赤ちゃんに異世界召喚されちゃった俺!子育てに奮闘しながら聖女様とその巫女たちと、赤ん坊連れて魔王を倒しに行ってきます!

蔵之介

文字の大きさ
46 / 54
第二章 子育て奮闘中

46. 聖女の巫女とは何する人ぞ? ⑤

しおりを挟む
「なあ、聖女の巫女って何するもんなんだ?」

 小休止、俺たちはピクニックよろしく、フアナの持ち込んだ絶品の弁当を囲んで和やかに昼食を楽しんでいる最中である。
 彼らは今日は一日中ここにいるらしく、このひと時の休憩の後は、技の調整や連携技の仕上げに入るとか何とか言っている。

 こういう時、フアナは実に気が利いている。普段は滅法気が強くて乱暴者だが、細やかな気配りというか痒い所に手が届くというか、過ごし易い場所というのを作ってくれる。
 例えば地べたに尻を付けるのは痛かろうと、敷物の他に座布団が用意されていたり、たくさん動いてきつかろうとスティックタイプの甘味と作ってきたりと、気が利きすぎる感もある。
 逆にあの双子は何もしない。フアナに頼り切きり任せきりで、これで彼らが全員同じ年齢で同じ待遇ってのも、なんだか不公平な気がせんでもない。

 リアはそこら辺の雑草の上に転がしている。一時間も長引いたしゃっくりが止まった後、やっと寝てくれたのだ。
 赤ん坊というのはあれで意外と寝相が悪い。うごうごと動いてひっくり返っているのもしばしばだ。全然動かなさそうなのに、のたのた手足を屈折させて、壁にぶち当たって身動きが取れなくなって泣いている事も多い。
 寝ている以外は四六時中身体のどっかが訳もなく動いているのも、赤ん坊の特色である。

「じゃあ、溝を作っておこうよ。リア様が転がってどっかいかないようにさ」

 フアナが昼食の準備をしている間、双子は双子で色々と動いてくれた。急に現れた俺は昼食の人数に入っていないのに席を用意したり、三人分の飯を公平に分けてくれたりと俺に気を遣ってくれたよ。こいつらは基本的に優しい人たちであるのは間違いない。
 これがリアの事に対してだけは気が利かないというのも不思議で堪らないんだが、それほど彼らの世界にとって「赤ん坊」というものは、無関心極まりないものなんだろう。

 だからこその冒頭の質問だった。
 リアを守るべき巫女とは、一体何する人なのか。
 どうして皆おっかない武器を持っているのか。そもそも何故そんな大事なお役目を、こんな若い彼らが担っているのかを。

 すると彼らは言うのだ。
 何も難しい事はない。文字通り聖女を守る為だけのその存在はある。聖女の唯一の欠点である、として、その身は捧げられるのだと――――。

「は?囮だって!?」

「ぶっちゃけて言えば、そうなのよ」

 フアナは卵サンドをハミハミ頬張りながら言う。ピリリと唐辛子のような薬味が混ぜてあって、これが絶妙にクセがあってめちゃくちゃ旨いサンドウィッチだった。

「聖女様は絶対防御オールクリアの加護を持っているから事実上は無敵なんだけど、それでも敵の攻撃を喰らうと衝撃で暫く動けなくなるんだ」

 エミールはのんびりと紅茶を啜っている。
 フアナの絶品をたったの二口でご馳走様したエミールは、育ち盛りだというのに食が細い。
 何でもこれ以上大きくなってしまったら可愛い服が入らなくなるから嫌なのだと、必死で男の成長期に抗っている様子。そこら辺の女子より、遥かに女子力意識が高いのはご立派だ。

「リア様の攻撃手段はね、魔法しかないんだよ」

「魔法っつーと、こいつが泣いた時に発動してた、傍迷惑な台風もどきの事か?」

 リアの体力はすっかり回復しているように見えるが、まだ無意識に暴走していた魔法の力までは戻っていない。俺への加護の力とやらも失われたままで、ズッコケると普通に怪我をする。

「違う違う。リア様の魔法は別格だよ、ほんとに凄いんだから。精霊が宿す五大元素を知っているかな?火水風光闇の力の事なんだけどね。リア様は特性関係なく魔法が使えるんだよ」

「そもそもコウハ様は、聖女様が何をなさる方かご存じですよね?」

 逆にエリザの喰いっぷりは見事なものだった。両手に顔ほどもある馬鹿でかいおにぎりを持って、交互に齧り付いている。いわゆる贅沢食いだ。おにぎりの中身はこれまたギッシリと具が詰まっていて、彼女の顔はご満悦である。
 そんな華奢な身体の一体何処に入って何処に吸収されているんだか。
 そこで衣装の上からも丸わかりなな胸元の二つの果実が目に入り…って、いやいや、これ以上はセクハラ発言なのでやめておこう。

「聖女ってのはアレだろ?魔族がマナを独り占めしてる期間が長くて世界の均衡が崩れてヤバいから、神様が遣わせたテコ入れ要員の事だろ?」

「フツーに合ってるわ…。初めて会った日に説明した以来なのに、ちゃんと理解してたのね」

「なんだ、その顔。俺は元営業マンだぞ、えいぎょー!!客の話聴いてナンボの世界にいたんだぜ?異世界設定なんぞ、老人の脈略もないアテの無い話と似たようなもんだ」

 この世界アゼルには2人の聖女がいる。
 一人は《王都》で王の傍に仕えて、アドバイザーをやっている。もう一人は事実上の実行部隊、すなわちリアとその巫女らだ。

「聖女の役目は、勇者を見つけ出して魔王との決戦の場に連れて行くことなんです。30年前に降臨したリア様は、勇者を見つける旅そのものに大変苦労なさったみたいで。それから先も、生活面において色々と問題があったようです」

「さっきも言ったけど、リア様の攻撃手段は魔法しかない。魔法の発動は、結構めんどくさい手順が必要なのよ。魔法を構築している間に勇者がやられてしまったら元も子もない。30年の間に二回失敗した聖女様は、聖女様だけを守ってフォローし、その生活を支える従者が欲しいから育てるようにと、王様に進言したの」

「魔法の構築?」

 魔法といえば、魔法の杖に長い詠唱、カッチョいい厨二っぽい呪文が相場と決まっている。
 ゲームの世界に於ける魔法使いは、打たれ弱いけど威力は抜群、ボス戦の起死回生を狙えるが、技の発動はしこたま遅くて上級者向けという認識だ。
 これを聴いたエミールは頷いた。こちらの世界は仮想バーチャルではないが、だいたいそんな感じなのだと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...