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第2章 3 夏祭りは浴衣で君と
このゲームには必勝法がある
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「ってかその絶対に焼きそばを作りたくない主張と、この勝負の必勝法がどうかかわってくるんだよ?」
俺はまだ、ミライから「焼きそばを絶対に作らないっ!」と駄々をこねられただけだ。
勝てる要素は微塵も感じられない。
「ここまで説明して、まだ全容がつかめませんか」
やれやれとミライが呆れたように首をふる。
「いいですか。私は他店から焼きそばをもらおうとしています。そして、この勝負で戦っているイツモフさんとクリストフさんは今せっせと焼きそばを作っています。つまり私の焼きそばはこの二人らもらえば、簡単に用意できるのです!」
「お前の方がバカだろ! ミライが言ってるのは必勝法じゃない! 絶対に負けない方法だ!」
「必勝法と絶対に負けない方法は同じでは?」
「違う! 必勝法は必ず勝つ方法のことだ! ミライの言っている方法じゃ、絶対に負けないけど絶対に勝つこともできないだろうが」
「と、言いますと?」
「誰かと同じ商品が出てくるんだから、引き分けにしかならないんだよ!」
はい論破。
ミライがここまでバカだったなんて思わなかった。
「誠道さん。甘く見てもらっては困ります。私がその考えに至らなかったとでも?」
「……なに?」
ミライがまとっている空気が変わった。
アニメでよくある、普段ふざけまくっている人が戦いになって本気出すとめっちゃ強い的なやつ。
おお、天才詐欺師がここにいるぞぉ。
すごい後光が差してるぅ。
「私は、イツモフさんとクリストフさんが作った焼きそばをそのまま出すのではありません。とある要素をプラスさせるのです」
「なにを加えるんだ?」
ミライが浴衣の袖から、なにかを取り出す。
「ずばり、この温泉たまごです!」
彼女の手の中に収められていたのは、真っ白で大きな卵だった。
「これは、かの有名な鳥型モンスター、メイフル・ヤチーンコの卵です。略してフルチンたま」
「一番ヤバいとこだけ使って略すな!」
「どうしてですか? めちゃくちゃキャッチーじゃないですか?」
「ただの下ネタじゃねぇか! しかも小学生が考えそうな低俗なやつ!」
「し、も、ね、た?」
なにそれおいしいの? 的な感じで首を傾げるミライ。
「いやいや、フルチンたまなんてどう考えても下ネタだろ! だったらフルネーム、メイフル・ヤチーンコで呼んだ方が――これもよく考えたらただの下ネタだわ!」
そんな名前のモンスターさすがにかわいそうだろ!
メイフル・ヤチーンコって。
誰が名づけたんだよ!
「どうしてですか? パチンコやガチンコ、今ならワクチンコールセンターなんかはオッケーなのに、メイフル・ヤチーンコがダメな理由を教えてください!」
「何度も連呼するな!」
……ん?
メイフルヤチーンコ?
メイフルヤを漢字にして、チーンコを並べ替えたら……あっ、これ以上は多方面に喧嘩売りそうだから考えるのやめよ。
おそらくだけど日本、もっと言えば東海地方出身の転生者がふざけて名前をつけてますねぇ。
「もう、ああ言えばこう言う。とにかく、このメイフルヤ・チーンコの卵を温泉卵にする。そして、お二方が作った焼きそばの上に温泉卵を乗せて味見し、おいしい方を提出する。これで私たちの勝利は確定です。温泉卵を乗せとけばオシャレに見えてかつおいしくなると、料理人の99パーセントが言ってましたからね!」
「最後だけ洗剤のCMみたいに保険かけんな!」
100って言えないジレンマはわかるけどさ。
「でも……たしかに、そうすれば絶対に勝てるな」
ミライの言うことはもっともだ。
温泉卵を乗せておけば、たいていの人は「なにこれちょーおしゃれー」とか「とろっとしててめっちゃおいしい」とか言うに決まっている。
特に、猫かわいいって言ってる私って可愛いでしょ系女子なんて、温泉卵を見ただけで発狂して写真をバシャバシャとりはじめるからな。
「なんだかんだ言っても、さすがだな、ミライ」
「私は優秀な美少女メイドですと、何度言ったらわかるんですか?」
「ねぇ、ミライお姉ちゃん。誠道お兄ちゃん」
勝利を確信した俺たちのもとに、なぜかやってきたのはジツハフくんだ。
「ん? どうしたの?」
俺はしゃがんで、ジツハフくんと同じ目線になる。
「えっとね、お姉ちゃんから伝言があってね」
ジツハフくんは、そこで一度息継ぎをしてから、
「どうしてあなたたちは焼きそばをもらえると思っているのですか? だって」
「「…………………あ」」
ミライと顔を見合わせる。
俺の頭は真っ白になった。
そうだ。
どうして敵に焼きそばを渡すだろうか、いや渡さない。
「おいどうすんだよミライ!」
「こうなったら仕方ありません。ケチなイツモフさんからもらうのは諦めてクリストフさんからもらいましょう!」
「俺だってやるわけねぇだろ!」
隣から、クリストフさんの声が飛んでくる。
ですよねぇ。
よく考えなくてもそうですよねぇ。
俺たちの名案はいったいどこから間違えていたんだ!
「これ……もう万事休すじゃないか!」
「大丈夫です!」
どうやらミライにはまだ考えがあるようだ。
「こうなったら当初の予定通り、他店の焼きそばをもらってきましょう」
「そうだな……ってまだ準備中だからどこも作ってねぇよ!」
俺たちが今、焼きそばを作っているのは値段決めの勝負のため。他の店はまだまだ準備の真っ最中だ。
「じゃあ材料をもらって作れば」
「材料から焼きそばを作る時間なんてもう残ってねぇよ!」
「そんな……」
ミライが膝をついて、がっくりとうなだれる。
「私の、完璧な作戦がぁ」
俺たちは、勝負する前からすでに負けていたのだった。
ちなみに焼きそばの味対決は、イツモフさんが一位、クリストフさんが二位となった。
俺はまだ、ミライから「焼きそばを絶対に作らないっ!」と駄々をこねられただけだ。
勝てる要素は微塵も感じられない。
「ここまで説明して、まだ全容がつかめませんか」
やれやれとミライが呆れたように首をふる。
「いいですか。私は他店から焼きそばをもらおうとしています。そして、この勝負で戦っているイツモフさんとクリストフさんは今せっせと焼きそばを作っています。つまり私の焼きそばはこの二人らもらえば、簡単に用意できるのです!」
「お前の方がバカだろ! ミライが言ってるのは必勝法じゃない! 絶対に負けない方法だ!」
「必勝法と絶対に負けない方法は同じでは?」
「違う! 必勝法は必ず勝つ方法のことだ! ミライの言っている方法じゃ、絶対に負けないけど絶対に勝つこともできないだろうが」
「と、言いますと?」
「誰かと同じ商品が出てくるんだから、引き分けにしかならないんだよ!」
はい論破。
ミライがここまでバカだったなんて思わなかった。
「誠道さん。甘く見てもらっては困ります。私がその考えに至らなかったとでも?」
「……なに?」
ミライがまとっている空気が変わった。
アニメでよくある、普段ふざけまくっている人が戦いになって本気出すとめっちゃ強い的なやつ。
おお、天才詐欺師がここにいるぞぉ。
すごい後光が差してるぅ。
「私は、イツモフさんとクリストフさんが作った焼きそばをそのまま出すのではありません。とある要素をプラスさせるのです」
「なにを加えるんだ?」
ミライが浴衣の袖から、なにかを取り出す。
「ずばり、この温泉たまごです!」
彼女の手の中に収められていたのは、真っ白で大きな卵だった。
「これは、かの有名な鳥型モンスター、メイフル・ヤチーンコの卵です。略してフルチンたま」
「一番ヤバいとこだけ使って略すな!」
「どうしてですか? めちゃくちゃキャッチーじゃないですか?」
「ただの下ネタじゃねぇか! しかも小学生が考えそうな低俗なやつ!」
「し、も、ね、た?」
なにそれおいしいの? 的な感じで首を傾げるミライ。
「いやいや、フルチンたまなんてどう考えても下ネタだろ! だったらフルネーム、メイフル・ヤチーンコで呼んだ方が――これもよく考えたらただの下ネタだわ!」
そんな名前のモンスターさすがにかわいそうだろ!
メイフル・ヤチーンコって。
誰が名づけたんだよ!
「どうしてですか? パチンコやガチンコ、今ならワクチンコールセンターなんかはオッケーなのに、メイフル・ヤチーンコがダメな理由を教えてください!」
「何度も連呼するな!」
……ん?
メイフルヤチーンコ?
メイフルヤを漢字にして、チーンコを並べ替えたら……あっ、これ以上は多方面に喧嘩売りそうだから考えるのやめよ。
おそらくだけど日本、もっと言えば東海地方出身の転生者がふざけて名前をつけてますねぇ。
「もう、ああ言えばこう言う。とにかく、このメイフルヤ・チーンコの卵を温泉卵にする。そして、お二方が作った焼きそばの上に温泉卵を乗せて味見し、おいしい方を提出する。これで私たちの勝利は確定です。温泉卵を乗せとけばオシャレに見えてかつおいしくなると、料理人の99パーセントが言ってましたからね!」
「最後だけ洗剤のCMみたいに保険かけんな!」
100って言えないジレンマはわかるけどさ。
「でも……たしかに、そうすれば絶対に勝てるな」
ミライの言うことはもっともだ。
温泉卵を乗せておけば、たいていの人は「なにこれちょーおしゃれー」とか「とろっとしててめっちゃおいしい」とか言うに決まっている。
特に、猫かわいいって言ってる私って可愛いでしょ系女子なんて、温泉卵を見ただけで発狂して写真をバシャバシャとりはじめるからな。
「なんだかんだ言っても、さすがだな、ミライ」
「私は優秀な美少女メイドですと、何度言ったらわかるんですか?」
「ねぇ、ミライお姉ちゃん。誠道お兄ちゃん」
勝利を確信した俺たちのもとに、なぜかやってきたのはジツハフくんだ。
「ん? どうしたの?」
俺はしゃがんで、ジツハフくんと同じ目線になる。
「えっとね、お姉ちゃんから伝言があってね」
ジツハフくんは、そこで一度息継ぎをしてから、
「どうしてあなたたちは焼きそばをもらえると思っているのですか? だって」
「「…………………あ」」
ミライと顔を見合わせる。
俺の頭は真っ白になった。
そうだ。
どうして敵に焼きそばを渡すだろうか、いや渡さない。
「おいどうすんだよミライ!」
「こうなったら仕方ありません。ケチなイツモフさんからもらうのは諦めてクリストフさんからもらいましょう!」
「俺だってやるわけねぇだろ!」
隣から、クリストフさんの声が飛んでくる。
ですよねぇ。
よく考えなくてもそうですよねぇ。
俺たちの名案はいったいどこから間違えていたんだ!
「これ……もう万事休すじゃないか!」
「大丈夫です!」
どうやらミライにはまだ考えがあるようだ。
「こうなったら当初の予定通り、他店の焼きそばをもらってきましょう」
「そうだな……ってまだ準備中だからどこも作ってねぇよ!」
俺たちが今、焼きそばを作っているのは値段決めの勝負のため。他の店はまだまだ準備の真っ最中だ。
「じゃあ材料をもらって作れば」
「材料から焼きそばを作る時間なんてもう残ってねぇよ!」
「そんな……」
ミライが膝をついて、がっくりとうなだれる。
「私の、完璧な作戦がぁ」
俺たちは、勝負する前からすでに負けていたのだった。
ちなみに焼きそばの味対決は、イツモフさんが一位、クリストフさんが二位となった。
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