うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第1章 4 魔本には男子の夢が詰まっている

壊れちゃって

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「金にがめついてめぇの姉ちゃんなんか知ったことか」

「どうしていきなりそんなこと言うの?」

 うるうるとした瞳で見つめられて、心が痛む。

 ここは無条件で首を縦に振って――そんなんじゃ俺の心は動かされないからな。

「僕のお姉ちゃんは不治の病にかかってるんだよ?」

「症候群ってつければなんでも病気のせいにできると思ったら大間違いだぞ」

「でもお姉ちゃんは『お金がぁ、お金がもっとほしいぃ』って毎日うなされてるんだ」

「だから知ったことか!」

「大人なのに忘れたふりはよくないよ。この音声記録魔道具にはほら! 『私が治してみせます』っていう声が録音されてるよ。言質はもう取れてるんだよ」

「え? それはさっきの私の声?」

「てめぇ盗聴までしてたのか」

「言いがかりはよくないよ。これはただの動かぬ証拠」

 なにこの子。

 頭のよさを悪い方向に伸ばしちゃってる。

 メンサ会員の詐欺師に会った気分だ。

「もしかしてお前、ここまでの流れすべて計算済みか?」

「計算はね、足し算ならできるよ」

「誠道さん。落ち着いてください。この子は悪くありませんから」

 聖ちゃんに服を引っ張られて、俺はようやく冷静さを取り戻した。

「……それもそうか」

 たしかに聖ちゃんの言う通りだ。

 よくよく考えてみれば、この子はなにも悪くない。

 この子はお姉ちゃんを苦しみから救おうとしただけ。

 そこにあるのは、お姉ちゃんを救いたいという純然たる思いやりだ。

「さっきは、急にひどいことを言って悪かった」

 ただ幼いがゆえに、その方法を間違えてしまっただけなのだ。

 だったら、俺たち大人がすべきことは、そんな子を頭ごなしに叱ることではなくて。

「君の中にあるお姉ちゃんに対する思いを、一緒に伝えにいこう。それがお姉ちゃんにとって一番のワクチンになるはずだ」

 盗みを働かせてしまうほど弟を追い込んでしまった。

 それを聞かされれば、この子のお姉ちゃんもなにかを感じるに違いない。

「うん。僕、お姉ちゃんに正直に話すよ」

「えらいぞ」

 俺は彼の頭を撫でてやる。

「ええっと、そういえば名前は」

「ジツハフです」

「ジツハフの思いを伝えたら、きっとお姉ちゃんも改心してくれるよ。だから、この聖お姉ちゃんに聖剣ジャンヌダルクを返してくれるかな?」

「うん。……あ、でもごめんなさい」

 ジツハフは目に涙をためて、体を小さくする。

「実はこれ、壊れちゃってて」

 恐る恐るといった様子で、ポケットから聖剣ジャンヌダルクを取り出すジツハフくん。

 たしかに刃の部分が綺麗さっぱりなくなっているけど、これって剣を小さくしたときに怪我しないための配慮じゃないの?

「僕はなにもしてないんだ。聖お姉ちゃんがゴブリンを倒して言葉にするのもおぞましい鬼畜の所業をしているときに、この剣を盗んでポケットに入れただけ。その後バイト先で出品しようと取り出したら壊れてたんだ」

 頭を下げるジツハフくん。

 彼の必死さから、彼が言っていることは本当なのだとわかる。

 それと、こんな幼い子にトラウマを植えつけた聖お姉ちゃんは深く反省してください。

「壊れたって、私の、ジャンヌダルクが……」

 聖ちゃんは想定外のできごとに唖然としている。

「本当にごめんなさい」

 ジツハフくんが、泣きながらさらに深く頭を下げたときだった。

「ちょっと、あなたたちなにをしてるの?」
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