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十五章 毒の腕
99 ランカスターの亡霊
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下町から貴族街に馬車が一台出るのは、異質なことじゃない。検問で国民プレート見せて入っていく。僕の国民プレートは貴族だから、チップなどは必要ない。貴族以外が入る時は国民プレート以外にも金銭が必要だ。
地味な馬車に黒服のバトラーを御者にした僕らは、白い服の上に黒いコートを羽織っていて、そんなに目立っていない。馬車は屋敷の近くの裏林の中に停まった。
「黒い服に着替えた方がいいよな。アズール、ある?」
「席の下にございますよ」
僕の言葉に馬を立ち木に繋ぎ直したアズールが、馬車の外から話す。
「うん、さすが。オーちゃんの使用人。スバル、着替えよう」
隣に腰掛けていたセネカが、コートの下の白服を脱いで、軍服と動きやすいズボンと黒ブーツに変える。スバルの座席下の服もズボンだ。
「僕はーーあれ?」
僕の座席の下から出てきたのは、黒いキュロットと膝上ニーソックスとショートブーツに、
「ーーうっ」
となる。これ、用意したのは、レーンだろうな。
「わあ、オーちゃん似合うよ」
「ノリンは可愛いから、大丈夫!」
セネカとスバルに言われても嬉しくない。僕は開き直ることにした。フリルはいつものことだが、キュロットの太腿外側にスリットが入っているのはいかがなものか。動きやすいのは間違いないのだが、ブーツのキュロットから足が丸見えになる。
「動きやすいのは、確かにいい。顔を覆えば誰か分かるまいよ」
その直後、セネカとスバルが顔を見合わせ微妙な沈黙をする。分かってるよ、これはもう負け惜しみってやつだ。せめてハーフパンツにして……いやいや、そうするとホットパンツにハイニーソなんてなりそうだ。妥協点はキュロットでいい。
しばらく馬車の中で待っていると、気配を殺していたアズールが軽くノックする。
「えーっと……ノリン、とにかくめっちゃ似合ってるから」
とりあえずって感じでスバルが口にした。あー、優しくしないでくれ。
「坊ちゃん、人の出入りが止まったようです」
アズールが馬車の扉を開けて、僕の手を取るとタラップを掛けた馬車から降ろすが、スバルとセネカは素早く降りた。まあ、僕だって降りられるわけだが、アズールがやりたいんだから仕方ない。
「お昼ご飯は無理っぽいけど、夜ご飯までに戻りたいねえ。僕、ミカちゃんとデートなんだよ」
「やるねえ、セネカさん」
でいと?ってなんだ?
見れば見るほど味のある屋敷は、旧ランカスター様式と言われる田舎作りの屋敷で、ツェッペリン邸と同じ作りだ。土壁や煉瓦より木を組見上げた素朴な造りで、古い一階建ての屋敷だ。
多分地下があったはずで、背後には土山がありその下に階段が続いていて、地下に牢屋がある。元々ランカスター王家の持ち物で、アーネストが受け継いだ屋敷の一つだ。
「毒は地下牢か?」
僕は思いついて呟く。
「分かるの?オーちゃん」
「普通はそうだろ?多分地下牢は土牢だから、毒が地面に染み込み、それが地面に伝わり水脈に入ったって考えるのが普通じゃないか?」
シーカーで捉えると、後ろの林には細い川が流れている。昔の地図通りだと思う。だったら、毒は地下だ。
「正直、すごいって思うよ、その先見の明。ーー僕もそう思うしね、強いマナが地下にあるから、目指すのは地下だよ」
セネカの言葉にスバルが頷き、僕は腰にある魔剣ミスリルを手にした。その時、屋敷全体を見回っていたアズールが戻ってきて動きがないことを教えてくれた。
僕は呟きスバルが銃を出したが、セネカのハート付きの魔法杖に脱力した。
「僕は媒体がないとマナを発揮できないタイプなんだよ!前にも殲滅の時、見たでしょ?」
ちらっと見たけどさあ、ハートのステッキだっけ!?
杖を使用するのは、ユグドガルド大陸の魔法師の形だ。僕はガルドバルド大陸式の魔法陣を使うから、基本的には杖など集中や魔石をはめこんで増幅する必要はない。
「今回は、抹殺なしだよ。致命傷は与えないように」
とセネカが話す。パラライズだって心臓発作起きるけどなあ……死なすなよ、スバル。スバル、緊張してないなあ、慣れてるのか?
「了解」
僕がそう答えた直後にセネカを取り巻く空気が変わる。ステッキを構えると息を吐いてから、
「結界陣発動!ーーもう君たちは逃げられないっ!ランカスターの亡霊だよ!」
少し高めのよく通る声がぴりりと空気を震わせた。マナで覆われた空間からは出ることが出来ない。セネカの声を聞いた者たちが、武器を手にしていた。
庭から一階の玄関には十数名だけで、口々に叫んでいたが、見覚えのある男が僕たちに明確な言葉を放つ。
「な、ランカスターの亡霊っ!!」
「男爵様が話していた?」
僕らは結界陣の中に入ると、ああ、思い出したアズホーン男爵だ、が、いた。
僕は抵抗する気配を感じて、
「魔剣ミスリル、伸びろ」
と一気に踏み込むと進みながら腰から剣を抜いた。
抵抗する者は、足をぶった斬って動けなくする。容赦はしないし、躊躇もしない。
「えげつない~っ。血が出てるの嫌だなあ」
とか言いながら、意外にもスバルの射撃の腕はなかなかで、あっという間に倒れた男たちの悲鳴や怒号が飛び交う。
スバルが再び小さな悲鳴を上げたが、それがどうした。武器は腕ごと落とせばいい。降伏なんて言葉は戯れ事だ。
「オーちゃん、容赦ないなあ。君も、腕ごと引きちぎるのはやめよーよ」
言われているのはアズールだ。一階は食事用のテーブル以外は盗品のようだった。武器が多くあり、木箱の中を少し覗くと、大量生産系の型の一緒の剣があった。
なに?戦争でも始めるってのか?北は確かに不穏らしいけど……。
アズールも動けなくするために瞬く間に外から中へ入る。慌てているのは相手だけで、一階の奥扉に向かうまでにはまだ何人かいた。
「オーちゃん、地下への扉に行って!僕らは一階のメンバーを動けなくするから!」
セネカの合図に、僕は
「分かった」
と頷き、セネカの背後を走り過ぎる。僕の横の男の襟首を掴んで……ぶん投げた。もちろん加速陣や身体強化陣を塗布してあるから、男はぶっ飛んで、大量生産系剣の箱に頭を打ちつけて気を失ったようだ。
地味な馬車に黒服のバトラーを御者にした僕らは、白い服の上に黒いコートを羽織っていて、そんなに目立っていない。馬車は屋敷の近くの裏林の中に停まった。
「黒い服に着替えた方がいいよな。アズール、ある?」
「席の下にございますよ」
僕の言葉に馬を立ち木に繋ぎ直したアズールが、馬車の外から話す。
「うん、さすが。オーちゃんの使用人。スバル、着替えよう」
隣に腰掛けていたセネカが、コートの下の白服を脱いで、軍服と動きやすいズボンと黒ブーツに変える。スバルの座席下の服もズボンだ。
「僕はーーあれ?」
僕の座席の下から出てきたのは、黒いキュロットと膝上ニーソックスとショートブーツに、
「ーーうっ」
となる。これ、用意したのは、レーンだろうな。
「わあ、オーちゃん似合うよ」
「ノリンは可愛いから、大丈夫!」
セネカとスバルに言われても嬉しくない。僕は開き直ることにした。フリルはいつものことだが、キュロットの太腿外側にスリットが入っているのはいかがなものか。動きやすいのは間違いないのだが、ブーツのキュロットから足が丸見えになる。
「動きやすいのは、確かにいい。顔を覆えば誰か分かるまいよ」
その直後、セネカとスバルが顔を見合わせ微妙な沈黙をする。分かってるよ、これはもう負け惜しみってやつだ。せめてハーフパンツにして……いやいや、そうするとホットパンツにハイニーソなんてなりそうだ。妥協点はキュロットでいい。
しばらく馬車の中で待っていると、気配を殺していたアズールが軽くノックする。
「えーっと……ノリン、とにかくめっちゃ似合ってるから」
とりあえずって感じでスバルが口にした。あー、優しくしないでくれ。
「坊ちゃん、人の出入りが止まったようです」
アズールが馬車の扉を開けて、僕の手を取るとタラップを掛けた馬車から降ろすが、スバルとセネカは素早く降りた。まあ、僕だって降りられるわけだが、アズールがやりたいんだから仕方ない。
「お昼ご飯は無理っぽいけど、夜ご飯までに戻りたいねえ。僕、ミカちゃんとデートなんだよ」
「やるねえ、セネカさん」
でいと?ってなんだ?
見れば見るほど味のある屋敷は、旧ランカスター様式と言われる田舎作りの屋敷で、ツェッペリン邸と同じ作りだ。土壁や煉瓦より木を組見上げた素朴な造りで、古い一階建ての屋敷だ。
多分地下があったはずで、背後には土山がありその下に階段が続いていて、地下に牢屋がある。元々ランカスター王家の持ち物で、アーネストが受け継いだ屋敷の一つだ。
「毒は地下牢か?」
僕は思いついて呟く。
「分かるの?オーちゃん」
「普通はそうだろ?多分地下牢は土牢だから、毒が地面に染み込み、それが地面に伝わり水脈に入ったって考えるのが普通じゃないか?」
シーカーで捉えると、後ろの林には細い川が流れている。昔の地図通りだと思う。だったら、毒は地下だ。
「正直、すごいって思うよ、その先見の明。ーー僕もそう思うしね、強いマナが地下にあるから、目指すのは地下だよ」
セネカの言葉にスバルが頷き、僕は腰にある魔剣ミスリルを手にした。その時、屋敷全体を見回っていたアズールが戻ってきて動きがないことを教えてくれた。
僕は呟きスバルが銃を出したが、セネカのハート付きの魔法杖に脱力した。
「僕は媒体がないとマナを発揮できないタイプなんだよ!前にも殲滅の時、見たでしょ?」
ちらっと見たけどさあ、ハートのステッキだっけ!?
杖を使用するのは、ユグドガルド大陸の魔法師の形だ。僕はガルドバルド大陸式の魔法陣を使うから、基本的には杖など集中や魔石をはめこんで増幅する必要はない。
「今回は、抹殺なしだよ。致命傷は与えないように」
とセネカが話す。パラライズだって心臓発作起きるけどなあ……死なすなよ、スバル。スバル、緊張してないなあ、慣れてるのか?
「了解」
僕がそう答えた直後にセネカを取り巻く空気が変わる。ステッキを構えると息を吐いてから、
「結界陣発動!ーーもう君たちは逃げられないっ!ランカスターの亡霊だよ!」
少し高めのよく通る声がぴりりと空気を震わせた。マナで覆われた空間からは出ることが出来ない。セネカの声を聞いた者たちが、武器を手にしていた。
庭から一階の玄関には十数名だけで、口々に叫んでいたが、見覚えのある男が僕たちに明確な言葉を放つ。
「な、ランカスターの亡霊っ!!」
「男爵様が話していた?」
僕らは結界陣の中に入ると、ああ、思い出したアズホーン男爵だ、が、いた。
僕は抵抗する気配を感じて、
「魔剣ミスリル、伸びろ」
と一気に踏み込むと進みながら腰から剣を抜いた。
抵抗する者は、足をぶった斬って動けなくする。容赦はしないし、躊躇もしない。
「えげつない~っ。血が出てるの嫌だなあ」
とか言いながら、意外にもスバルの射撃の腕はなかなかで、あっという間に倒れた男たちの悲鳴や怒号が飛び交う。
スバルが再び小さな悲鳴を上げたが、それがどうした。武器は腕ごと落とせばいい。降伏なんて言葉は戯れ事だ。
「オーちゃん、容赦ないなあ。君も、腕ごと引きちぎるのはやめよーよ」
言われているのはアズールだ。一階は食事用のテーブル以外は盗品のようだった。武器が多くあり、木箱の中を少し覗くと、大量生産系の型の一緒の剣があった。
なに?戦争でも始めるってのか?北は確かに不穏らしいけど……。
アズールも動けなくするために瞬く間に外から中へ入る。慌てているのは相手だけで、一階の奥扉に向かうまでにはまだ何人かいた。
「オーちゃん、地下への扉に行って!僕らは一階のメンバーを動けなくするから!」
セネカの合図に、僕は
「分かった」
と頷き、セネカの背後を走り過ぎる。僕の横の男の襟首を掴んで……ぶん投げた。もちろん加速陣や身体強化陣を塗布してあるから、男はぶっ飛んで、大量生産系剣の箱に頭を打ちつけて気を失ったようだ。
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