うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第1章 2 俺のステータスだけ特別すぎないか

大事なもの

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「……で、お前は結局何者なんだ」

 離婚間近の夫婦の喧嘩よりも激しい言い争いを終えた後、俺はベッドに座って、目の前で恭しく立っている美少女人形に改めて尋ねた。

「はい。私は、土辺態男さんの」

「違う」

「石川誠道さんの」

「違う」

「比企戸盛男さんの」

「そうだつづけろ」



 …………ん? あっ!



「てめぇ、図ったな! そこは比企戸盛男を先に言うのがお笑いのルールだろうが!」

「そんなルール知りませんが。俺が苦労したのだから、後輩のお前らも同じくらい苦労しろという日本の悪しき伝統くらい意味がわかりませんが」

「それに関しては俺も大賛成……って懐柔すんなよ! 順番変えてひっかけやがって! 大相撲の珍しい決まり手か」

「大相撲? はー、やだやだ。これだから引きこもりは。俺こんなこと知ってるんですよぉって、すぐマウントとりたがるんですから」

「ちょっと、本音が出てますよー」

「そんなことはどうでもいいのです」

「お前がいじりはじめたんだろ!」

「え? そんなはずは……」

 首を傾げてあからさまにとぼける美少女人形。

「ああ、ちっとも話が進まねぇ。とりあえず、自己紹介してくれ」

「かしこまりました」

 美少女人形はコホンとかわいらしく咳払いをする。

「私は、誠道さんの優雅で快適な引きこもりライフを最大限支援する美少女メイドです」

「おい。自分で美少女って言うな。美少女だけど」

「誠道さんがなんの迷いもなく引きこもることができるよう、これから最大限支援いたします」

 美少女メイドは深々と一礼する。

 教科書に載せたいくらいの見事なお辞儀だ。

「さらに詳しい説明は……すみません。なんか面倒になったので、後は説明書読んでください」

「おい、最大限の支援はどうした?」

「こちらです」

「お前自分でさっき言ったこともう一度思いだ」

「こ・ち・ら・です」

 にこりと満面の笑みを浮かべる美少女メイド。

 有無を言わさぬ圧力がすごい。

「いいから早くしてください。私はあなたに、私のことを隅から隅まで知り尽くしてほしいのです」

 うん。

 俺の話聞く気ゼロなのね。

 仕方なく、手渡された説明書を開く。

 結構分厚いなぁ、これ。

 重要そうなとこだけ読むか。

「ああっ、そんなにジロジロ見られると、恥ずかしいですぅ」

 なるほど、そういう機能もあるのか。

 じゃあこれを応用すれば、あるいは。

「ああっ、そこは、そこは見ちゃだめですぅ。私の秘部をっ、開かないでぇ」

 こんなこともできるのか。

 じゃああれとあれもできるってことだな。

「たしかに誠道さんのためなら、すごく恥ずかしいですが、そのプレイも受け入れますからぁ」

 結構有益な機能があるんだな。

 さすが、女神様が用意しただけはある。

「あっ、はぁ、んんっ、わ、私のすべてを知られちゃいましたぁ。私、んんっ、もう、もう……だめ」

「さっきからうるせぇんだよ! 説明書読んでるだけだろうが!」

「で、でも私もう、誠道さんに丸裸にされて」

「だから説明書を読んでるだけな! 勘違いするようなことばっか言ってんじゃねぇ」

 もう面倒くさいから、これ以上はツッコまない。

 とりあえず、俺の生活を支援するというこいつの言葉は、あながち間違いではないようだし。

「っておいこれ、一番大事なものが書かれてないじゃん」

「いえ、私に関することはすべて書かれていますが」

「お前の名前だよ」

「私に名前などございません」

 美少女メイドは平然と言い放つ。

「何度も申し上げておりますが、私はあくまで人形ですので」

「いや、人形って……でもさ」

 俺は、顔色ひとつ変えない美少女メイドの目を見る。

「そんなのすげぇ悲しいだろ。だってお前はその……人間と変わらないし、これから一緒に暮らすんだから、不便だろ」

「誠道さん……」

 美少女メイドは、その漆黒の瞳で、はじめて俺の姿を真の意味で捉えたように見えた。

 その純粋な視線に耐え切れず目を逸らすと、美少女メイドは嬉しそうにくすくすと笑いはじめる。

「かしこまりました。では、誠道さんが名づけてください」
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