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第1章 7 異世界でも俺は引きこもりたい
裸の大様
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廃教会につくとすぐに壊れかけの扉をタックルでぶち破った。
勢い余って前方に転ぶも、すぐに立ち上がる。
痛……くなんかない。
中央に敷かれている赤い絨毯の両横には、長椅子が左右対称に置かれていた。
奥には翼の生えた女の人の像が置かれてあって、その前に大度出と他三人が目を見開いた状態で立っている。
ミライの姿はないが、ここにいるのは確実だ。
「よぉ、まさかくるとは思わなかったぜ」
驚いたようにこちらを見ていた大度出だったが、すぐに余裕の笑みを浮かべる。
ポケットに手を突っ込んで、格好つけることも忘れていない。
「うるせぇ! ミライはどこだ!」
「おいおい、いつから俺様に命令するようになったんだ?」
「俺の質問に答えろよ!」
「だからよぉ、石川」
大度出の声が低く威圧的なものに変わる。
ぴきりと空気が震える音がした。
「俺様に口答えすんじゃねぇぞ!」
大度出に凄まれて、内臓が縮み上がった。
やっぱり怖い。
大度出たちから受けた仕打ちを体が思い出している、
でも。
「……逃げないって、決めたんだ」
俺は後ずさりしそうになる足に力を込めて、その場に踏みとどまる。
ミライを失うことの方がよっぽど怖いから!
ここで立ち向かえない自分になる方がよっぽど怖いから!
「なんだよ、その目はよぉ!」
大度出が舌打ちをした。
後ろにいる鶏真、勅使、五升を振り返って。
「お前ら手を出すんじゃねぇぞ。こいつは俺が徹底的に痛みつけてやる」
「いいのか? 無策でのこのこやってくるほど、俺はバカじゃねぇんだぞ!」
叫ぶように言うと、大度出の足が止まった。
体勢を少しだけ低くして身構えることで、俺の出方をうかがっている。
「はっ? お前がなにをしようが俺様には勝てねぇんだよ!」
「やってみなきゃわかんねぇだろ!」
俺は大度出に向かって手を伸ばす。
俺と大度出。
その立場を考えたときに思いついた、最強の秘策。
俺には【リア充爆発しろ】という、レッサーデーモン二匹を一撃で粉砕した超大技がある。
リア充とは、リアルが充実しているものの総称。
カップルだけに当てはまるものではない。
大度出は、なんでも言うことを聞く部下を従えて自分の好き勝手振る舞うことのできる、まごうことなきリア充なのだ。
だから俺の必殺技【リア充爆発しろ】は、大度出に対して、かなりの威力が見込めるはずなのだ。
「くらえぇ!」
俺は大度出に向けて両手を伸ばし、足に力を入れて踏ん張る。
「【リア充爆発しろ】ぉぉおおお!」
俺は目を見開いて、全力で叫んだ。
……。
…………。
………………。
しかし、なにも起こらなかった。
「……は?」
ゴブリンやレッサーデーモン相手には出た衝撃派が、なぜか出ない。
あれぇぇええ? 嘘だろ?
俺これしかねぇよ。
これが失敗したら、俺にもう戦う術は残されていないよどういうこと?
ねぇ、どういうこと?
「もしかして大度出は、俺よりリア充じゃないってこと?」
だってそうだ。
俺と比較したときのリア充度合いで衝撃波の威力は決まるから、そういうことになるはずである。
俺は、呆然と大度出を見た。
勅使、鶏真、五升という三人の『部下』を恐怖で支配している大度出は、俺の秘策をまだ警戒しているのか、腰を少しだけ落としたまま動こうとしない。
だが、大度出皇帝には【リア充爆発しろ】が発動しないから、俺に打つ手はもうない。
そんな絶望的な状況なのに……つまり、でも、なんかそれって。
「大度出、お前……虚しいな」
裸の王様ってことじゃないか。
それまで恐怖の対象でしかなかった大度出が、今はもうかわいそうな人にしか見えなかった。
勢い余って前方に転ぶも、すぐに立ち上がる。
痛……くなんかない。
中央に敷かれている赤い絨毯の両横には、長椅子が左右対称に置かれていた。
奥には翼の生えた女の人の像が置かれてあって、その前に大度出と他三人が目を見開いた状態で立っている。
ミライの姿はないが、ここにいるのは確実だ。
「よぉ、まさかくるとは思わなかったぜ」
驚いたようにこちらを見ていた大度出だったが、すぐに余裕の笑みを浮かべる。
ポケットに手を突っ込んで、格好つけることも忘れていない。
「うるせぇ! ミライはどこだ!」
「おいおい、いつから俺様に命令するようになったんだ?」
「俺の質問に答えろよ!」
「だからよぉ、石川」
大度出の声が低く威圧的なものに変わる。
ぴきりと空気が震える音がした。
「俺様に口答えすんじゃねぇぞ!」
大度出に凄まれて、内臓が縮み上がった。
やっぱり怖い。
大度出たちから受けた仕打ちを体が思い出している、
でも。
「……逃げないって、決めたんだ」
俺は後ずさりしそうになる足に力を込めて、その場に踏みとどまる。
ミライを失うことの方がよっぽど怖いから!
ここで立ち向かえない自分になる方がよっぽど怖いから!
「なんだよ、その目はよぉ!」
大度出が舌打ちをした。
後ろにいる鶏真、勅使、五升を振り返って。
「お前ら手を出すんじゃねぇぞ。こいつは俺が徹底的に痛みつけてやる」
「いいのか? 無策でのこのこやってくるほど、俺はバカじゃねぇんだぞ!」
叫ぶように言うと、大度出の足が止まった。
体勢を少しだけ低くして身構えることで、俺の出方をうかがっている。
「はっ? お前がなにをしようが俺様には勝てねぇんだよ!」
「やってみなきゃわかんねぇだろ!」
俺は大度出に向かって手を伸ばす。
俺と大度出。
その立場を考えたときに思いついた、最強の秘策。
俺には【リア充爆発しろ】という、レッサーデーモン二匹を一撃で粉砕した超大技がある。
リア充とは、リアルが充実しているものの総称。
カップルだけに当てはまるものではない。
大度出は、なんでも言うことを聞く部下を従えて自分の好き勝手振る舞うことのできる、まごうことなきリア充なのだ。
だから俺の必殺技【リア充爆発しろ】は、大度出に対して、かなりの威力が見込めるはずなのだ。
「くらえぇ!」
俺は大度出に向けて両手を伸ばし、足に力を入れて踏ん張る。
「【リア充爆発しろ】ぉぉおおお!」
俺は目を見開いて、全力で叫んだ。
……。
…………。
………………。
しかし、なにも起こらなかった。
「……は?」
ゴブリンやレッサーデーモン相手には出た衝撃派が、なぜか出ない。
あれぇぇええ? 嘘だろ?
俺これしかねぇよ。
これが失敗したら、俺にもう戦う術は残されていないよどういうこと?
ねぇ、どういうこと?
「もしかして大度出は、俺よりリア充じゃないってこと?」
だってそうだ。
俺と比較したときのリア充度合いで衝撃波の威力は決まるから、そういうことになるはずである。
俺は、呆然と大度出を見た。
勅使、鶏真、五升という三人の『部下』を恐怖で支配している大度出は、俺の秘策をまだ警戒しているのか、腰を少しだけ落としたまま動こうとしない。
だが、大度出皇帝には【リア充爆発しろ】が発動しないから、俺に打つ手はもうない。
そんな絶望的な状況なのに……つまり、でも、なんかそれって。
「大度出、お前……虚しいな」
裸の王様ってことじゃないか。
それまで恐怖の対象でしかなかった大度出が、今はもうかわいそうな人にしか見えなかった。
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