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二. ニーナの章

1. prologue

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 わたしはどうしても、可愛い妹が欲しかったの。

 たくさんお洋服、ふりふりの可愛いのを着せるの。
 ふわっふわの髪を櫛で梳いてあげて、真っ赤な革靴を履かせるの。

 とってもとっても大事にするよ。
 だってわたしはお姉ちゃんだから。

 わたしの宝物も見せてあげるの。おばあちゃんがくれた大きなくまちゃんも触らせてあげるのよ。

 だってわたしはお姉ちゃんなんだもん。
 可愛い妹の為なら、わたしは何だってするわ。

 おべんきょうも教える。
 おしょくじも一緒よ。
 ベッドは別々かもしれないけれど、妹が怖くて泣くなら朝までお歌を歌ってあげるわ。




 誕生日のプレゼントに妹をお願いしたけれど、プレゼントの中はどれも違った。
 次のクリスマスも、妹は入っていなかった。

 その次のクリスマス。

 病院から帰ってきたお母さんは、とってもとっても小さな赤ちゃんをその手に抱いていたの!
 お母さんがサンタさんにお願いしたら、お母さんの靴下の中に入っていたんだって。

 わあ!いいなあ!!

 お母さんがわたしに赤ちゃんを抱かせてくれたの。
 とっても小さくて、とっても可愛い赤ちゃん。

 ちょこっとしわしわで、ちょこっとおさるさんみたいと思ったのはないしょよ。



「あなたの妹よ、大事にしてあげてね」

 お母さんはわたしのかわりにサンタさんにお願いしてくれたんだ!!!

「うん!いっぱいいっぱい大事にする!だってわたしはずっと、可愛い妹がほしかったの!」

 わたしはぎゅうと妹を抱きしめた。
 痛かったのかな。妹が泣いちゃった。

 ああ、そうか。大事にあつかわないと壊れちゃうもんね。


「ごめんね、赤ちゃん」



 私は妹をとても大事にした。

 何処に行くのも一緒で、何をするにも妹は私の真似をする。
 とても大事な存在だったけれど、こうもべったりだと少しだけ意地悪したくなる。

 あの日もほんのちょっとだけ妹に意地悪してしまって、妹はそんな私の悪戯に慣れてしまっていて、最後は鼻と鼻をくっつけてごめんなさいして仲直りで終わったけれど、ちょっと悪戯が過ぎてしまって家に帰ったらお母さんからとても怒られてしまった。

 私しか怒られなかったのは私がお姉ちゃんだからだけど、妹だけズルいと文句を言ったらそれっきり何も言わなくなってしまった。

 あの日以来、お母さんもお父さんもお祖母ちゃんもどこかぎくしゃくしていて、私はずっと怒らなくてもいいのにとプンプンしていた。
 妹が慰めにきてくれて、一緒にお人形さんで遊んだら、ぷんぷんした気持ちも忘れてしまった。

 私は妹をとても大事にしている。
 お姉ちゃんだから、妹とずっと一緒にいて、ずっと一緒に遊ぶの。

 そう、ずっと。


 ――――永遠に。




 ■■■


 私の7歳の誕生日。

 空は真っ青でとても綺麗。海から来る潮風も、涼しくて気持ちいい。
 夕方から近所の人たちもたくさん呼んでパーティするので、お母さん達は朝からとても忙しい。

 女の子にとって7歳のお誕生日は特別なの。
 マナの女神様が海を創ったのが7歳の時だったんだって。
「海は生命を育む母」だから、女の子はみんな7歳になると海に浸かってお祈りするの。
 私も大きくなったら、たくさんの子どもを産んでいつまでも長生きしますようにって。

 儀式の準備があるからって、お父さんも忙しそう。
 私は妹と二人、夕方までやることなくて暇だった。
 昼前にお母さんが来て、妹のテルマにふわっふわのドレスを着せていった。

「お姫様みたい!!」
「ねー!!」

 黒髪の私と違って、お父さん似のテルマはシルバーブロンドの綺麗な髪だ。
 癖っ毛が凄いけど、くるくるカールがとっても可愛い。真っ直ぐな髪の私にはそれがほんの少しだけ羨ましかった。

 テルマのドレスはこの日の為にわざわざ新調したもの。
 私の儀式の最後、お花をプレゼントする役目になったから、お父さんがわざわざ《王都》に行って買ってきたんだって。
 3歳のテルマにぴったりの、黒を基調としたフリルのドレス。ペチコートはふんわりふくらんで、お花が開いているみたいだ。

「とっても可愛い!!」
「ねー!!」

 彼女は鏡の前でくるくる回って、とても楽しそうにはしゃぐ。
 私は儀式の時に着る巫女服があるので、普段着のままだ。
 夏間近、お日様がどんどん高くなる季節。私は汗を掻いてもいいように、半そでのシャツに短パンだ。

「お昼過ぎたら、お姉ちゃんは儀式のお着換えね。それまではここで大人しくしておいてね」

 お母さんが私とテルマ、二人の頭をぽんぽんと撫でて部屋を出て行く。
 夜はパーティでたくさんご飯を食べるからと、おにぎりを置いて行った。

「はーい」
「はあい!」

 仲良く二人で返事して、扉が閉まるのを待った。
 お母さんがトントンと二階から降りる音を確認して、おにぎりを紙で簡単に包んで鞄の中に突っ込む。

「テルマ、行こう!」
「うん!」

 実はとっくに飽きていたのだ。
 外はこんなにいい天気だというのに、朝からずっと部屋の中。絵本を読んだりおままごとしたり、たくさんテルマと遊んだけれどやっぱり外の方が面白い。
 儀式まではまだ時間があるし、お弁当もある。テルマも多分退屈だろうから、抜け出す事にしたのだ。


 計画は、こうだ。

 お外で遊ぶといっても、私は儀式があるので街中の人に見つかってしまうと怒られる。
 お母さんは怒ると怖いのだ。黙ってお尻ペンペンしてくるから、痛いのも嫌だ。

 私の家の裏口から抜けて、裏路地を少し走ると大きな大きなお屋敷がある。
 そのお屋敷は、《王都》に住んでる貴族様の家だ。

 でも貴族様はこのお屋敷には住んでいなくて、真夏のほんの数日間だけやってくる。たくさんの家来と、たくさんの家族をつれてやってくるのだ。
 貴族様は私たちとは喋らない。私たちとは違うビーチにパラソルを一杯立てて、海で遊ぶ。
 ビーチでバーベキューしたり、花火したり、私も行きたかったけれど、身分が違うからダメなんだとお母さんは言った。

 そのお屋敷は一年に一度しか使われないけれど、決まって夏の始まるこの時期に、お屋敷の虫干しが始まる。
 メイドさん達がたくさん来て、お屋敷の家具を全部外に出して一日中パンパンしている。
 真っ白なシーツと、豪華なカーテンを入れ替えて、お屋敷の大掃除をするのだ。

 お屋敷には高い柵で囲まれているけれど、裏路地から進んだ柵の一つが壊れていて、そこから中に入れる事を私は知っている。
 お屋敷は空気の入れ替え中で、窓も扉も全開だ。

「テルマ、探検しよう!」
「たんけん?」

 少し舌足らずのテルマが首を傾げている。

 そう、探検するのだ。

 外は大人たちに見つかる。お屋敷は鍵が開いていてとても広い。
 お弁当もあるし、儀式まではまだまだ時間もある。

 お屋敷の探検をするのだ!

「お屋敷でかくれんぼしよう!あそこは広いから、たっくさん走れるよ。お姉ちゃんを探せるかな?」

 わくわくしてきた。
 そのわくわくがテルマにも伝わったのだろう。彼女も足をダンダンしている。

 ドレスを汚さないようにしたら大丈夫かな。

 テルマの手を引いて、台所でお祖母ちゃんがクッキーを焼いているのをやり過ごして、ああ、見つからなくて良かった。
 こっそりと裏口から外に出る。

 日差しは暑いが、まだ夏は来ていない。
 涼しい風がふわりとテルマのドレスを揺らしている。

「行こう、テルマ!」
「うん、おねえちゃん!!」

 二人で裏路地を走った。
 そして、誰にも見つからずお屋敷の柵を潜り抜けて、鍵のかかっていない扉に入る。

 大きなお部屋、メイドさん達も誰もいない立派な家具が幾つもある場所で、家具に隠れながらお弁当のおにぎりを食べる。

 お水を持ってくるのを忘れていた。
 テルマがお米を詰まらせて、コンコン咳をするのを、一生懸命さすってあげた。

「おねえちゃん、かくれんぼかくれんぼ!」
「じゃあ、テルマが鬼ね!」

 テルマは無邪気にはしゃいでいる。
 いつもと違うシチュエーション、違う雰囲気に興奮しているようだ。
 それは私も同じ。
 にんまりと笑い合って、かくれんぼが始まる。

 私とテルマはいつも一緒だった。
 テルマは私にべったりで、私は妹をとても愛していた。
 そんな日が、いつまでもいつまでも続くのだと、信じていた。



 絢爛豪華な部屋の中のかくれんぼは、いつしか鬼ごっこに替わり、鬼ごっこはいつの間にか部屋の外に場所を変える。一つ一つの部屋は、私たちの家がすっぽり入るぐらい大きかったけれど、力の有り余る子どもは全力で遊ぶと前が見えなくなるものだ。
 そんな難しい言葉をお父さんが言っていたのを思い出す。

 長い廊下でかけっこして、クローゼットの中のドレスを引っ張り出して舞踏会ごっこ。
 それも飽きるとまたかけっこして鬼ごっこ。

 テルマはふわっふわのドレスを着ていたから、少し走りにくそうだったけれど、気にしていない様に見えた。

「おねえちゃん、のどかわいた」

 散々かけっこして私も少し疲れてしまう。
 テルマが私のシャツの端っこを握って、私を見上げている。
 その可愛さにきゅうんとなってしまって、ぎゅうぎゅうとテルマを抱きしめる。

「きゃあきゃあ」

 テルマは笑って走り出す。そのテルマを追いかけて、私も走る。

「ねえテルマ、もうすぐお昼過ぎだから最後のかくれんぼしない?」
「さいご?」

 見れば随分と日は高くなっている。
 遊びすぎてすっかり忘れていた。

 お母さんは部屋に入っただろうか。誰もいなくなった部屋を見て、私たちが抜け出したのを知って、今頃怒ってるんじゃないか。
 少しだけ不安になるが、この楽しさをいつまでも味わいたいとも思ったのだ。

 だから、最後。

「おねえちゃんが鬼になるね。テルマはこのお屋敷の全部を使って、上手に隠れるのよ!」
「ぜんぶ、いいの!!」

 パアとテルマの顔が明るくなる。

「うん、全部。今からおねえちゃんが100数えるから、その間に隠れてね」
「うん!」

 何度もこくこくと頷いて、テルマは走り出す。

「じゃあ、いくよ。いーち、にー、さあん…」

 テルマの走り出した方向は、お屋敷の左側。
 左側は、中庭と菜園、二階建ての建物があるだけだ。

 その建物の中は、プールだ。
 二階建てなのは、飛び込み台が二階部分にあるからだ。

 海があるのにわざわざプール?プールはお外にあるものじゃないの?
 不思議だったけれど、そういえばお父さんが言っていたっけ。冬の寒い日でも、お水をお湯にかえればプールで泳ぐ人たちが《王都》にはいるんだよって教えてくれた。

 室内にあるこのプールも、冬に遊ぶのかな。冬に来た事ないけど。
 そう思いながら、私は一度家に引き返す。


 テルマをお屋敷に置いたまま。



 ちょっとした意地悪のつもりだった。

 私の後ろを、何のためらいもなくくっ付いてくるテルマが、いつ私がいなくなったことに気付くのか試してみたくなったのだ。ほんの悪ふざけだった。

 それに、お母さんが私たちを探しているんじゃないか不安にもなったのだ。
 お母さんの顔を見て、またお屋敷に戻ろうと、そう思った。

 その間にテルマがいつまで経っても探しにこない私に業を煮やして、お家に帰ってくるかもしれないとも思った。

 なんにせよ、私にとっては軽いおふざけのつもりだったのだ。


 家に帰ると、お母さんはまだ庭でせっせと料理を運んでいた。

 私を見て、「構ってあげられなくてごめんね、テルマは元気?」と笑うものだから、なあんだ、取り越し苦労だったなあと思って家の中に入る。

 お家の中は、焼けたクッキーの香りでいっぱいで、私はまたわくわくしてきた。

 台所を覗いているとお祖母ちゃんが気付いてくれて、リンゴジュースとクッキーを二枚渡してくれた。

「ずっとお利口に待っていたご褒美だよ、お母さんには内緒ね」
「ありがとう、お祖母ちゃん」

 その場でクッキーを一枚食べて、ジュースを持って私の部屋に入る。
 もう一枚のクッキーはテルマの分だ。
 ティッシュで包んで、ポケットに入れる。
 たくさん遊んで喉が渇いていた私は、ジュースを一気に飲み干した。

 喉が満足して、少し疲れてしまったのか、うとうととする。
 少しだけ目を瞑って、寝転がった。


 はっと気づくと、もう夕方だった。

 初夏の夕日は黄色い。
 黄色の日差しが顔に当たって、眩しくて目が覚めてしまった。

「ぎしき!!」

 私は飛び起きて、転がるように部屋を出る。

 もうすっかり夕方だ。パーティの始まりは夕方だったはず。
 その前に、儀式があるのだ。

 儀式を忘れて寝ちゃってた!

 階下に降りると、ざわざわと大人たちが騒いでいる。
 儀式を忘れた私を怒っているのか、だけど大人たちは私に目を向けない。

 お母さんは庭にいた。
 なんだかとてもきつい目をして、お父さんと何か喋ってる。

「テルマは…」
「……探し…」

 テルマ?
 お母さんたちの声が聴こえる。
 難しそうな顔で、テルマがどうのこうの話して…。

 ああああ!!!!
 テルマも忘れていた!!!!!

 あのお屋敷にテルマを置いたままだった。
 私を追いかけて帰ってくるかと思っていたけど、テルマはどこか正直なところがある。まだかくれんぼは続いていて、鬼の私が見つけにくるのを、じいと待っているかもしれない。

 慌てて走り出した。

 ようやくお母さんたちが私に気付いた。
 私に何か言っていたけれど、テルマの事が心配で何を言っているのか分からなかった。

 お屋敷の鍵はまだ開いていた。真正面から入る私を、メイドさんが止めようとする。

「ここは、あなたの入っていい場所じゃないのよ!」
「そんな、ここにはテルマがいるのに!!」
「テルマ?」

 押し問答が面倒臭くなって、メイドさんを押しのけて扉を開く。
 あっという声の後ろで、私を追いかけてきたお母さん達の声もしてきた。
 お母さんの制止の声を振り切って、お屋敷の左側に走る。

 大きなお屋敷を、一生懸命走る。

 お庭を見て、果樹園を一通り走り回った。

「テルマ、テルマ!!!」

 テルマの返事は無い。
 あのプールの建物かもしれない。

 テルマはずっと喉が渇いていた。プールのお水を飲もうとしたのかも!

 ギギギと乾いた音を立てる鉄の扉を開き、建物の中に入る。
 夕陽の黄色と同じ色のプールが、真ん中にある。

「テルマどこ?てるまあああ!!」

 いない。
 泣きそうになった。

 あんなに可愛い妹を忘れてしまうなんて、お姉ちゃん失格だ。

 キョロキョロと何度もしていると、上の方から「おねえちゃん?」という声が聞こえた。

「テルマ!」

 反射的に上を見る。
 するとあんなに探していたテルマが、プールの飛び込み台に座って足をプラプラさせていた。
 どうしたの?と言わんばかりに、何ともない顔で。

「そこ、危ないよ!」
「そうかな」

 よいしょと立ち上がる。飛び込み台がテルマの体重分を乗せてしなる。
 ビヨンビヨンと動くそれが、テルマは気に入ったようだ。

 危なっかしくて見ていられなくて、慌てて二階への階段を見つけてテルマに駆け寄る。
 飛び込み台からドレスを引っ張って、通路の方にテルマを引き寄せた。

 そのままぎゅうぎゅうにテルマを抱きしめる。
 苦しいのかモガモガとシルバーブロンドが動いている。

 ああ、良かった無事だった。

「ごめんね、テルマ、ごめんね」
「どうしたの?おねえちゃん」

 先に家に帰ってしまってごめんね。
 テルマを忘れてお昼寝しちゃってごめんね。
 後でおかあさんに怒られるから。
 テルマのかわりにたくさん怒られてあげる。

 ポケットの中にクッキーを入れていたのを思い出した。ポケットから出し、ティッシュを開ける。
 走った所為で割れてしまったクッキーをテルマに差し出す。

「お腹空いたでしょ。お祖母ちゃんが焼いたクッキーだよ。これ食べて、一緒に帰ろ」
「かくれんぼはもう終わりなの?」

 この様子では、私が数時間いなかった事など気付いていないようだ。
 ほっとしてまた抱きしめる。

「うーん、いらない。おねえちゃん食べて?」
「え?」

 お祖母ちゃんのクッキーは、私もテルマも大好物だったはず。
 どこか具合が悪いのかと思ってテルマを見る。

「テルマ、眠くなっちゃったの」

 ああ、そうだったのか良かった。

 すると、テルマの着ているドレスが濡れている事に気付く。
 水が滴り落ちるほどではないが、明らかに湿っている。お花のようだったスカートも、心なしかペッチャンコになっているような気もする。

 お母さんだけではなく、お父さんにも怒られるかもしれない。

「プールに入ったの?」
「んんんん?」
「だって、お洋服が濡れてるから」
「んー。わかんない」
「そっか」

 無邪気に笑うテルマをもう一度抱きしめて、クッキーの欠片を渡す。

「一緒に食べよ。食べたら帰ろ。おかあさんたちも待ってるよ」
「うん!」

 元気に頷くテルマは、そのクッキーを最後まで食べなかった。

 ついにプールの建物まで追いついたお母さんたちが、入り口付近で叫んでいる声を聴いて、これは相当怒ってるなとため息をつく。

 テルマの手を引いて、覚悟を決めて建物から出る。

 その時テルマが、クッキーをプールの中に投げ捨てた。
 その行為が何を意味するのか分からなかったけれど。





 あの日以来、私はテルマに意地悪するのをやめた。

 さらに過保護になったかもしれない。

 案の定、あの後すごい勢いで怒られて、儀式も何もそれどころではなくなってしまった。
 7歳の私の特別な誕生日、特別じゃないまま終わってしまった。

 あれから家族は、何となくぎくしゃくしているように感じる。
 お母さんもお父さんも、お祖母ちゃんも。私と目を合わせてくれなくなった。


 テルマだけが、唯一何も変わっていなかった。


 無邪気な屈託のない笑顔を私にくれるのは、テルマだけになった。
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