うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第2章 3 夏祭りは浴衣で君と

その戦いは

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 ミライと言い争いをしていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

 振り返るとそこには案の定、ジツハフくんの姿があった。

「あれ? ジツハフくんも祭りの下見? テンション上がっちゃったの?」

 他の子供と同じだろうと思いそう聞くと、ジツハフくんは首を横にふる。

「ううん。違うよ。僕はここでお姉ちゃんの手伝いをしてるんだ」

 ジツハフくんが俺たちの隣の屋台に目を向ける。

 すると、そこにはミライと同じく浴衣姿のイツモフさんがいた。

 濃い藍色の生地に百合の花? が模様としてあしらわれている。

 帯は黄色。

 大人の色気みたいなものを感じた。

「あれ、誠道くんにミライさんまで。もしかして隣なんですか?」

 イツモフさんが俺たちに気づいて、屋台の前に出てくる。

「はい。奇遇ですね。お互い頑張りましょう」

 ミライも屋台の中から出てきた。

「ところで、イツモフさんたちはなにを売っているのですか?」

「私たちはこれです。心理的側面を考慮して選んだので、絶対バカ売れ間違いなしです!」

 イツモフさんが自信満々な笑みを浮かべつつ、屋台の前に置かれてある看板を指さす。

 そこにはこう書かれていた。



『赤字覚悟! 伝説の食材ユニコーソの角の丸焼き絶賛販売中!』



「お前らも同じじゃねぇか!」

 そりゃそうだよね。

 だって金の亡者、イツモフ・ザケテイルさんだもんね。

 この人が普通に商売してたら世界に隕石が降り注ぐよね。

「同じって、まさか誠道くんたちもユニコーソの角をユニコーンの角と偽って販売を?」

 イツモフさんが慌てたように俺たちが出している看板を確認しにいく。

 その後ろに立ったミライが、真顔でポンとイツモフさんの肩に手を置き、詰問するかのような冷徹な声音で。

「イツモフさん。食材偽装は商売人として絶対にやってはいけないことですよ。今すぐやめてください」

「こいつ自分のこと棚にあげて正論ぶちかましてるぅ!」

「隣同士に同じ店、しかも同じぽったくり値段なんて、客が無駄に二分するじゃないですか!」

「本音はそっちかよ! 自分の意見がギネス級のブーメランってことに早く気がついて!」

「誠道さんはさっきからなにを叫んでいるんですか?」

 俺が正論をぶちかましつづけているというのに、ミライは一向に理解してくれない。

 それどころか首をきょとんと傾げる始末。

「俺が言いたいのはなぁ、そもそもミライも食材ぎそ」

「たしかにそうですね。イツモフさんたちのぼったくり価格の方がちょっとだけ安いですね。これじゃあ私たちの店は商売あがったりです」

「じゃあ安くすればいいだろ」

「無駄な価格競争なんかしたくありません!」

「それが正しい社会の在り方だよ!」

 価格競争が激しすぎるのもよくないけど、お前らはそもそもぼったくり価格なんだからちょっとくらい安くしたって問題ないだろ。

「ミライさんの主張は最もです。価格競争程無駄なものはありませんからねぇ」

 イツモフさんは目を閉じて首をひねりながらしばらく考え込む。

 いや、考えなくても価格競争しようよ。

「でもそうなると……わかりました。ではこうしましょう。私たちで恨みっこなしの勝負をするのです」

「勝負?」

 ミライが聞き返す。

 だから、勝負する前にまず価格競争を……。

「はい、真剣勝負です。その勝負で勝った方が、低価格のぼったくり価格でユニコーソの角を販売するのです」

「低価格のぼったくり価格って、それただの高価格だろ!」

「誠道くんは黙っていてください!」

 イツモフさんにぴしゃりと指摘される。

 なんで俺が怒られなきゃいけないんだよ!

「そうですよ、誠道さん。これは女の戦いです」

 ミライにも言われてしまった。

「一応確認ですが、その勝負に負けた方はどうなるのでしょう」

「もちろん、ユニコーソの角を高価格のぼったくり価格で販売してもらいます」

「だからそれはただの超高価格だろ!」

「「いいかげん黙ってください!」」

 ミライとイツモフさんに同時に言われる。

 あれ? やっぱり俺が責められてんのおかしいよね?

 俺の言ってることの方が正しいよね。

 腕を組んだミライがにやりと不敵に笑う。

「なるほど。つまり敗者は勝者の引き立て役になるということですね。隣に高価格のぼったくり価格があることで、低価格のぼったくり価格があたかも激安に感じると、そういうことですね」

 え? 高価格が低価格でぼったくり価格で激安?

 どういうことかもう一度説明して?

「そういうことです。どうですか? やりますか? それとも二人で仲よく値下げし合いの価格競争を行いますか?」

「その勝負、引き受けましょう」

 いや、二人で仲よく価格競争しろよ。

「価格競争なんてしてしまったら、私たちだけが損をしますからね」

 損をしているのはお客様ではないですか?

 ぼったくられるのですから。

「そうと決まれば、さっそく勝負の内容を決めま」

「ちょっと待ちな、お嬢ちゃんたち!」

 ミライとイツモフさんが勝負内容を決めようとしていたまさにそのとき、新たに声をかけてくる者がいた。

 そいつはいかにもヤクザって感じの金髪強面男だ。剃り込みも入っていて超怖い。

「隣でギャーギャー騒いでると思ったらよぉ。お前らもユニコーソをユニコーンと偽って売ってるくちか」

 ああもう!

 なんでこうも同類ばかり集まってくるのでしょう?

 こいつも二人と同じこと考えてたー。

「だったらどうだって言うんですか?」

 ミライが即座に言い返す。

「威勢だけはいいな」

 金髪剃り込みがミライにガンを飛ばす。

「これじゃあ俺の店の売り上げが少なくなるっつってんだよ! 同じものを売ってる店が三つも並んでたら意味ねぇだろ!」

「つまり、あなたも勝負に参加したいと、そういうことですか」

「おうよ。三人いた方が楽しいだろ? 盛り上がるだろ?」

 楽しくもないし盛り上がる必要もありませんけど?

 金髪剃り込みの提案を聞いたミライとイツモフさんは、顔を見合わせてゆっくりとうなずきあう。

 再度、金髪剃り込みに顔を向け直し、うっすらと口元に笑みを浮かべて。

「「その勝負、受けて立ちましょう」」

 ああ。なんの勝負がはじまるんだよぉ。

 世界一どうでもいい勝負だわ。

 ハンドボールの試合の方が100倍見たいし興味あるわ!
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