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最終章 1 失踪、捜索、そしてドMへと……
アンダーグラウンド
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俺とミライとマダムさんは、手分けして失踪してしまったオムツおじさんを探すことになった。
俺としては不服だ。
非常に不服だ。
「見つけられるわけないだろ、絶対」
そもそも、オムツおじさんは、正常な性癖を手に入れたから逃げたって説はない?
だったらむしろ見つけてはいけない、たとえ見つけたとしても見なかったことにしてあげるのが、大人の優しさではないだろうか。
「ってかなんでオムツおじさんのために体力使わなきゃいけないんだよ」
そう愚痴りつつ、俺はグランダラの北側にある、薄暗いのに煌びやかな謎の通りを歩いていた。
薄暗さの理由は、文字通り、日が当たらないじめじめした場所だから。
そして、煌びやかさの理由は、軒を連ねている店が出している看板が、アホみたいに原色の輝きを放っているから。
アンダーグラウンドな雰囲気がびんびんににじみ出ている、もし俺が親だったら、絶対に子供を近づけさせたくないような場所だ。
「……なんか、ちょっと変な臭いもするなぁ」
先ほどから呼吸を最小限に抑えている自分がいる。
すれ違う人たちはみな男で、ポケットに手を突っ込んで、若干前かがみになって歩いていた。
なにかを誤魔化しているように見えた。
「はぁ、めんど」
俺だって、正直言えばこんなところ近寄りたくはなかった。
でもまあ、オムツおじさんが仮にいるとしたら、ここくらいしか心当たりないしなぁ。
……と、そのときだった。
目の前の建物の扉が開いて、中から男が飛び出してきた――いや、背中を蹴飛ばされて追い出されたと言った方が正しいか。
しかも、なぜかその男はパンツ一丁で、お尻を突き上げるようにして路上に倒れ、背中には真っ赤な靴跡(ハイヒール跡)がある。
そんな変出者の背後には、顔に黒い蝶の仮面、妖艶な黒のボンテージ、使い込まれた鞭を持った女王様が立っており、地面に突っ伏しながら「あへあへ」言って頬を赤らめている変出者めがけて、洋服を投げつけていた。
「あんたみたいな豚野郎、こうやって帰らされるのがお似合いよ!」
「あ、ありがとうございましゅー」
「豚はそんな風に泣かないわよ」
「ぶひぶひっ、ぶひぶひぶひぶひぃー」
醜態をさらしているのに恥ずかしがるそぶりを見せず、むしろ目を恍惚の形にとろけさせている変出者の顔面に、彼が履いていた靴が投げつけられる。
「あ、ありがとうございますぶひぃいいい!」
ついに変出者は、いろんな意味で天国へ旅立ってしまった。
そう!
ここはグランダラ中のドMがあつまる、ドM歓楽街なのだ!
オムツおじさんがいそうな場所の筆頭でしょ?
最有力候補でしょ?
完全に完璧に絶対にドMではない俺がどうしてこの場所を知っているか、という謎で理不尽な疑問は今は置いておくことにして。
お、オムツおじさーん、どこですかー?
と、心の中で叫びつつ、通りをきょろきょろしながら歩く。
なんで声に出さないかって?
そんなの、オムツおじさんなんて公衆の面前で叫ぶの、恥ずかしいからね!
え? ここにはもっと恥ずかしい人たちしかいないって?
それは……それは…………今は多様性の時代だよ!
ドMでなにが悪い!
……ってだから俺はドMじゃないんだってば!
「あら、かわいい坊やが歩いてるじゃない。ねぇ、お姉さんにお尻を叩かれてみない?」
「はいおねが――客引きについて行ってはダメだっていうのは歌舞伎町の常識なので!」
強引に俺の腕をつかんできたダイナマイトボディ女性からの誘惑を断ち切り、小走りでその場を立ち去る。
一応言っておくけど、ダイナマイトなボディに対して魅力を感じてしまっただけであって、お姉さんにお尻を叩かれることに魅力を感じたわけじゃないからね。
そそそそんなのありえるわけないよ。
お尻を叩かれるなんて普通に罰ゲームじゃん。
……え?
さっきから誰も指摘していないのに勝手に弁明してるせいで、かえってドMっぽく見えてるって?
おい!
言いがかりはよしてくれよ。
こうして冤罪事件は産まれてしまうんですねぇ――
「――うわぁっ!」
考え事をしながら走っていたため、俺は道に転がっていた段差……ではなく石ころ……でもなくパンツ一丁姿のおじさんの体につまずいて、転んでしまった。
「……ってぇ」
立ち上がりながら痛む左ひじを見ると、すりむいてしまったようで血が出てきていた。
「マジかよ」
どうしたもんかと周囲を見渡す。
大体、こういうアンダーグラウンドな場所には特殊な品ぞろえで有名な薬局があるんですよねぇ……って、あったあった。
ちょうど近くにあった薬屋さんに入り、消毒液と絆創膏を探すことにする。
ただ、その薬局に置かれている商品はすべて痛み増強剤だった。
「なんで痛みを増幅させてんだよ! こんな商品しか置いてなくて薬局を名乗んな! せめて痛み止めにしとけよ!」
思わず声に出して突っ込んでしまうと、店主の眼鏡をかけた小太りのおじさんが、カウンターの中から訝し気に俺を見つつ、声をかけてきた。
「いや、痛がりに来てるのに痛み止めって、わけわかんないでしょ」
……うん、このドM歓楽街だけで通用する正論をありがとう、おじさん。
「あ、一応消毒液とかは、そっちの隅の方に置いてあるから」
「ありがとうございます」
俺は店主に礼を言って消毒液を買い、そそくさと店を後にした。
俺としては不服だ。
非常に不服だ。
「見つけられるわけないだろ、絶対」
そもそも、オムツおじさんは、正常な性癖を手に入れたから逃げたって説はない?
だったらむしろ見つけてはいけない、たとえ見つけたとしても見なかったことにしてあげるのが、大人の優しさではないだろうか。
「ってかなんでオムツおじさんのために体力使わなきゃいけないんだよ」
そう愚痴りつつ、俺はグランダラの北側にある、薄暗いのに煌びやかな謎の通りを歩いていた。
薄暗さの理由は、文字通り、日が当たらないじめじめした場所だから。
そして、煌びやかさの理由は、軒を連ねている店が出している看板が、アホみたいに原色の輝きを放っているから。
アンダーグラウンドな雰囲気がびんびんににじみ出ている、もし俺が親だったら、絶対に子供を近づけさせたくないような場所だ。
「……なんか、ちょっと変な臭いもするなぁ」
先ほどから呼吸を最小限に抑えている自分がいる。
すれ違う人たちはみな男で、ポケットに手を突っ込んで、若干前かがみになって歩いていた。
なにかを誤魔化しているように見えた。
「はぁ、めんど」
俺だって、正直言えばこんなところ近寄りたくはなかった。
でもまあ、オムツおじさんが仮にいるとしたら、ここくらいしか心当たりないしなぁ。
……と、そのときだった。
目の前の建物の扉が開いて、中から男が飛び出してきた――いや、背中を蹴飛ばされて追い出されたと言った方が正しいか。
しかも、なぜかその男はパンツ一丁で、お尻を突き上げるようにして路上に倒れ、背中には真っ赤な靴跡(ハイヒール跡)がある。
そんな変出者の背後には、顔に黒い蝶の仮面、妖艶な黒のボンテージ、使い込まれた鞭を持った女王様が立っており、地面に突っ伏しながら「あへあへ」言って頬を赤らめている変出者めがけて、洋服を投げつけていた。
「あんたみたいな豚野郎、こうやって帰らされるのがお似合いよ!」
「あ、ありがとうございましゅー」
「豚はそんな風に泣かないわよ」
「ぶひぶひっ、ぶひぶひぶひぶひぃー」
醜態をさらしているのに恥ずかしがるそぶりを見せず、むしろ目を恍惚の形にとろけさせている変出者の顔面に、彼が履いていた靴が投げつけられる。
「あ、ありがとうございますぶひぃいいい!」
ついに変出者は、いろんな意味で天国へ旅立ってしまった。
そう!
ここはグランダラ中のドMがあつまる、ドM歓楽街なのだ!
オムツおじさんがいそうな場所の筆頭でしょ?
最有力候補でしょ?
完全に完璧に絶対にドMではない俺がどうしてこの場所を知っているか、という謎で理不尽な疑問は今は置いておくことにして。
お、オムツおじさーん、どこですかー?
と、心の中で叫びつつ、通りをきょろきょろしながら歩く。
なんで声に出さないかって?
そんなの、オムツおじさんなんて公衆の面前で叫ぶの、恥ずかしいからね!
え? ここにはもっと恥ずかしい人たちしかいないって?
それは……それは…………今は多様性の時代だよ!
ドMでなにが悪い!
……ってだから俺はドMじゃないんだってば!
「あら、かわいい坊やが歩いてるじゃない。ねぇ、お姉さんにお尻を叩かれてみない?」
「はいおねが――客引きについて行ってはダメだっていうのは歌舞伎町の常識なので!」
強引に俺の腕をつかんできたダイナマイトボディ女性からの誘惑を断ち切り、小走りでその場を立ち去る。
一応言っておくけど、ダイナマイトなボディに対して魅力を感じてしまっただけであって、お姉さんにお尻を叩かれることに魅力を感じたわけじゃないからね。
そそそそんなのありえるわけないよ。
お尻を叩かれるなんて普通に罰ゲームじゃん。
……え?
さっきから誰も指摘していないのに勝手に弁明してるせいで、かえってドMっぽく見えてるって?
おい!
言いがかりはよしてくれよ。
こうして冤罪事件は産まれてしまうんですねぇ――
「――うわぁっ!」
考え事をしながら走っていたため、俺は道に転がっていた段差……ではなく石ころ……でもなくパンツ一丁姿のおじさんの体につまずいて、転んでしまった。
「……ってぇ」
立ち上がりながら痛む左ひじを見ると、すりむいてしまったようで血が出てきていた。
「マジかよ」
どうしたもんかと周囲を見渡す。
大体、こういうアンダーグラウンドな場所には特殊な品ぞろえで有名な薬局があるんですよねぇ……って、あったあった。
ちょうど近くにあった薬屋さんに入り、消毒液と絆創膏を探すことにする。
ただ、その薬局に置かれている商品はすべて痛み増強剤だった。
「なんで痛みを増幅させてんだよ! こんな商品しか置いてなくて薬局を名乗んな! せめて痛み止めにしとけよ!」
思わず声に出して突っ込んでしまうと、店主の眼鏡をかけた小太りのおじさんが、カウンターの中から訝し気に俺を見つつ、声をかけてきた。
「いや、痛がりに来てるのに痛み止めって、わけわかんないでしょ」
……うん、このドM歓楽街だけで通用する正論をありがとう、おじさん。
「あ、一応消毒液とかは、そっちの隅の方に置いてあるから」
「ありがとうございます」
俺は店主に礼を言って消毒液を買い、そそくさと店を後にした。
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