うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第2章 4 金の亡者の本懐

このために

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「実は、このグランダラにいる闇商人が、過去の出来事を映すことのできる水晶を販売しているのです」

「過去の、水晶?」

 なんだそりゃ。

 それが本当なら、ものすごい代物じゃないか。

「はい。使用者の強い思いに反応して、滞留している時間の残滓をその水晶に投影し、過去を映像として見ることができます」

「なにそのチートアイテム。ヤバいじゃん。過去見えるって、それ、マジヤバくない?」

 ああ、人は本当にすごいものを見たとき、語彙力を失って華のJK化するものなんですね。

 ソースは今の俺。

 いなかった場所の過去を知ることができる。

 なにそれちょーヤバいんですけど。

「ただし、過去を投影できる期間は半日前までです」

「いや短すぎだろ!」

「しかも一回使うだけで壊れます!」

「脆すぎだろ!」

 ま、そんなオチだとは思っていたけどさ。

「なに言っているんですか」

 ミライの目が厳しいものになる。

「過去の出来事を一回だけでものぞける。それだけで充分すぎるくらいの代物です。これがあれば、イツモフさんの家でなにが起こったかがわかるんですよ」

「……たしかにっ!」

 言われてみればそうだ。

 反射的にツッコんでしまったが、半日前までだろうが使用限度が一回きりだろうが、すごいものはすごい。

 マジちょーヤバみが深みざわんだふるなんですけどー。

「つまり、その水晶を使って誘拐が起こった現場をのぞいて、ヒントを探そうってことだな」

「そういうことです」

 深くうなずいたミライが、その険しい表情を変えぬままイツモフさんを見る。

「イツモフさん。これでもしかしたらジツハフくんがどこに連れ去られたか、わかるかもしれません。しかし、何度も言うように期間は半日前までです。しかも、その水晶はものすごく高額です。私が厳選した、いつか買ってみたい高額な物ランキングの中に入っていますから」

「うん。なんでそんなリストがあるのか聞いてもいいかな」

「実は私、高額なものを買うとテンションがぶち上がるんです。世の中の高額なものをすべて手に入れたいという、誰もが羨む格好いい夢を抱いているんです!」

「小学生はもちろん中二病患者ですら共感しない夢だな! やっぱり重度の依存症じゃねぇか!」

「大志を抱いていると言ってください!」

「今すぐクラーク博士に謝れよ! これはもう早急にカウンセリング施設を探さないと取り返しのつかない事態に」

「そんなどうでもいいことは後にしてください。そもそもカウンセリングにいかなくていいと言ったのは誠道さんでしょう!」

 ミライにまた一喝される。

 いや、依存症問題はどうでもよくないような気がするんだが……って俺たしかにカウンセリングにいくなって言っちゃってるぅ!

 ミライにまんまとはめられてるぅ!

「とにかく、私が言いたいのは時間がないということです。今すぐ水晶を買って使わないと間に合わないのです。ただ、その水晶の値段は3000万リスズ。あまりに高額すぎて、問題はどうやってお金をかき集めるか、ですが……」

「まあ、それくらいの値段はするわな」

 もちろん俺たちの家にそんなお金はない。

 これはもう、借金するしか――

「お金ならここにある」

 イツモフさん平然と言い放つ。

 彼女はいつの間にか分厚い札束を三つ抱きかかえていた。

「そんな札束、いったいどこから出したんだよ!」

「別次元にある私の金庫からです。その金庫に入れているときだけ、お金の価値が一兆倍になるすごい金庫を作れるんです」

「なんだそれ! めちゃくちゃ最高――でもねぇな! 意味ねぇじゃん! 出したときに価値が戻るんならな!」

 むしろ金庫に入っている額を持っていると勘違いして、散財しまくりそうなんだけど。

 しかも別次元の金庫って……もしかしてイツモフさんも固有ステータス持ちなの?

 だってそんな変な仕様、絶対に固有ステータス関連の技だよね……って。

「待ってその前に3000万の衝撃忘れてたわ! あんた普通に金持ちじゃねぇか! それであんなに金の亡者って、どんだけがめついんだよ!」

 なんのためらいもなく3000万リスズもの大金をぽんと出せる。

 これは大金持ちの所業じゃねぇか。

「そんなの当然です」

 イツモフさんは腕の中の札束を睨みつけるようにして見下ろす。

 その表情に込められた切実さが、俺の背中を震わせた。

「私はジツハフを守るためだけにお金を貯めているんです。ここで使わないでいつ使うというんですか。ここで使わないなら、こんなお金、なんの価値もないただの紙屑です」

 イツモフさんの強い思いに体が焼かれる。

 彼女は本当に弟のことを愛しているのだ。

 お金を使うべき瞬間を知っているだけなのだ。

「悪かった。だったら早くいこう」

 俺たちは過去を見ることができる水晶を売ってくれる闇商人の元へ急いだ。
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