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第6章 6 絶世の美女と真実の愛
好き好き好き好き好き
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「うっ……」
胸を押さえてうずくまる。
刺さったはずの矢はすでに消滅していた。
「こ、こんなところで俺は死ぬのか…………あれ? ……痛く、ない?」
体の中になにかが入ってきたという若干の違和感はあるものの、痛みは感じない。
血も出ていないし、皮膚が裂けたような感覚もない。
どういうことだ?
たしかに矢は刺さったのに、なんともないぞ?
「いつの日か、もしも私が惚れた人間が現れたら使おうと思っていたチャームをまさかこんなところで、こんな引きこもり相手に使うなんて、不服なのに、この幸福感はなに?」
オリョウはそんな俺の困惑に気づかず、攻撃が成功した喜びに浸っている。
「お金をいくら着服しても満たされなかったのに。こんな男に恋をするだけで心が満たされていくなんて」
「あのぉ、お取込み中申しわけないんですが、なにもないんですけど」
「これで石川くんは私のもの。さぁ、早く私と夫婦漫才で天下を」
「だから、漫才なんかする気ないんですけど」
「……え?」
はっきり言ってやると、オリョウは大口を開けたまま固まった。
信じられないと言わんばかりに顎をがくがく震わせながら、俺を指さして。
「そ、そんなはずはないわ。ほら、私の隣に来なさい。私にツッコみをしなさい」
目を見開いているオリョウが俺に対して命令するが、俺の体が動き出すことはない。
オリョウの近くにいきたいという欲求も生まれていない。
「どうして……? まさか、完璧に習得できていなかったというの?」
うなだれたオリョウが悔しそうに呟く。
「いや、違う。もしかして、女体化支配を継続させるために魔力を使いすぎている?」
オリョウは体を左右に揺らしながら、ゆっくりと顔を上げていく。
「このチャーム魔法は私の魔力をラブパワーに変換して相手を洗脳するはず。……ってことは石川くんを洗脳するための魔力が足りていなかった」
なんか変なことをブツブツと呟いているオリョウ。
頼まれていないのに技の詳細を説明するって、盛大な負けフラグですよ?
「だったらもっと魔力を使えばいいだけの話。真実の愛を手に入れた私にはもうお金なんて必要ない。男女平等なんてどうでもいい、恋は乙女のすべてを変えるのよ!」
オリョウがそう叫んで両手を天にかかげる。
その手の先から無数の真っ白な光が飛び出していって、四方八方に散らばっていく。
そのうちの光のいくつかが舞台の下で女奴隷化していた屈強な男どもに突き刺さり、女体化していた体が元の筋肉ムキムキに戻っていく。
屈強な男どもは、その場に折り重なるようにして倒れた。
意識を取り戻しているものはいないようだ。
「これで鬱陶しかった魔力コントロールも、奴隷の体内に宿していた魔力も回収できた。いける。これならいける!」
なんか、本当にヤバいかもしれない。
オリョウがついに本領を発揮するってことだからな。
……ん?
オリョウが本領を。
「誠道さん。危ない!」
「え?」
韻を踏んでいることに気を取られている間に、オリョウは攻撃態勢を整え終わっていた。
先ほどとは比べ物にならないくらい、矢の先についているハートが大きい。
「愛のハートで心を穿て! 【愛惚穿】!」
「誠道さんっ!」
矢が放たれる直前、ミライが俺の前に飛びだそうとしたが、ユーリの拘束魔法はまだかかったままなので動けない。
もちろん俺も同じ。
聖ちゃんも拘束されてるだろうし……。
「ぐへへへ。寝ている隙にこいつらの睾丸を取ってもいいですよね。だって一度は女化して睾丸を失っていたんですから、気にする人なんていませんよね」
「なにやってんだよ聖ちゃん!」
舞台下で倒れている男どもの側に移動していた聖ちゃんへのツッコみを優先してしまい、またしても必殺技の発動ができなかった。
くそう。
この行動こそが、俺にツッコみの才能がある証明だというのか。
――そして、オリョウが放ったハートの矢が俺の胸にまた突き刺さる。
今度の矢は、すぐには消えない。
熱くてとろとろした大量のなにかが、流れ込んでくる感覚がある。
今度も血は流れていないが、胸がどんどん熱くなっていく。
体がピンク色に光っていく。
「なんだ、これ……」
ダメだ……マジでヤバい。
意識が保てない。
脳内では「好き好き好き好き好き好き好き」というオリョウの声が、たえず響き渡っている。
「ああ、ち、くしょう」
意識を失う間際、走馬灯のように頭の中を駆け回ったのはミライの笑顔だった。
胸を押さえてうずくまる。
刺さったはずの矢はすでに消滅していた。
「こ、こんなところで俺は死ぬのか…………あれ? ……痛く、ない?」
体の中になにかが入ってきたという若干の違和感はあるものの、痛みは感じない。
血も出ていないし、皮膚が裂けたような感覚もない。
どういうことだ?
たしかに矢は刺さったのに、なんともないぞ?
「いつの日か、もしも私が惚れた人間が現れたら使おうと思っていたチャームをまさかこんなところで、こんな引きこもり相手に使うなんて、不服なのに、この幸福感はなに?」
オリョウはそんな俺の困惑に気づかず、攻撃が成功した喜びに浸っている。
「お金をいくら着服しても満たされなかったのに。こんな男に恋をするだけで心が満たされていくなんて」
「あのぉ、お取込み中申しわけないんですが、なにもないんですけど」
「これで石川くんは私のもの。さぁ、早く私と夫婦漫才で天下を」
「だから、漫才なんかする気ないんですけど」
「……え?」
はっきり言ってやると、オリョウは大口を開けたまま固まった。
信じられないと言わんばかりに顎をがくがく震わせながら、俺を指さして。
「そ、そんなはずはないわ。ほら、私の隣に来なさい。私にツッコみをしなさい」
目を見開いているオリョウが俺に対して命令するが、俺の体が動き出すことはない。
オリョウの近くにいきたいという欲求も生まれていない。
「どうして……? まさか、完璧に習得できていなかったというの?」
うなだれたオリョウが悔しそうに呟く。
「いや、違う。もしかして、女体化支配を継続させるために魔力を使いすぎている?」
オリョウは体を左右に揺らしながら、ゆっくりと顔を上げていく。
「このチャーム魔法は私の魔力をラブパワーに変換して相手を洗脳するはず。……ってことは石川くんを洗脳するための魔力が足りていなかった」
なんか変なことをブツブツと呟いているオリョウ。
頼まれていないのに技の詳細を説明するって、盛大な負けフラグですよ?
「だったらもっと魔力を使えばいいだけの話。真実の愛を手に入れた私にはもうお金なんて必要ない。男女平等なんてどうでもいい、恋は乙女のすべてを変えるのよ!」
オリョウがそう叫んで両手を天にかかげる。
その手の先から無数の真っ白な光が飛び出していって、四方八方に散らばっていく。
そのうちの光のいくつかが舞台の下で女奴隷化していた屈強な男どもに突き刺さり、女体化していた体が元の筋肉ムキムキに戻っていく。
屈強な男どもは、その場に折り重なるようにして倒れた。
意識を取り戻しているものはいないようだ。
「これで鬱陶しかった魔力コントロールも、奴隷の体内に宿していた魔力も回収できた。いける。これならいける!」
なんか、本当にヤバいかもしれない。
オリョウがついに本領を発揮するってことだからな。
……ん?
オリョウが本領を。
「誠道さん。危ない!」
「え?」
韻を踏んでいることに気を取られている間に、オリョウは攻撃態勢を整え終わっていた。
先ほどとは比べ物にならないくらい、矢の先についているハートが大きい。
「愛のハートで心を穿て! 【愛惚穿】!」
「誠道さんっ!」
矢が放たれる直前、ミライが俺の前に飛びだそうとしたが、ユーリの拘束魔法はまだかかったままなので動けない。
もちろん俺も同じ。
聖ちゃんも拘束されてるだろうし……。
「ぐへへへ。寝ている隙にこいつらの睾丸を取ってもいいですよね。だって一度は女化して睾丸を失っていたんですから、気にする人なんていませんよね」
「なにやってんだよ聖ちゃん!」
舞台下で倒れている男どもの側に移動していた聖ちゃんへのツッコみを優先してしまい、またしても必殺技の発動ができなかった。
くそう。
この行動こそが、俺にツッコみの才能がある証明だというのか。
――そして、オリョウが放ったハートの矢が俺の胸にまた突き刺さる。
今度の矢は、すぐには消えない。
熱くてとろとろした大量のなにかが、流れ込んでくる感覚がある。
今度も血は流れていないが、胸がどんどん熱くなっていく。
体がピンク色に光っていく。
「なんだ、これ……」
ダメだ……マジでヤバい。
意識が保てない。
脳内では「好き好き好き好き好き好き好き」というオリョウの声が、たえず響き渡っている。
「ああ、ち、くしょう」
意識を失う間際、走馬灯のように頭の中を駆け回ったのはミライの笑顔だった。
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