52 / 360
第1章 6 レッサーデーモンとの戦いは欧米文化との戦い
すてきな求人票
しおりを挟む
「いや、『なにそれ初耳なんですけど? でもホワイトキキョウで働けるなんて最高じゃん』みたいな顔しないでください」
ミライが変なことを言い出したので、ちょっときつめの口調で言い返す。
「これが喜んでいる顔に見えるか?」
「どうしてですか? 食うだけの人が家にいればそれはただの穀潰し。あなたの食費がどれだけの負担になっているか」
「最大の負担はミライの作った借金だけどな」
「たとえバイトでも、働いていれば親戚の集まりの際につらい思いをしなくて済みますよ」
「たしかに引きこもりにとって親戚の集いは地獄だけど! でもこの世界に親戚はいないからその理論は成立しないぞ!」
「一度、求人票を見てください。見ないで物事を判断するのはよくありません。誠道さんでも働けそうな求人を探してきましたから、ご安心ください」
「それならまあ、見るだけだからな」
たしかにミライの言うとおりだ。
実際に見ていないものを否定するのはよくない。
それに、ホワイトキキョウ栽培ファームなんだろ?
だったら働いてみてもいいかもしれない。
「ありがとうございます。求人票はこちらです」
「おう。ありがとう。えぇっと、なになに?」
そこのあなたも、未経験から『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』になりませんか?
大量募集!
アットホームな職場です!
やりがいのある仕事です!
新人のうちから裁量ある仕事を任せます!
週休二日……
「地雷原が広がってんじゃねぇか!」
ここまで地雷だらけの求人、逆に尊敬するわ。
「ホワイトキキョウを作ってるところがブラック企業って、絶対だめだろ!」
これを知ってしまったばっかりに、今後ホワイトキキョウを食べるときには、そこで働いている人のことを考えてしまって、もうあなたをおいしいとは思えなさそうです。
血と汗と涙の味がしそうです。
「え? どうしてですか? 素敵な仕事にしか見えませんけど」
「いやいや、まず未経験を大量募集してる時点で地雷だから」
「でも、アットホームな職場って、やりがいのある仕事って」
「そんな曖昧なもんしか紹介することがねぇだけだよ」
「じゃあ、新人のうちから裁量のある仕事を任せますって言うのは」
「こんなもん、仕事を教えてくれる人間がやめちまっていないだけだ」
「だったらこの週休二日っていうのは」
「週休二日ってのはな、一か月のうち一週でも二回休みがあれば週休二日って書けるんだ。完全週休二日なら話は別だが」
「もう、ああいえばこういう。文句ばかりなのは引きこもりの悪いくせです」
「この求人票がおかしすぎるんだよ」
「いいですか誠道さん。この求人の最大の特徴は、未経験から『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』という格好いい職業になれることなんですよ」
「それが一番地雷だわ。いいかよく聞けよ。グッドライフコーディネーターはただの保険の営業、テレフォンカウンセラーはただのクレーム処理係なんだよ。無駄にカタカナの名前にして好印象を稼ごうとしてるのが一番たち悪いわ」
しかも、『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』ってなんだよ。
意味わかんねぇから。
「そう、なんですね」
ミライががっくりと肩を落とす。
ようやく、この求人票がいかにおかしいかがわかってくれたか。
「わかりました。じゃあこっちはどうですか? ブラックキキョウ栽培ファームで、あなたも未経験から『ベストファーマーアポインタリスト』に」
「そっちは名前通りのブラック企業じゃねぇか!」
アポインタリストってなんだよ。
謎の造語を作んな。
「もう。さっきから文句ばっかり困ります。だって私、誠道さんがバイトで稼いでくる前提で、いろんな物の購入予約をしていたんですから」
「そういうことだろうと思ったよ! 今すぐ全部キャンセルしてこい!」
そこから少し言い争いになったものの、ミライは渋々バイト面接と予約商品のキャンセルにいってくれた。
「ふぅ、なんとかなったな」
ミライの背中を見送って、ようやく一息つく。
本当に疲れた。
早く家に帰って寝よ……って。
「ちょっと待てよ」
胸がどうしようもなくざわめいている。
俺がわざわざ外出した当初の目的はなんだったっけ?
ミライが変な買い物をしないように見張ることじゃなかったか?
それなのに俺は今、ミライに全部キャンセルしてこいと言って、彼女を単独で行動させてないか?
――全部キャンセルしてお金が浮いたので、新たにこれを買ってきました!
この場合、ミライなら大きな壺を抱えながら戻ってくるに決まっている。
絶対にそうだ!
そうなる前に追いかけないと!
ああもう、なにやってんだよ俺は!
後悔先に立たず、急いでミライを追いかけようとした、そのときだった。
「おい」
唐突に、後ろから声が聞こえた。
「こんなとこでなにやってんだよ、石川」
大きな手で肩をたたかれ、体が一瞬にして固まる。
抑えよう、こらえよう、なんて思う間もなく、体を恐怖が蹂躙していく。
ミライが変なことを言い出したので、ちょっときつめの口調で言い返す。
「これが喜んでいる顔に見えるか?」
「どうしてですか? 食うだけの人が家にいればそれはただの穀潰し。あなたの食費がどれだけの負担になっているか」
「最大の負担はミライの作った借金だけどな」
「たとえバイトでも、働いていれば親戚の集まりの際につらい思いをしなくて済みますよ」
「たしかに引きこもりにとって親戚の集いは地獄だけど! でもこの世界に親戚はいないからその理論は成立しないぞ!」
「一度、求人票を見てください。見ないで物事を判断するのはよくありません。誠道さんでも働けそうな求人を探してきましたから、ご安心ください」
「それならまあ、見るだけだからな」
たしかにミライの言うとおりだ。
実際に見ていないものを否定するのはよくない。
それに、ホワイトキキョウ栽培ファームなんだろ?
だったら働いてみてもいいかもしれない。
「ありがとうございます。求人票はこちらです」
「おう。ありがとう。えぇっと、なになに?」
そこのあなたも、未経験から『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』になりませんか?
大量募集!
アットホームな職場です!
やりがいのある仕事です!
新人のうちから裁量ある仕事を任せます!
週休二日……
「地雷原が広がってんじゃねぇか!」
ここまで地雷だらけの求人、逆に尊敬するわ。
「ホワイトキキョウを作ってるところがブラック企業って、絶対だめだろ!」
これを知ってしまったばっかりに、今後ホワイトキキョウを食べるときには、そこで働いている人のことを考えてしまって、もうあなたをおいしいとは思えなさそうです。
血と汗と涙の味がしそうです。
「え? どうしてですか? 素敵な仕事にしか見えませんけど」
「いやいや、まず未経験を大量募集してる時点で地雷だから」
「でも、アットホームな職場って、やりがいのある仕事って」
「そんな曖昧なもんしか紹介することがねぇだけだよ」
「じゃあ、新人のうちから裁量のある仕事を任せますって言うのは」
「こんなもん、仕事を教えてくれる人間がやめちまっていないだけだ」
「だったらこの週休二日っていうのは」
「週休二日ってのはな、一か月のうち一週でも二回休みがあれば週休二日って書けるんだ。完全週休二日なら話は別だが」
「もう、ああいえばこういう。文句ばかりなのは引きこもりの悪いくせです」
「この求人票がおかしすぎるんだよ」
「いいですか誠道さん。この求人の最大の特徴は、未経験から『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』という格好いい職業になれることなんですよ」
「それが一番地雷だわ。いいかよく聞けよ。グッドライフコーディネーターはただの保険の営業、テレフォンカウンセラーはただのクレーム処理係なんだよ。無駄にカタカナの名前にして好印象を稼ごうとしてるのが一番たち悪いわ」
しかも、『ファーミングプロフェッショナルアンバサダー』ってなんだよ。
意味わかんねぇから。
「そう、なんですね」
ミライががっくりと肩を落とす。
ようやく、この求人票がいかにおかしいかがわかってくれたか。
「わかりました。じゃあこっちはどうですか? ブラックキキョウ栽培ファームで、あなたも未経験から『ベストファーマーアポインタリスト』に」
「そっちは名前通りのブラック企業じゃねぇか!」
アポインタリストってなんだよ。
謎の造語を作んな。
「もう。さっきから文句ばっかり困ります。だって私、誠道さんがバイトで稼いでくる前提で、いろんな物の購入予約をしていたんですから」
「そういうことだろうと思ったよ! 今すぐ全部キャンセルしてこい!」
そこから少し言い争いになったものの、ミライは渋々バイト面接と予約商品のキャンセルにいってくれた。
「ふぅ、なんとかなったな」
ミライの背中を見送って、ようやく一息つく。
本当に疲れた。
早く家に帰って寝よ……って。
「ちょっと待てよ」
胸がどうしようもなくざわめいている。
俺がわざわざ外出した当初の目的はなんだったっけ?
ミライが変な買い物をしないように見張ることじゃなかったか?
それなのに俺は今、ミライに全部キャンセルしてこいと言って、彼女を単独で行動させてないか?
――全部キャンセルしてお金が浮いたので、新たにこれを買ってきました!
この場合、ミライなら大きな壺を抱えながら戻ってくるに決まっている。
絶対にそうだ!
そうなる前に追いかけないと!
ああもう、なにやってんだよ俺は!
後悔先に立たず、急いでミライを追いかけようとした、そのときだった。
「おい」
唐突に、後ろから声が聞こえた。
「こんなとこでなにやってんだよ、石川」
大きな手で肩をたたかれ、体が一瞬にして固まる。
抑えよう、こらえよう、なんて思う間もなく、体を恐怖が蹂躙していく。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる