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序章 死の淵
0僕の手を握って
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ソファに座るジーンは目を閉じている。物思いに耽っているようで、ジーンがハミルさんのことを思い出して悲しんでいるのが分かる。それと同等なくらい怒りを感じているのも分かる。
ハミルさんはジーンの長年の友であり、そしてジーンの目の前で死んでしまった。そんな風にしたのはきっと僕だ。ごめんなさい、ハミルさん。
「アキラ、気がついたかい?」
ふっと目を開け、ジーンが僕を見つめてぎこちなく笑う。僕の悲しみにジーンが気付いてしまった。
「ジーン、無理に笑わないでください。僕……」
僕に残された命はもう長くない。同じ毒を飲んだハミルさんは即死だった。治験体で薬に耐性がある僕だからか、再生と治癒能力を持つからか、ハミルさんより少しだけ生きていられる。でも、意識が途切れることが多くなった。
「私に出来ることはあるかい?アキラのために何かしたい」
真摯な表情のジーンの端正な顔に、僕は小さく笑う。
「……じゃあ、手を握ってください」
ジーンは僕の口にした言葉に驚いたようだった。即座に頷くと、ジーンが唇を噛んで苦しそうな顔をして見つめてくる。
「本当に?本当にそれだけかい?」
「はい、もう誰にも見られたくないです。注射もお医者様もいりません。最後は二人だけでいたいです」
僕がジーンの手を僕なりにぎゅっと握ると、ジーンの表情が崩れ金の目が伏せられる。ハミルさんが死んでも泣くことが出来なかったジーンは、僕の指に指を絡めると祈るようにして、寝台の上に顔を伏せた。
「ずっと……こうしているよ」
掠れた声で告げ、僕は再び意識が薄れそうになり深い息をついた。
「ジーン……もう……そんなに長くはかかりません」
多分助からないから。
無意識にそんな言葉が出て動揺するジーンの指先に力が入ったのを感じ、僕も力の入らない指にさらに力を入れた。笑って死にたくてジーンを見た。
ハミルさんがどれほどジーンのことを好きだったのか伝えた方がいいのかな。ハミルさんは愛していたんだ。そんなことも考えてみたが、ハミルさんはジーンに秘密だと言った。ジーンはきっと全て分かっている。ハミルさんの気持ちも、ハミルさんの望みも。
それでも……側近だったハミルさんを失った悲しみは癒えない。きっと永遠にジーンの胸を刺す棘となる。ジーンは完璧で、僕がジーンに出来ることなんてない。ハミルさんは足手まといになる僕を殺して、ジーンと別れる決意をした。もうじき僕もハミルさんがいる場所に向かう。仲良くはしてくれそうもないけど、隣でジーンのことを話せるかな。
「アキラがいて、私は幸せだ。君はそんな私を一人にして、不幸にしてしまうのかい?」
不意にジーンがぽつりと呟き、僕はほろりと涙を零してしまう。泣いたらジーンが泣けないのに。ハミルさんが死んだ時も周りが泣いていて、ジーンは悲しみに浸れなかった。
死にたくない……ジーンを置いて行きたくないです。僕は再び目を閉じて意識が薄れ、深い眠りの中に入って行った。
ハミルさんはジーンの長年の友であり、そしてジーンの目の前で死んでしまった。そんな風にしたのはきっと僕だ。ごめんなさい、ハミルさん。
「アキラ、気がついたかい?」
ふっと目を開け、ジーンが僕を見つめてぎこちなく笑う。僕の悲しみにジーンが気付いてしまった。
「ジーン、無理に笑わないでください。僕……」
僕に残された命はもう長くない。同じ毒を飲んだハミルさんは即死だった。治験体で薬に耐性がある僕だからか、再生と治癒能力を持つからか、ハミルさんより少しだけ生きていられる。でも、意識が途切れることが多くなった。
「私に出来ることはあるかい?アキラのために何かしたい」
真摯な表情のジーンの端正な顔に、僕は小さく笑う。
「……じゃあ、手を握ってください」
ジーンは僕の口にした言葉に驚いたようだった。即座に頷くと、ジーンが唇を噛んで苦しそうな顔をして見つめてくる。
「本当に?本当にそれだけかい?」
「はい、もう誰にも見られたくないです。注射もお医者様もいりません。最後は二人だけでいたいです」
僕がジーンの手を僕なりにぎゅっと握ると、ジーンの表情が崩れ金の目が伏せられる。ハミルさんが死んでも泣くことが出来なかったジーンは、僕の指に指を絡めると祈るようにして、寝台の上に顔を伏せた。
「ずっと……こうしているよ」
掠れた声で告げ、僕は再び意識が薄れそうになり深い息をついた。
「ジーン……もう……そんなに長くはかかりません」
多分助からないから。
無意識にそんな言葉が出て動揺するジーンの指先に力が入ったのを感じ、僕も力の入らない指にさらに力を入れた。笑って死にたくてジーンを見た。
ハミルさんがどれほどジーンのことを好きだったのか伝えた方がいいのかな。ハミルさんは愛していたんだ。そんなことも考えてみたが、ハミルさんはジーンに秘密だと言った。ジーンはきっと全て分かっている。ハミルさんの気持ちも、ハミルさんの望みも。
それでも……側近だったハミルさんを失った悲しみは癒えない。きっと永遠にジーンの胸を刺す棘となる。ジーンは完璧で、僕がジーンに出来ることなんてない。ハミルさんは足手まといになる僕を殺して、ジーンと別れる決意をした。もうじき僕もハミルさんがいる場所に向かう。仲良くはしてくれそうもないけど、隣でジーンのことを話せるかな。
「アキラがいて、私は幸せだ。君はそんな私を一人にして、不幸にしてしまうのかい?」
不意にジーンがぽつりと呟き、僕はほろりと涙を零してしまう。泣いたらジーンが泣けないのに。ハミルさんが死んだ時も周りが泣いていて、ジーンは悲しみに浸れなかった。
死にたくない……ジーンを置いて行きたくないです。僕は再び目を閉じて意識が薄れ、深い眠りの中に入って行った。
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