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一章 異世界
10 僕の戸惑い
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ジーンは相変わらず忙しそうにしていたけど、必ず夜は僕のベッドまで来て、頭を撫でてくれておやすみのキスをしてくれる。
初めて唇にキスをされた時は、息が止まりそうなくらいで心臓がどきどきした。
その後毎日唇にキスをされているけど、どきどきはひどくなる。
キスをされると身体がぽかぽかして眠れなくなってしまいます、ジーン。
ジーンといるのが一番楽しい。僕はジーンの手伝いがしたくてたまらなかった。
タークさんは城屋敷で薬草を作っていて、一緒に手伝いをさせてもらっていた。そのあと植物の本を借りるために図書室へ行くと、僕は数冊本を手にして部屋に向かう。廊下でハミルさんと会った。
「ああ、よかった。部屋に行くところでした」
ハミルさんは手に大きな紙包を持っている。僕がドアを開けるとハミルさんは部屋に入り、紙包を応接セットのガラステーブルに載せる。
「本国からジーン宛に送られてきました。ここに置きますから、渡しておいてください。多分あなたのものでしょう」
「何ですか?」
「服ですよ。ジーンは服をデザインして作らせることが好きなのです。この軍服もジーンのデザインです」
服と聞いて、まだこれ以上服を……と僕は頭が痛くなったが、ハミルさんは紙包を大切そうに撫でていて、その表情はジーンに対する誇りや尊敬みたいなものが現れていて、
「ハミルさんはジーンが好きなんですね」
とつい呟くと、ハミルさんの青い瞳が鋭くなる。
「好きですか……好きなんて軽い言葉で表して欲しくはありません。私はジーンを愛しています。この命を助けてもらった時から、私はジーンの為だけに生きてジーンの為に死ぬことしか考えていません。今はジーンを国王にするためになら、なんだってできます」
軽い気持ちで口から出た言葉は、重く熱い愛の言葉で返され、ハミルさんは廊下で僕に向き直ると、いかにジーンが素晴らしいかを話し始めた。
ハミルさんの話もやっぱり疫病で王様達が死んでしまったパールバルト王国の王様にジーンは王に任命されたことから始まっている。ジーンは本国から命じられてパールバルト王国の王になるべく、もう一つの強大な勢力と戦って終戦の後始末をしているらしかった。
「ああ、長話しをしてしまいました。だが、あなたも間が悪い。番いなど迎えに行かなければよかったものを」
「え?」
「ーーいえ」
結構長い間ジーンについて語っていたハミルさんが用事を思い出して出て行ってしまうと、僕は脱力してしまった。最後の言葉は何だったのだろう。夜、ジーンに話をしたら、
「……ハミルの話は聞かなくていいから。ハミルは私を命の恩人だと思い込んでいるだけだから。疫病対策に出たのは私だけで無いんだからね」
なんて苦笑していた。
珍しくジーンが夜まで仕事が終わらなくて、僕は心配してくれたタークさんと食事を取った。セフェムさんは抵抗勢力狩りとかで軍隊を組織していなくて、タークさんは
「働き過ぎですよ、もう」
とぼやいていた。タークさんと分かれて真っ暗の部屋に戻るとベッドに転がっていた。ジーンは働き過ぎです、僕もそう思った。うたた寝をしていると、ドアが開く音がしてジーンが部屋に入って来たのが分かって立ちあがろうとした。ドアノブはマナに反応して開く。だからこの部屋に入ることが出来るのは僕とジーンだけなのに、ジーンはスニークさんを後ろに連れていた。
寝室から二人の姿が見えた。ベッドに座ったまま部屋の中を見ていると、スニークさんがジーンに抱きついていた。すがりつくスニークさんをジーンが宥めているようにも見えて、ジーンはスニークさんの肩を抱き、何か話しかけていた。何度も首を横に振るスニークさんはジーンに抱きつき、ジーンはそれを受け止めている。
二人が抱き合っているのを見て、嫌な気持ちになる。初めて感じるその気持ちは嫌悪感で、僕は涙が込み上げてきた。苦しい、二人を引き裂きたいと思うん。
ジーンはスニークさんのことが好きで、スニークさんもジーンのことが好きだから、僕は嫌がらせをされたの?教えてください、ジーン。苦しくてたまらない。僕が顔を上げると磨りガラス越しにジーンが見下ろしていた視線と出会う。ジーンは戸惑った表情をしていた。
「スニーク、出て行ってくれないかい?」
ジーンは平然と部屋に向かって背後にいるはずのスニークさんに声をかける。僕はベッドにうずくまったまま息を殺していた。
「殿下、お慈悲をっ」
「無駄だ」
スニークさんの声が何度か聞こえてやがてドアが閉まる音がすると、ジーンがもう一度僕を見下ろした。
「ごめんね」
すまなそうにジーンが謝り、ベッドの隣に座った。
「スニークを……」
「ジーンの恋人なんですか?」
ジーンの言葉を遮るように僕は言葉を被せた。いつもと違い尖った声が出てしまい、僕は僕自身にびっくりした。ジーンも驚いた顔で僕を見下ろしている。
「本国から私に充てがわれた腹実の貴族だよ」
淡々とした声で言われ、僕はジーンを見上げた。まるで感情のないジーンを見上げると、ジーンが苦笑した。
初めて唇にキスをされた時は、息が止まりそうなくらいで心臓がどきどきした。
その後毎日唇にキスをされているけど、どきどきはひどくなる。
キスをされると身体がぽかぽかして眠れなくなってしまいます、ジーン。
ジーンといるのが一番楽しい。僕はジーンの手伝いがしたくてたまらなかった。
タークさんは城屋敷で薬草を作っていて、一緒に手伝いをさせてもらっていた。そのあと植物の本を借りるために図書室へ行くと、僕は数冊本を手にして部屋に向かう。廊下でハミルさんと会った。
「ああ、よかった。部屋に行くところでした」
ハミルさんは手に大きな紙包を持っている。僕がドアを開けるとハミルさんは部屋に入り、紙包を応接セットのガラステーブルに載せる。
「本国からジーン宛に送られてきました。ここに置きますから、渡しておいてください。多分あなたのものでしょう」
「何ですか?」
「服ですよ。ジーンは服をデザインして作らせることが好きなのです。この軍服もジーンのデザインです」
服と聞いて、まだこれ以上服を……と僕は頭が痛くなったが、ハミルさんは紙包を大切そうに撫でていて、その表情はジーンに対する誇りや尊敬みたいなものが現れていて、
「ハミルさんはジーンが好きなんですね」
とつい呟くと、ハミルさんの青い瞳が鋭くなる。
「好きですか……好きなんて軽い言葉で表して欲しくはありません。私はジーンを愛しています。この命を助けてもらった時から、私はジーンの為だけに生きてジーンの為に死ぬことしか考えていません。今はジーンを国王にするためになら、なんだってできます」
軽い気持ちで口から出た言葉は、重く熱い愛の言葉で返され、ハミルさんは廊下で僕に向き直ると、いかにジーンが素晴らしいかを話し始めた。
ハミルさんの話もやっぱり疫病で王様達が死んでしまったパールバルト王国の王様にジーンは王に任命されたことから始まっている。ジーンは本国から命じられてパールバルト王国の王になるべく、もう一つの強大な勢力と戦って終戦の後始末をしているらしかった。
「ああ、長話しをしてしまいました。だが、あなたも間が悪い。番いなど迎えに行かなければよかったものを」
「え?」
「ーーいえ」
結構長い間ジーンについて語っていたハミルさんが用事を思い出して出て行ってしまうと、僕は脱力してしまった。最後の言葉は何だったのだろう。夜、ジーンに話をしたら、
「……ハミルの話は聞かなくていいから。ハミルは私を命の恩人だと思い込んでいるだけだから。疫病対策に出たのは私だけで無いんだからね」
なんて苦笑していた。
珍しくジーンが夜まで仕事が終わらなくて、僕は心配してくれたタークさんと食事を取った。セフェムさんは抵抗勢力狩りとかで軍隊を組織していなくて、タークさんは
「働き過ぎですよ、もう」
とぼやいていた。タークさんと分かれて真っ暗の部屋に戻るとベッドに転がっていた。ジーンは働き過ぎです、僕もそう思った。うたた寝をしていると、ドアが開く音がしてジーンが部屋に入って来たのが分かって立ちあがろうとした。ドアノブはマナに反応して開く。だからこの部屋に入ることが出来るのは僕とジーンだけなのに、ジーンはスニークさんを後ろに連れていた。
寝室から二人の姿が見えた。ベッドに座ったまま部屋の中を見ていると、スニークさんがジーンに抱きついていた。すがりつくスニークさんをジーンが宥めているようにも見えて、ジーンはスニークさんの肩を抱き、何か話しかけていた。何度も首を横に振るスニークさんはジーンに抱きつき、ジーンはそれを受け止めている。
二人が抱き合っているのを見て、嫌な気持ちになる。初めて感じるその気持ちは嫌悪感で、僕は涙が込み上げてきた。苦しい、二人を引き裂きたいと思うん。
ジーンはスニークさんのことが好きで、スニークさんもジーンのことが好きだから、僕は嫌がらせをされたの?教えてください、ジーン。苦しくてたまらない。僕が顔を上げると磨りガラス越しにジーンが見下ろしていた視線と出会う。ジーンは戸惑った表情をしていた。
「スニーク、出て行ってくれないかい?」
ジーンは平然と部屋に向かって背後にいるはずのスニークさんに声をかける。僕はベッドにうずくまったまま息を殺していた。
「殿下、お慈悲をっ」
「無駄だ」
スニークさんの声が何度か聞こえてやがてドアが閉まる音がすると、ジーンがもう一度僕を見下ろした。
「ごめんね」
すまなそうにジーンが謝り、ベッドの隣に座った。
「スニークを……」
「ジーンの恋人なんですか?」
ジーンの言葉を遮るように僕は言葉を被せた。いつもと違い尖った声が出てしまい、僕は僕自身にびっくりした。ジーンも驚いた顔で僕を見下ろしている。
「本国から私に充てがわれた腹実の貴族だよ」
淡々とした声で言われ、僕はジーンを見上げた。まるで感情のないジーンを見上げると、ジーンが苦笑した。
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