と渡り合い、主の都合によって柔軟に御用伺いとして話し合いをし決めていくのだから、リュトが及び腰では困る。
「リュト、僕は行けないかもから、頑張って」
「えええ、む~り~!でも、頑張ります」
リュトが涙目で笑ったので、僕もにっこりと微笑み返した。僕は今の生活が好きだし、家族や商会の姉弟も暖かくて大好きだ。だから優しく笑い返せるし、ノリンとして生きる人生はきっと楽しいと思う。
リュトは凛々しいくせに甘めの顔をした、焦げ茶のふわふわとした髪の成人年齢に半年前になった奴で、悔しいことだが僕よりかなり背が高い。茶髪はアリシア王国ではポピュラーな髪色で、自信がなさそうに垂れた眉頭とうるうるの茶色の瞳が大型犬を思い出させる。
うん、相変わらずワンコだな。
「リュト、おはよう」
「ノリン様、おはようございます!今日は宿題もしっかりやりました!」
「そうなんだね、丸付け楽しみにしているよ。リアンも、おはよう」
「おはようございます、ノリン様。先に二階へどうぞ」
とリュト以上に背が高いリアンの誘導の元、午前中のリュトの家庭教師として部屋に入った。
貴族の子供は大抵屋敷内に家庭教師を雇い読み書きを学ぶが、それが出来ない貴族の子供や町の裕福な家庭の子供たちは神殿学舎で読み書きを学ぶ。
僕の兄様も神殿学舎で読み書きを習っていたが、僕はお金が払えなくていってはいない。が、オーガスタ時代の教育が魂に染み付いていて覚えている。僕がリュトに教えているのは算術で、しかもかつて魔の森で習っていた算盤だった。
「その前に父に会っていってください」
リアンに言われてリュトに後で会う事を約束して、僕はマギー商会の社長の部屋へ向かい扉をノックした。
部屋の中から
「空いているよ」
と声が上がったのを聞いて僕は
「マギー、失礼します」
と断ってから扉を開ける。そこには平民ながら洒落たスーツに身を包んだ壮年のマギーがいた。いくら僕が小さくても貴族と平民の違いは大きく、しかし僕は名前を呼び捨てにする代わりに敬語を用いて年長者に敬意を払っている。
柔らかい茶髪を後ろへと撫でつけるような髪型をして、中肉中背でやや丸い顔には柔和な笑顔が浮かんでいる。マギーは座っていたが、僕を見るとソファから立ち上がり、一応貴族の僕に礼を取った。
「おはようございます、マギー」
「おはようございます、ノリン様。いつも愚息の算術指南をありがとうございます。実はリュトが今年の貴族学舎一年生の『御用伺い見習い』に抜擢されまして、ノリン様の家庭教師のおかげでございます。これから毎週金曜日の貴族サロンにてマギー商会の紹介が始まります。ノリン様は貴族学舎へは?」
「資格試験の順番はまだ来ていません。男爵だから一番最後になると思います。それに僕の屋敷には馬車がありませんし」
万が一試験に合格したら、馬車を借りるお金の出処について話し合わなくてはならないし、めんどくさいと思いながら僕は小さく息を吐いた。
マギー商会の主人マギーは王都の貴族の御用伺いの一人だ。何人かの貴族と契約し御用伺いをしていて王族も含まれているが、残念ながらツェッペリン男爵家は含まれていない。貴族の信頼も厚く御用伺い傍ら、使用人の教育もして貴族屋敷に派遣もしている優秀なやり手の人間だ。長女のリアンも同じ年頃の貴族の子女の御用伺いをしている。
リアンが成人年齢になり貴族学舎のサロンに通い貴族の子弟子女の御用伺いになったように、リュトも貴族学舎の子弟子女の御用伺いになるべく努力しているのだ、現在進行形で。
「ノリン様が貴族学舎に行っていただければありがたいのですが」
使用人に見られていない事を確認してから、マギーはぼそりと呟いた。こちらにリュトのフォローを押し付ける算段だろう。
「それはそうと愚息の祝いとして、お礼をしたいのですが」
「お肉、ください」
きっぱり言った。それはもうきっぱりと言ったから控えていたリアンが、
「ぅふっ……」
と吹き出してしまったくらいだ。
「ーーグラミー商会から我が商会に御用伺いを変えられてはどうでしょうか」
マギーの言い分はもっともで、元凶はそこであるが、僕は次男坊。僕が言い出せるわけもなく、僕は曖昧な笑いを浮かべて部屋を出た。
一階の半地下の調理室の横がリュトの与えられた子供部屋で、扉を開けると窓ガラスを横にして黙々と計算をしているリュトがいた。貴族風のシャツと裾が窄まる半ズボンを履いているリュトは、自主勉強をしているようだった。案内のリアンがピンクのフレアドレスの脇を掴み軽く広げて礼をしてからいってしまう。看板娘は大変だなと見送った。
「ノリン様、丸付けお願いします」
「ああ、うん。ーーあれ、これ違う。これも。九九忘れた?」
「う……。ええと、七の段が苦手で、でも他はできるんです。積み上げ算とか、ほら全問正解でーーだめですか?」
「だめだよ。御用伺いは品数に対して費用がいくらになるか、お付きの者にすぐに話さなきゃ。御用伺い見習いはリュトだけじゃないんだよね?」
「あ、はい。三人抜擢されたと聞いています。別枠で留学してくる王族の御用伺いもくるそうです」
「そんなベテランは眼中に入れなくていいよ、リュト」
「ですよねー。正直、俺がなんで御用伺い見習いになったのか理解不能なんですよ。父ちゃんが金積んだのかとか。俺は頭が悪いし、姉ちゃんのあとをついていくのかやっとなのに、どうしようノリン様」
多分……やればできる子だ、うん、だ、大丈夫。マギー商会は新進気鋭上り調子の商会で、長女に次いで長男までが御用伺い見習いに抜擢されて注目を浴びている。
商会で取り扱う商品な食料品から魔具までだが、王立貴族学舎で令息と令嬢についているそれぞれのお付きのメイドやスチュアートや護衛と渡り合い、主の都合によって柔軟に御用伺いとして話し合いをし決めていくのだから、リュトが及び腰では困る。
「リュト、僕は行けないかもから、頑張って」
「えええ、む~り~!でも、頑張ります」
リュトが涙目で笑ったので、僕もにっこりと微笑み返した。僕は今の生活が好きだし、家族や商会の姉弟も暖かくて大好きだ。だから優しく笑い返せるし、ノリンとして生きる人生はきっと楽しいと思う。
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