うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第5章 1 私はぷりちーアイドル!

ぷりちー彼氏

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「コーヒーです。どうぞ。ドアホ……ンアさん」

 敵対心むき出しのミライが、ダイニングテーブルの上にお茶をドン、と置く。

 カップの中のコーヒーがゆらゆらと揺れているのが見えるけど、濃い赤色ってまずおかしいよね?

 なに入れたの?

 血?

 血ですか?

「ありがとうございます。うわあ、鉄分が多そうですごく個性的ですねぇ」

 ホンアちゃんも皮肉で応戦する。

 個性的、ってものすごく便利な言葉だなぁ。

 あのあと、とりあえず俺たちはホンアちゃんをリビングに通した。

 大人気アイドルが俺の家にいるなんてどういうこと?

 何度瞬きしても目の前にぷりちーホンアちゃんが座っている。

「それで、さっきのことだけど、どういうこと?」

 俺はカップを両手で持ってふぅふぅと息を吹きかけているホンアちゃんに声をかける。

「どういうことって、言葉通りの意味ですよ」

 ホンアちゃんは俺から目を逸らして、ぽっと頬を赤く染める。

 言葉通りって、それって、やっぱり。

「……あ、これ私が息を吹きかけて冷ましておいたので、ぜひ毒味――飲んでください」

 首を傾げながら、カップを差し出してくるぷりちーホンアちゃん。

 ああ、なんて可愛らしいんだ。

 俺のためにふぅふぅして冷ましてくれたなんて、家庭的な一面もあるんだなぁ……って。

「あれ、ホンアちゃんいま、毒味って言いかけたよね」

「気のせいです。どうぞ」

「だから、いま毒味って」

「ど・う・ぞ」

 ホンアちゃんに鉄分たっぷりのコーヒーを強引に押しつけられる。

 まあ、いっか。

 ホンアちゃんがふぅふぅしてくれたんだから、これはどんなコーヒーよりも貴重な。

「誠道さん! そんなもの飲んではダメです! 赤土の泥水ですから最悪死にますよ!」

「なんでそんなもの客人に出してんだよ!」

「アホンアさんはちょっとファンがいるくらいで天狗になってしまうような傲慢アイドルですから、泥水を啜るような気持ちで努力して成功しようとしていたころを思い出してほしいっていう、私なりの優しさですが?」

「それ実際に泥水を啜れって意味じゃないからね!」

「あの!」

 ホンアちゃんが俺たちの会話を止める。

「早く教えてください。あなたは、私の彼氏になってくれるんですか?」

「もちろん!」

 そうやって可愛らしく首を傾げられたらもう無理です。

「本当の恋は、相手が誰でどんな相手でも止まれないものなんだ!」

「いや止まってくださいよ。子供じゃないんですから。相手が既婚者でも止まれないって言ってるようなもんですから、信頼を失いますよ!」

「とにかく、私とつき合って、ぷりちー彼氏になってくれるってことでいいですよね?」

 勢いよく立ち上がったホンアちゃんは、机に身を乗り出してじっと俺を見つめてくる。

 肩にかかっていた水色の髪がハラリと落ちた……って、ちょっと待って。

 ぷりちー彼氏ってなに?

 俺がそう聞き返す前に、ミライが先にしゃべりはじめていた。

「ぷりちー彼氏? そんなのに誠道さんがなれるわけないでしょう。どうみてもぷりちーとは程遠い存在です」

「いいえ違います。私がぷりちーアイドルなれたんですから、誠道さんもぷりちーになれます」

 うわぁ……自信ねぇ。

 俺をバカにする発言をするミライの肩を持つのは癪だが、今回ばかりはミライの言葉に賛成。

 控えめに言って、俺にぷりちー要素なんてないし。

「悪いけどホンアちゃん。俺もぷりちー彼氏にはなれないと思う」

「え? どうしてですか?」

「だって俺はぷりちーじゃないし、よくよく考えたら、そもそも君の彼氏にもなれないんだ」

 そうキッパリと告げると、ホンアちゃんの目に見る見るうちに涙がたまっていく。

「どうして、ですか? 私じゃダメな理由を聞かせてください」

「それは……」

 俺は口ごもる。

 なんて言うか、その理由をここで言うのは、ちょっと恥ずかしい。

 だって、ねぇ。

 ホンアちゃんは、可愛いけれど、ウインクにときめいてファンにはなったけど、冷静に考えるとラブというよりライクで……しかも俺は、その…………俺には……。

 俺はちらりと俺の隣、さっきまでミライがいた方を見る――――あれっ?

 そこにミライはいなかった。

「……え?」

 きょろきょろ顔を動かしてミライをさが――――いた。

 いつの間にか、いまにも泣きだしそうなホンアちゃんの横に移動している。

「ホンアさん。まずは落ち着いてください。ささ、コーヒーでも飲んで」

 ミライがホンアちゃんの前にカップを置く。

 なんだ、さっきまで糾弾していた相手に寄り添うなんて、やっぱりミライは優しいな。

 そういうところに俺は――――って。

 ミライが置いたカップの中の液体は、真っ赤だった。

「お前懲りずにまたやりやがったなぁ! どさくさに紛れて死体蹴りやめろよ!」

「死体蹴りではありません。私は泥水を啜る気持ちを思いださせようと」

「さっきも聞いたわ! CMあけかよっ!」

 俺はホンアちゃんの前に置かれていたカップを俺の方に寄せ、万が一にもホンアちゃんがそれを飲まないようにしたあとで。

「本当にごめん。俺は君とはつき合えない」
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