国王親子に迫られているんだが

クリム

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十章 闇オークション潜入

65 毒を食らわば

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 国王が死んだ、毒殺だった。王妃と母でメイド上がりの妾妃と一緒だったというが、国王と妾妃は死に、王妃は生き延びた。毒には耐性のある王が死んだのには誰もが驚いた。三人から同様の毒が検出されたからだ。

 だが、この程度の毒で王が死ぬのかと不審に陥る。実は原因不明の死は数年前貴族学舎のお茶会で死んだ長兄から続いている。王族も堕ちたことだと、したり顔で魔の森で思っていた。

 王族を守る第一第二近衛隊はどうしたんだと、従者である護衛騎士に聞いてみたら、殆どが北の国境へ出されてそれに次兄が指揮を摂っているらしい。

「殿下、我々は魔の森から出ない方がよいでしょう」

 混乱する国内事情を知る護衛騎士が、ひどく複雑な表情で話していたことを覚えている。長兄の時には思わなかった僅かばかりの消失感と悲しみは、親友と飲み潰すことで払拭した。

 魔の森のギルド直営の宿でベッドに腰かけたまま、次兄が王になるのだなと思った。毒には耐性のある王まで殺せた原因不明の毒物とはなんだとぼんやり疑問に思った、その程度だ。

 次兄があっさりと戦死してから王宮で次兄を推していた貴族の混乱をよそに庶子の自分が王位を継ぐしかなくなり、国王見習いとしてアリシア王国に行く時、親友を半ば強引に拉致した。不安だったし、手元に仲間が欲しかった。護衛騎士だって貴族だ。貴族の権利や諸々のしがらみに振り回されるはずだと考えたからだ。

 親友に王城の地図を作らせつつ、王都の地図を作らせた。全ての動向を探る地図を使い裏切り者を排除して、利害一致した女と婚姻関係を結んだ。一粒種は王妃のマナやオドを枯らして出てきた王のマナを持つ子供で、母の魔法陣作成の能力を受け継いでいた才能のある子だ。

 王自ら乳をやり下の世話をし、なるべく王妃を安静にさせていたが、王妃が産褥で亡くなり、数年後親友と一緒に育てた子の目の前で、毒の正体を知った。

 初めてのキスは冷たいキスだった。

 口移しで流された毒は身体中に駆け回り、吐血して血まみれになりながら頭が真っ白になって、二階の王の自室で剣を振るう。狂戦士バーサーカーととなり剣を振り回し血を吐き続け、魔剣は毒を『殺そう』と王の剣として王を刺そうとした。

「だめ、ちちうえ!」

 邪魔をするな、毒を抜くだけだ。しかし魔剣ロータスの切先は王の息子の首を掠めた。致命傷にならなかったはずだ。掠っただけだが、首から血が噴き出し幼い息子のオドもマナも切れかけて倒れた。

「たすけて、おー……」

 幼い息子の最後の力を振り絞った魔法陣が開いて、王も王の息子も助かったが、被害は計りきれなかった。巨人の片目、獣面人の片腕を奪い、抜かれた毒を瓶に封じた小人によって首に付けられたのは、王の息子の血で作られてた首枷。

「ガルド神は憂いています。子殺しはこの世界最大の罪。血の首枷には貴方のマナを子に譲渡する陣が施してあります。子が成人まで生かすのが貴方の罰。そして多くの死をもたらした罪は、貴方の死で償われることでしょう。その方法はーー」

 小人が倒れ気配もなく陣が閉じると、世界の保護者であり断罪者である者たちは消えた。王は国の魔法師によって封印の部屋に移され、王は王の成人年齢まで生かされることとなる。

「全てを忘れろ」

 王は幼い息子の目の前の惨劇を禁忌の忘却陣を使い封印した。幼さが残る大きな青い瞳に『姿』は残ったのだろうか。忘れてほしかった。

 封印の扉の中には沢山の女や男が慰めにと送られてきた。『罪の死』のことを知っているレーダー公からがほとんどで、大抵は王のマナを受けて死んだからか、噂が噂を呼び次第に来なくなってきた。マナを送り続けた息子が成人すると、マナの吸収が緩まり部屋から出ることが出来た。

 部屋を出た王の顔を見るなり昏倒した息子には申し訳なく思うが、探さなくてはと町へ出る。ひたすら彷徨い『毒』を追う。それは不審死を調べていたら分かった。不審死は砂漠の村から徐々に増え、今や王宮にまで手を伸ばしていた。





 人が近づく気配を感じて、息を潜めた。

 『毒』は完全に抜けたが、『毒』に近づくと身体の細胞がざわめく感じがする。あれから年月が立ったのが嘘のようだ。実際に部屋から出られるようになったのは数年前だから、時間は僅かほどしか止まっていないような感じがしている。

 屋敷主が来るのを待つために、自身に幻影陣を施してある。椅子に浅く腰掛けつい昔に思いをはせていた。

 静寂の中でやっと足音がした。室内に入った男の背後で陣を解除すると、室内に入った男が主人にしか開けられない金庫に触れ魔石で覆われた横長のボックスをテーブルに出してから、びくりと肩を震わせて振り返る。

 質のいい貴族ジャケットにズボン、この南の国では珍しく北方面特有のベストを中に着ている男がブレンダー子爵だ。細く痩せて顔色が悪い。

「待っていたぞ、ブレンダー子爵」

「あ、ああ、あんたか。全く気配がなくて驚いたよ。金は用意できたんだろうね」

 ブレンダー子爵はこちらを睨め付けながらテーブルの後ろに後退りしていた。

「その箱一個に大金貨十枚。なかなかの金額だ」

 大金貨を床に十枚投げる。

「こいつあればしばらく使えますよ、ランカスター男爵」

「確かにそうだな。だが、王の息子に『毒』を飲ませようとしたのは、やりすぎだ」

「何の話だ?」

 とぼけたブレンダー子爵に片眉を持ち上げた。
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