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第4章 4 束縛の果てに
利用済み
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「見つかってないと思ったか。その重ね着してる服がちらちら見えてたんだよ」
不覚を取った、とマーズは後悔する。
隠れていたつもりだったが、いまは普段とは違い何着もの服を重ね着している。
太っている人のような膨らんだお腹が、隠れ切れていなかったのかもしれない。
こうなったら、仕方がない。
マーズは隠れていた岩場から飛び出して、男を睨みつける。
「見つけていたからどうだっていうの? コハクちゃんの心をもてあそんで、この事実を知って、私がコハクちゃんを殺すわけがないじゃない」
「それはどうかな」
なにがおかしいのか、男が腹を抱えて笑いはじめる。
「お前は確実にコハクを殺す。……さて、それはなぜか?」
すっと笑いを収めた男は、にやりと不敵に笑った。
「もうお前が、俺の罠にかかっているからだよ」
男がそう言ったその瞬間、マーズの足元に六芒星の魔法陣が浮かび上がる。
その魔法陣から放たれる紫色の光で、洞窟内が不気味に照らされる。
「拘束の魔法っ! ……まさかあなたっ」
マーズは魔法陣から逃れようとしたが、すでに体を動かすことはできなくなっていた。
しかも魔力排除の魔法陣まで重ねがけされてあるため、抵抗も反撃もできない。
「とんだ失態ね……。あなたが生きていて、こんなところで再開するなんて」
「おお、その反応、ようやく思い出したようだな」
下卑た笑みを浮かべた男が一歩、また一歩と、マーズに歩み寄っていく。
「……だが、なにもかもが遅かったようだな」
「ふざけないで。私とあなたの力の差を知らないとは言わせないわよ」
「だからこうして捕縛したんだろうが。戦いってのはな、強いやつが勝てるとは限らねぇんだ。お前もよく知ってるだろう」
マーズの目の前で立ち止まった男が、マーズの額に手を伸ばし、人差し指を押し当てる。
「これを、お前に対して使うことになるとはな。悪く思うなよ」
マーズは口元をゆがめて、それをただただ見つめているだけ。
「俺の勝ちだ……。【手上踊操】」
男がそう唱えると、マーズの体がびくりとはね、なにかに縛りつけられたかのようにピンと伸びる。
すぐに体中から力が抜けたみたいに、その場にどさりと崩れ落ちた。
男が顔を手で覆いながら、嬉しそうな笑い声をあげる。
「いろいろと想定外はあったが……これですべてが整った。しかも俺にとっていい方に転がりまくりだぁ……これだよこれ。たまんねぇなぁ。このときをどれだけ待ち望んだかぁ」
「ねぇ、本当に大丈夫なの? この人にコハクを殺させるはずでしょう。動かないけど……、まさか殺しちゃったとか」
「心配するな。殺したんじゃねぇ。俺の言うことだけを聞く人形にしただけだ」
その証拠に……なぁ、ハクナ。
男がハクナに笑みを向ける。
その笑顔はハクナを見下すものだった。
「もう用済みだよ、ハクナ。お前もただ利用されていただけなんだよ」
「え? ちょっと、なにを言って」
「こいつをやれ。マーズ」
「承知、しました」
マーズがのっそりと立ち上がり、色を失った瞳でハクナを見つめる
「ちょっと、冗談ならなにを……」
ハクナはじりじりと後ずさりながら、下卑た笑みを浮かべる男と無表情のマーズを交互に見やって――。
「……え、私、騙されていたの」
絶望に顔をゆがめ、その場に力なく座り込んだ。
「はははっ! みんな俺の手の上で転がされてたんだぁ!」
その男は、「最後の仕上げといくか」と叫んだあと、白髪の猫族へとその姿を変えた。
不覚を取った、とマーズは後悔する。
隠れていたつもりだったが、いまは普段とは違い何着もの服を重ね着している。
太っている人のような膨らんだお腹が、隠れ切れていなかったのかもしれない。
こうなったら、仕方がない。
マーズは隠れていた岩場から飛び出して、男を睨みつける。
「見つけていたからどうだっていうの? コハクちゃんの心をもてあそんで、この事実を知って、私がコハクちゃんを殺すわけがないじゃない」
「それはどうかな」
なにがおかしいのか、男が腹を抱えて笑いはじめる。
「お前は確実にコハクを殺す。……さて、それはなぜか?」
すっと笑いを収めた男は、にやりと不敵に笑った。
「もうお前が、俺の罠にかかっているからだよ」
男がそう言ったその瞬間、マーズの足元に六芒星の魔法陣が浮かび上がる。
その魔法陣から放たれる紫色の光で、洞窟内が不気味に照らされる。
「拘束の魔法っ! ……まさかあなたっ」
マーズは魔法陣から逃れようとしたが、すでに体を動かすことはできなくなっていた。
しかも魔力排除の魔法陣まで重ねがけされてあるため、抵抗も反撃もできない。
「とんだ失態ね……。あなたが生きていて、こんなところで再開するなんて」
「おお、その反応、ようやく思い出したようだな」
下卑た笑みを浮かべた男が一歩、また一歩と、マーズに歩み寄っていく。
「……だが、なにもかもが遅かったようだな」
「ふざけないで。私とあなたの力の差を知らないとは言わせないわよ」
「だからこうして捕縛したんだろうが。戦いってのはな、強いやつが勝てるとは限らねぇんだ。お前もよく知ってるだろう」
マーズの目の前で立ち止まった男が、マーズの額に手を伸ばし、人差し指を押し当てる。
「これを、お前に対して使うことになるとはな。悪く思うなよ」
マーズは口元をゆがめて、それをただただ見つめているだけ。
「俺の勝ちだ……。【手上踊操】」
男がそう唱えると、マーズの体がびくりとはね、なにかに縛りつけられたかのようにピンと伸びる。
すぐに体中から力が抜けたみたいに、その場にどさりと崩れ落ちた。
男が顔を手で覆いながら、嬉しそうな笑い声をあげる。
「いろいろと想定外はあったが……これですべてが整った。しかも俺にとっていい方に転がりまくりだぁ……これだよこれ。たまんねぇなぁ。このときをどれだけ待ち望んだかぁ」
「ねぇ、本当に大丈夫なの? この人にコハクを殺させるはずでしょう。動かないけど……、まさか殺しちゃったとか」
「心配するな。殺したんじゃねぇ。俺の言うことだけを聞く人形にしただけだ」
その証拠に……なぁ、ハクナ。
男がハクナに笑みを向ける。
その笑顔はハクナを見下すものだった。
「もう用済みだよ、ハクナ。お前もただ利用されていただけなんだよ」
「え? ちょっと、なにを言って」
「こいつをやれ。マーズ」
「承知、しました」
マーズがのっそりと立ち上がり、色を失った瞳でハクナを見つめる
「ちょっと、冗談ならなにを……」
ハクナはじりじりと後ずさりながら、下卑た笑みを浮かべる男と無表情のマーズを交互に見やって――。
「……え、私、騙されていたの」
絶望に顔をゆがめ、その場に力なく座り込んだ。
「はははっ! みんな俺の手の上で転がされてたんだぁ!」
その男は、「最後の仕上げといくか」と叫んだあと、白髪の猫族へとその姿を変えた。
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