うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

文字の大きさ
77 / 360
第2章 1 なにか忘れてるような 

ぐちゃらーな二人

しおりを挟む
「あれ、そういえば聖ちゃん。どうして聖ちゃんはうちにきたんだっけ?」

 俺は呪われた鞭のせいでそれまくった話を、当初の話題に戻す。

「はっ。そうでした」

 聖ちゃんはまた恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「私、誠道さんに、つき合ってほしいことがあるんです」

 あ、そういえばそうだった。

 俺、聖ちゃんからデートのお誘いを受けてたんだ。

 ついに異世界で俺のモテ期到来だぁ!

「弱らせたレッサーデーモンを近くまで連れてきてるんです。それを一緒にぐちゃぐちゃにしようと思って」

「んなもんにつき合うわけねぇだろうが!」

 引きこもりにモテ期なんてあるわけないですよね、すみません。

「え、どうしてですか?」

 聖ちゃんの顔が悲しみに歪む。

 いや、なんでグチャグチャごっこにつき合うことが当然みたいな顔してんの?

 サイコパスなの?

「私と約束しましたよねぇ? それを破るなんてひどいです」

「や、約束……って?」

「本当にひどいです。レッサーデーモンをぐちゃぐちゃにする方法をレクチャーしますって、だからレッサーデーモンを連れ帰ってきますって、言いましたよね?」

「あっ! ずっとなにか忘れている気がしていたのってこれか! やったぁ伏線回収だぁ!」

「ど、う、な、ん、で、す、か?」

「ごめんなさい。すっかり忘れてました」

 大度出たちとの一件があったため、本当に頭からすっぽりと抜け落ちていた。

「ってかなんで俺が謝る展開になってんの? 俺はその道に足を突っ込むつもりはないぞ。そもそもよく考えたら約束もしていないぞ」

「だったら私の努力はなんだったんですか。レッサーデーモンも無駄ぐちゃ死にですよ! 私に惨殺されたレッサーデーモンに今すぐ謝ってください! 一匹捉えるまでに何匹のレッサーデーモンが無駄ぐちゃ死にしたと思ってるんですか」

「いや俺それ関係なくない? ってか聖ちゃんが自分の欲望を抑えられずに、勢い余ってレッサーデーモンを殺し尽くしただけだよね?」

 俺は正論を述べたつもりなのだが、聖ちゃんはきょとんと首を傾げた。

「実は私って、【愉悦の睾丸女帝】って呼ばれてるんですよね。誰の、とは言いませんけどこの場には睾丸が二つありますよね」

「レッサーデーモンさんすみませんでした!」

 なぜか謝ることになってる俺。

 ってか聖ちゃん、一応レッサーデーモンを思いやる気持ち持ってたんですねぇ。

 そのレッサーデーモンをぐちゃぐちゃにしたのは聖ちゃんですけどねぇ。

「わかりました。ここは、私の広い心に免じて許しましょう」

 聖ちゃん、すごい善人ぶってるけど、許すかどうかの判断をするのはグチャグチャにされたレッサーデーモンだと思うんですけどねぇ。

「ではこれから、私が弱らせてきたレッサーデーモンを使ってぐちゃり方をレクチャーします。いいですね。ほんと誠道さんは忘れっぽいんですから」

「ちょっと、二人で勝手に話を進めないでください」

 聖ちゃんの暴走をさすがに見かねたのか、ミライが止めに入ってくれる。

 遅すぎるくらいだけど、ナイスミライ!

 さすが! 俺を支援してくれるメイドだ!

「そうやって、どさくさに紛れて誠道さんと二人で出かけるなんて認められません。二人きりで手取り足取りぐちゃり方のレクチャーなんて、デート……いやもはや体のおつき合いです!」

 うん!

 どう考えたらそのトンデモ理論がやってくるのかわかんないけど、もうなんでもいいから言ってやれ!

 まあ二人きりじゃなくてレッサーデーモンさんもいるけどね。

 瀕死状態だけど。

「そこまでして聖さんが誠道さんを連れていきたいというのなら、私にも考えがあります!」

 そうだ!

 もうここまできたら多少の実力行使でもいいぞ!

「私も一緒に連れていってください!」

「どうしてこうなった!」

 頭を抱える。

 本当に、どうしてそうなるの? 

「ミライお前、女王様癖の次はぐちゃり癖かよ! もしかして異世界でブームになりかけてんの?」

 聖ちゃんというJCがやってるから?

 もし異世界に動画投稿サイトがあったら、魔物グチャグチャ動画があふれてたりすんのかなぁ。

「だっておかしいじゃないですか。グチャるときに二人きりである必要はありません。当然私も参加します」

 珍しく子供のように駄々をこねるミライ。

 え、そんなにレッサーデーモンぐちゃぐちゃにしたいの?

 まあ、その……そんなに好きなら、やりたいなら、止めるのもあれだし、ね?

「そんなにぐちゃぐちゃにしたいなら、聖ちゃんとミライ、二人でいってきなよ」

 ミライがそんなにやりたいのなら、ミライだけが教えてもらえばいい。

 そうすれば、俺はやりたくないことをやらずに引きこもることができる。

 聖ちゃんもグチャラー(呼び方これでいいの?)仲間ができる。

 まさに三人とも、ウィンウィンウィンじゃん!

 しかし。

「「……はぁ」」

 なぜかミライと聖ちゃんから深いため息がこぼれました。

「なんで二人とも落胆してんの? 聖ちゃんはグチャラー仲間がほしい、ミライはぐちゃりたい。俺は引きこもりたい。全員の希望が叶ってる素晴らしい提案じゃん」

「「はぁ……本当にバカなんでしょうね」」

 はい、今度は二人からため息プラス罵りまでいただきました。

「誠道さん」

 ミライが俺の肩に手を置く。

「お気持ちは嬉しいのですが、それでは意味がないのです。それであれば、私はぐちゃりにいきたくありません」

「え? じゃあなんでさっきぐちゃりたいって言ったの?」

「それは……」

 ミライがポッと顔を赤く染める。

「この乙女の機微がわからないのですか?」

「だから、機微とかじゃなくてどういうことか説明しろよ」

「もう、誠道さん……」

 今度は聖ちゃんにわき腹をぽふっと殴られた。

「さすがに気づいてくださいよ。私でもわかりましたよ」

「え? 聖ちゃんが? ミライの意見が二転三転してる理由がわかったの?」

 俺にはさっぱりなんですけど、どういうこと?

 疑問符しか浮かんでいない俺を聖ちゃんが手で押しのける。

 ミライの前に立った聖ちゃんは、

「あのですね、ミライさん。安心してください」

 優しい声音でそうささやいた。

「私は、こんな引きこもりなんか、眼中にありませんから」

 声と内容のギャップ激しすぎ!

 いきなりなんてこと言い出すの、この子。

 人間の心のぐちゃり方を試してるの?

「そうですか」

 そしてミライは主がひどい言葉で貶されたにもかかわらず、安堵したような笑みを浮かべている。

「そうですよね。こんな引きこもりなんか選ぶ人いませんよね」

 ぐはっ!

 ミライまで俺の心グチャラーだった。

 しかも言い終えた後、上品に笑いやがって。

 もしかして事前に聖ちゃんから心ぐちゃり方のレクチャー受けてたんじゃないの?

「ですです。普通に考えたらこんな引きこもりにモテ期なんてやってきませんよ」

 聖ちゃんも満面の笑みで同調しないでよー。

 心にギロチン落ちましたー。

 今ならマリー○ントワネットとなかよくなれそうですー。

「ありがとうございます聖さん。誠道さんは引きこもりなのでモテるわけがない。視点が狭くなっていました。考えればすぐにわかることでした」

「そうですよ。引きこもりなんて選ばれませんって」

 なんか二人でがっちり握手したんですけどー。

 もうきっと俺の心はぼこぼこで原型とどめてないですー。

「あのぉ、お二人さん。もうそろそろ俺を傷つけるのやめてくれませんかねぇ。心のライフがゼロですぅ……」

 俺は、床にへばりつくように倒れながら二人に懇願する。

 すると、ミライと聖ちゃんは俺を見下ろして、少ししてからまた顔を見合わせて。

「「やっぱりどうしようもない鈍感男ですね」」

 くすくすと二人から笑われましたとさ。

 うん!

 もう無理!

 今日で俺は溶けてなくなります!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...