召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜

クリム

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一章 異世界

9 僕のキス

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「分かりません。でも、ジーンが望むなら。あの、タークさん、僕はスニークさんに嫌われているようなんです」

 タークさんが困った顔をしては答えてくれた。

「スニークはラメタル貴族で、腹実の伯爵令息です。ラメタル王国とパールバルト王国の橋渡しの正妃候補として送られてきました。ラメタル王国とは僕らの孫のジェスが王配として入った国です。僕らは実はラメタル王国の客分でもあるのです。ジェスの伴侶は半ば強引に生まれ故郷のレムリカント王国を去り、ラメタル王国を与えられたので、僕たちが国作りのお手伝いをしていたのですよ」

 一度言葉を切ると、

「ジーンからは話を聞きましたか?パールバルト王国は疫病が蔓延して、それを食い止めたのがジーンだったのです。その功績からパールバルト王がジーンにパールバルト王国を託すと宣言して亡くなったのです。ジーンは渋っていましたが、番いを迎えに行くのを条件にパールバルト王国の王になることを了承しました。目立つことが苦手な子ですからかわいそうだとは思うのですが、王族としての生を受けたのですから仕方ありませんね」

 ふと、タークさんは番いのセフェムさんと、伴侶のガリウスさんがいるけれどと思い出した。

「タークさんは番いとか伴侶ってどう考えていますか?」

 タークさんはきょとんとした顔をして、

「うーん、参考になるかは分かりませんが、僕は神託の小人でして、結構年上なんですが巨人族のガリウスの第三妃として伴侶になりました。理由は『中継ぎの王』の宿り実がなかなか成らないからです。ガリウスは今でこそ立派ですが、昔は図体ばかり立派で……セフェムは番いでした。発情期にかっさらわれまして実が出来たりと、なんのかんのありましたがそのうちに僕らはみんなで仲良くなりました。でもですね、僕はガリウスを独占したくなってしまったんですよ。番いではないのに、一人だけで独占したい、その手を僕から離して欲しくない。他の妃に触れて欲しくない……。ね、アキラくんがジーンにそう思ったのなら、それは恋の始まりで合図だと思うのです。鈍感な僕はそれを知るまでにずいぶん時間がかかりましたが」

そう話してくれ、僕は胸が痛くなった。

「でも、僕では赤ちゃんが出来ません」

「でも、ジーンの番いはあなたです。誰も彼もが番いにはなりません。あなたは特別なんですよ」

 さらにタークさんが小声で耳元に囁いてくる。

「アキラくん、番いって抗いがたい魂の結びつきなんです。あなたはスニークとは違います。番いは特別なんです。ジーンは誰でも優しいけど、アキラくんには明らかに特別の笑顔を見せていますよ。だからスニークに嫌がらせをされたのですね。あの子は正妃や正伴侶にはなり得ません。ラメタル王国に少し話しをしてみましょう。おやーージーンが来ましたね」

 ジーンが部屋に入ってくるとタークさんがソファから飛び降り、入れ替わりに出て行ってしまう。僕はジーンに頼まれた日本についてのことをまだ書いていなくて、慌ててマッピング方式で書いてみた。

 ジーンは食事を部屋で取ろうと話して、ワゴンで運ばれてきた食事を取りながら僕の話を聞いてきた。僕は戦後の日本の歴史を交えながら話しをすると、

「そのあたりは母の記憶から理解しているよ。私と兄は母の記憶を受け継いでいるからね」

と第一次世界大戦のあたりからの記憶を受け継いでいると言っていて驚いた。

「アキラが住んでいた世界は生前の母が過ごしていた時代と近いが、スマホなんて無かったな。タブレットで通信教育も意外な……」

「これならば遠距離の人や学校に行けない人も学ぶことが出来ます。でも学校の本質は団体だから学べる刺激し合う心を育むことだとも聞きました」

 僕が苦手だったこと。

 食事が済むと僕が風呂に入っている間、ジーンは書き物をしていた。ジーンが考える新しい国はどんなのだろう。ジーンの横に立ってお風呂のことを話すと、ふとジーンが甘く笑い、僕の頰を指先で触れてからゆっくり屈み込んでくる。頰にキスをされると思った瞬間、無意識に目を閉じた。

「アキラが可愛くて仕方ないよ。私の番い……」

 もう一度頭を撫でられ、ジーンの顔が近づいてくるのか分かった。つられるように目を閉じてしまうと、かすかな吐息が頰にかかり、優しく頰を指で撫でられる。次には唇に柔らかな感触があった。びっくりして目を開けるとジーンが見えて、離れていく。

「嫌ではなかったかい?」

「はい。う、うれしかったです」

 ジーンは今度は素早く頰にキスをしてくる。ちゅ……と音を立てて唇が離れ、同時にジーンが立ち上がった。

「もう少し仕事をしてからシャワーを浴びるよ。おやすみ、アキラ」

 ジーンが部屋の明かりを薄暗くして、視界が暗くなる。ジーンがいない寝室に僕の胸の鼓動だけが響いている。

 どうしよう、ジーンが好きだ。
 
 僕はそう思った。
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