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第1章 3 はじめての敵、それはゴブリン
強敵! ゴブリンロード!
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そんなこんなで、俺たちはまた街の外にやってきた。
聖剣ジャンヌダルクの強さを検証するためにゴブリンを探していると、目の前の森の中からすぐに現れた。
しかし、これまでの比じゃないほど大きい。
三メートルはあるだろうか。
手には冒険者から奪ったのだろう、バトルアックスが握られていた。
真っ赤に充血した目で睨まれ、背筋が凍りつく。
「誠道さん、聖さん、逃げましょう。ゴブリンロードです」
はじめて聞くミライの切羽詰まった声。
こんなところで出現するなんて、という声もつづけて聞こえた。
「逃げる、ゴブリンロード……って」
体の震えが止まらない。
ミライがこれだけ焦っているということは、それだけこのゴブリンロードが強敵だということだ。
「グォオオオ」
ゴブリンロードが不気味に唸った後、カタコトであるが言葉をしゃべる。
「パーティー、コロス。ナカマイルヤツ、コロス」
「こいつただの逆恨みしてるボッチじゃねぇか」
「ツッコみなんかしている場合ですか! コミュ障を極めたものだけが、ゴブリンからゴブリンロードに進化できるのです」
「それゴブリンにとって嬉しいのか嬉しくないのかわかんねぇな!」
「だからツッコんでる場合ですか! 早く逃げましょう!」
「ヒトリサイコオオオオオ」
ミライの声を遮るようにして、またゴブリンロードが咆哮した。
そのけたたましい音量に、耳が破裂したのかと思うくらいの痛みを感じる。
聴覚が狂ったのか、周囲の音がよく聞こえない。
……が。
「大きいぃ、いっぱいぃ、ぐちゃぐちゃできるぅ」
言葉の羅列が衝撃的過ぎて、隣から聞こえてくる聖ちゃんのとろんとした声だけは、はっきりと理解できた。
「えへへ、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃぁ」
「ちょっと聖ちゃん? こいつはやばいって」
「そうです。逃げた方がいいです。これまでのゴブリンとは比べ物になりません。いくらレベルが上がったからと言って」
「ぐちゃぐちゃだぁああ!」
俺たちの忠告など完全無視。
聖ちゃんは聖剣ジャンヌダルクを握りしめて、ゴブリンロードに向かっていく。
「オンナッ、コワイッ!」
「ぐちゃぐちゃぁ!」
ゴブリンロードが振り下ろしたバトルアックスと聖剣ジャンヌダルクがぶつかり、甲高い音とともに火花が散る。
ゴブリンロードのパワーが勝り、突進していったはずの聖ちゃんの方が後ろによろめいた。
「あぶない!」
俺が叫ぶと同時に、ゴブリンロードが聖ちゃんにバトルアックスを振り下ろす。
聖ちゃんはそれをなんとかかわすが、ゴブリンロードの追撃は終わらない。
やられるのは時間の問題だろう。
「くそぉ。いったいどうすれば」
背中を後ろから引っ張られているような感覚がする。
逃げたい。
逃げてしまいたい。
引き裂かれるような胸の痛みに襲われる。
ってかそもそも、聖ちゃんと手を組んだのはあくまでゴブリンを倒すためだ。
ゴブリンロードと戦うために共闘していたわけではないから、ここで聖ちゃんを置いて逃げたって責められるいわれはない。
勝手にゴブリンロードに立ち向かった聖ちゃんを助ける必要もない。
なんなら、今なら聖ちゃんを囮にして安全に逃げることができる。
「……俺は」
――あなたにはもう期待しない
――うまくやれって言っただろ。
他人と関わりつづけたってろくなことがないと、これまでの人生で嫌というほど経験してきたじゃないか。
いつか聖ちゃんだって、俺の弱さに呆れて離れていくに決まっている。
「俺は、俺は俺は俺はっ」
でも、どうして、俺は。
異世界でせっかくできた関わりを、なかったことするなんてありえないと思ってしまうのだろうか。
鹿目未来に似ているという側に置いておくべき理由があるミライとは違って、聖ちゃんには側に置いておく理由なんてなにひとつないはずなのに。
いつだって睾丸を狙われているという恐怖と隣り合わせなのに。
……いや、違う。
聖ちゃんと話していると、一緒に過ごしていると、ほんのちょっと、本当にほんのちょっとだけだけど楽しかったから。
ここで逃げたら、死という現実を目の当たりにして泣きわめいていた鹿目さんから逃げたときと同じように、それまでの楽しかった思い出たちが全部、苦しい思い出になってしまうから。
俺は覚悟を決めた。
「クソ野郎が! 聖ちゃんだけに任せてられねぇ」
なんだよ、本当は人との関わりがほしかったんじゃん。
人と関わりたくない、関わったっていいことなんてひとつもないって思いつづけてきたはずなのに、どうしてこうなった。
悪い気はしないけどさ。
「誠道さん! 無謀ですよ。だって相手は」
「でもこのままじゃ負けちゃうだろ」
「誠道さんが勝てる相手ではありません」
「はなから俺が勝つつもりはねぇよ。こいつに勝つのは聖ちゃんだ」
聖ちゃんが攻撃に転じられるように、一瞬でもいいからゴブリンロードに隙を作ることができればいい。
ゴブリンとだってそうやって戦ってきたじゃないか!
「だったらちょうどいいのがあるだろ! くらえっ! 【昼夜逆転しがち】!」
俺が叫んだ瞬間、ゴブリンロードの顔を黒い靄が覆う。
「よし、今だ! 聖ちゃん――えっ?」
しかし、ゴブリンロードは黒い靄など意に介さず、聖ちゃんに攻撃をつづけている。
「なんで効かないんだ。まさか、ゴブリンロードが強すぎて効力がない?」
「たしかに【魔防】の値が高ければ効かないでしょう。ですが、ゴブリンロードの【魔防】はそんなに高くないはずです」
「じゃあなんで動けるんだ?」
「ゴブリンロードはボッチがゆえに洞窟の中という暗闇で暮らすことが多く、聴覚が異常に発達しているのです。なので、暗い中でも音の反響を頼りに普通に動けます」
「なんだそりゃ! じゃああのボッチ野郎には俺の技が効かないってことかよ!」
そう叫びながら、俺が頭を抱えたときだった。
ゴブリンロードの耳がピクリと動く。
……なるほど、そういうことか。
こいつの弱点がわかったぞ。
聖剣ジャンヌダルクの強さを検証するためにゴブリンを探していると、目の前の森の中からすぐに現れた。
しかし、これまでの比じゃないほど大きい。
三メートルはあるだろうか。
手には冒険者から奪ったのだろう、バトルアックスが握られていた。
真っ赤に充血した目で睨まれ、背筋が凍りつく。
「誠道さん、聖さん、逃げましょう。ゴブリンロードです」
はじめて聞くミライの切羽詰まった声。
こんなところで出現するなんて、という声もつづけて聞こえた。
「逃げる、ゴブリンロード……って」
体の震えが止まらない。
ミライがこれだけ焦っているということは、それだけこのゴブリンロードが強敵だということだ。
「グォオオオ」
ゴブリンロードが不気味に唸った後、カタコトであるが言葉をしゃべる。
「パーティー、コロス。ナカマイルヤツ、コロス」
「こいつただの逆恨みしてるボッチじゃねぇか」
「ツッコみなんかしている場合ですか! コミュ障を極めたものだけが、ゴブリンからゴブリンロードに進化できるのです」
「それゴブリンにとって嬉しいのか嬉しくないのかわかんねぇな!」
「だからツッコんでる場合ですか! 早く逃げましょう!」
「ヒトリサイコオオオオオ」
ミライの声を遮るようにして、またゴブリンロードが咆哮した。
そのけたたましい音量に、耳が破裂したのかと思うくらいの痛みを感じる。
聴覚が狂ったのか、周囲の音がよく聞こえない。
……が。
「大きいぃ、いっぱいぃ、ぐちゃぐちゃできるぅ」
言葉の羅列が衝撃的過ぎて、隣から聞こえてくる聖ちゃんのとろんとした声だけは、はっきりと理解できた。
「えへへ、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃぁ」
「ちょっと聖ちゃん? こいつはやばいって」
「そうです。逃げた方がいいです。これまでのゴブリンとは比べ物になりません。いくらレベルが上がったからと言って」
「ぐちゃぐちゃだぁああ!」
俺たちの忠告など完全無視。
聖ちゃんは聖剣ジャンヌダルクを握りしめて、ゴブリンロードに向かっていく。
「オンナッ、コワイッ!」
「ぐちゃぐちゃぁ!」
ゴブリンロードが振り下ろしたバトルアックスと聖剣ジャンヌダルクがぶつかり、甲高い音とともに火花が散る。
ゴブリンロードのパワーが勝り、突進していったはずの聖ちゃんの方が後ろによろめいた。
「あぶない!」
俺が叫ぶと同時に、ゴブリンロードが聖ちゃんにバトルアックスを振り下ろす。
聖ちゃんはそれをなんとかかわすが、ゴブリンロードの追撃は終わらない。
やられるのは時間の問題だろう。
「くそぉ。いったいどうすれば」
背中を後ろから引っ張られているような感覚がする。
逃げたい。
逃げてしまいたい。
引き裂かれるような胸の痛みに襲われる。
ってかそもそも、聖ちゃんと手を組んだのはあくまでゴブリンを倒すためだ。
ゴブリンロードと戦うために共闘していたわけではないから、ここで聖ちゃんを置いて逃げたって責められるいわれはない。
勝手にゴブリンロードに立ち向かった聖ちゃんを助ける必要もない。
なんなら、今なら聖ちゃんを囮にして安全に逃げることができる。
「……俺は」
――あなたにはもう期待しない
――うまくやれって言っただろ。
他人と関わりつづけたってろくなことがないと、これまでの人生で嫌というほど経験してきたじゃないか。
いつか聖ちゃんだって、俺の弱さに呆れて離れていくに決まっている。
「俺は、俺は俺は俺はっ」
でも、どうして、俺は。
異世界でせっかくできた関わりを、なかったことするなんてありえないと思ってしまうのだろうか。
鹿目未来に似ているという側に置いておくべき理由があるミライとは違って、聖ちゃんには側に置いておく理由なんてなにひとつないはずなのに。
いつだって睾丸を狙われているという恐怖と隣り合わせなのに。
……いや、違う。
聖ちゃんと話していると、一緒に過ごしていると、ほんのちょっと、本当にほんのちょっとだけだけど楽しかったから。
ここで逃げたら、死という現実を目の当たりにして泣きわめいていた鹿目さんから逃げたときと同じように、それまでの楽しかった思い出たちが全部、苦しい思い出になってしまうから。
俺は覚悟を決めた。
「クソ野郎が! 聖ちゃんだけに任せてられねぇ」
なんだよ、本当は人との関わりがほしかったんじゃん。
人と関わりたくない、関わったっていいことなんてひとつもないって思いつづけてきたはずなのに、どうしてこうなった。
悪い気はしないけどさ。
「誠道さん! 無謀ですよ。だって相手は」
「でもこのままじゃ負けちゃうだろ」
「誠道さんが勝てる相手ではありません」
「はなから俺が勝つつもりはねぇよ。こいつに勝つのは聖ちゃんだ」
聖ちゃんが攻撃に転じられるように、一瞬でもいいからゴブリンロードに隙を作ることができればいい。
ゴブリンとだってそうやって戦ってきたじゃないか!
「だったらちょうどいいのがあるだろ! くらえっ! 【昼夜逆転しがち】!」
俺が叫んだ瞬間、ゴブリンロードの顔を黒い靄が覆う。
「よし、今だ! 聖ちゃん――えっ?」
しかし、ゴブリンロードは黒い靄など意に介さず、聖ちゃんに攻撃をつづけている。
「なんで効かないんだ。まさか、ゴブリンロードが強すぎて効力がない?」
「たしかに【魔防】の値が高ければ効かないでしょう。ですが、ゴブリンロードの【魔防】はそんなに高くないはずです」
「じゃあなんで動けるんだ?」
「ゴブリンロードはボッチがゆえに洞窟の中という暗闇で暮らすことが多く、聴覚が異常に発達しているのです。なので、暗い中でも音の反響を頼りに普通に動けます」
「なんだそりゃ! じゃああのボッチ野郎には俺の技が効かないってことかよ!」
そう叫びながら、俺が頭を抱えたときだった。
ゴブリンロードの耳がピクリと動く。
……なるほど、そういうことか。
こいつの弱点がわかったぞ。
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