うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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最終章 3 ミライへ

この笑顔をずっと

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「前提?」

 あざとかわいく首を傾げる(彼氏補正が入っているかもしれない)ミライ。

 くぅ、彼女って本当に素晴らしい存在だなぁ。

「そもそも俺は告白するつもりでここに来たからさ、こんな壮大なことしなくたって、告白できたっていうか」

 なんか俺が自分一人じゃ告白できない情けない男というイメージがついている感じがして、そうじゃないよと弁明する。

「観覧車に乗って、夕日をバックにしておしゃれな告白をするつもりだったんだよ」

 ……あれ?

 なんかこれ、こうやって必死に弁明してるのって、逆効果じゃない?

 後からなら、なんだって言えるわけだし。

「そのために今日デートに誘ったんだし……さ」

 ああ、完全に逆効果だ。

 失敗を悟った俺はミライから顔を逸らして咳払いをごほごほ。

 早く話題を変えないと……と思っているが、恥ずかしさで脳が働かない。

「なるほど、そうでしたか」

 そして当然、ミライがこんな好機を逃すわけもなく。

 にんまりと笑ったミライは、俺の赤くなっているであろう顔を覗き込んでくる。

「誠道さん、嘘はいけませんよ、嘘は」

「ううう嘘じゃねぇし、普通に告白できたし」

「告白はできないはずです。先ほども説明しましたが、あの観覧車は撤去予定の危険な代物なので乗れません。誠道さんの『観覧車で告白計画』はそもそも実行できなかったんです」

「論点がずれてるだろ。ってか危ないのを忘れてジェットコースターに彼氏を乗せた人のセリフじゃねぇな」

「そんなのどうだっていいじゃないですか」

 ミライが急に俺の手を握ってきたため、心臓が喉元まで跳ね上がる。

「私たちが正式につき合うことができた。それだけで幸せなんですから」

「そう、だな」

 上目づかいのミライを見て、胸がきゅんきゅんする。

『正式につき合う』という言葉の響きに、感動を覚えている自分がいる。

「ま、心残りとしてはこの盛大な嘘がバレてしまって、世界を救ったカップルという称号を失ったことですかね。こんな称号を背負ってたら絶対に別れらないので、一生一緒にいられることが確定してたんですけど」

「別に、そんな称号なくたって別れるつもりないけど」

「……え?」

 ミライは口をぽかんと開けて固まっていたが、急に恥ずかしそうに目を逸らした。

「誠道さんは、本当に……もう」

 え、いやいや、いったいなに?

 俺なんかした?

 心残りとかミライが言うから、普通に俺の気持ちを素直に伝えただけ……って俺めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってるぅ!

「あ、今のはちがっ」

「え? 違う」

 ミライがジト目を向けてくる。

「いや違うってそういう意味じゃないけど、そのなんていうかほら、でもまぁ、その……」

「本当に誠道さんは面倒くさい人ですね。中途半端に鈍感で、だからこそとても優しい」

 笑顔でそう言いながら、ミライが抱き着いてくる。

「そもそも、こんな面倒な人の側にいられるのは絶対に私しかいません。これからはメイドではなく恋人として、私が一生、あなたの理想的な引きこもり生活をいろんな意味で支援させていただきます」

「わかったよ。期待してる」

 俺もミライを抱きしめ返すと、みんなからひゅーひゅーというからかいの声や口笛が飛んできた。

 恥ずかしい、けど嬉しい。

「誠道さん」

「なんだ?」

「こうやって祝ってくれる仲間がいるなんて、引きこもりの誠道さんにとっては奇跡に近いですよね」

「それさ、俺をいじってない?」

「全然まったく、これっぽっちもいじっているつもりはありません。被害妄想です」

「それだけ否定してるのは肯定の裏返しだからね」

「だから違いますって。私が言いたいのは」

 ミライはそこで一呼吸おいて、みんなを見渡す。

「ここにいるみなさんは、誠道さんのために無償でこんなとこまで来てくれて、しかも盛大な嘘にも協力してくれたんです。もし誠道さんが嫌なやつだったらここまでしてくれませんよ。みんなが誠道さんを大事に思っているから、ここまでしてくれるんです。誠道さんがこれまでにみなさんに与えてきたことの結果が、この状況を作り出したんです。存分に誇ってください。友達以上ですよ」

「友達、以上」

 ミライの言葉を聞いて、思わずうるっとしてしまった。

 いつの間にか、こんなにも素敵な仲間ができていたのか。

 みんなが俺たちのために動いてくれたように、これからは俺たちだってみんなのために動いていきたいと思う。

 恩返しをしたいと思える人たちがいるって、とても幸せなことなんだな。

「さて、誠道さん」

 俺が感慨にふけっていると、ミライが急に俺の手を取ってどこかへ引っ張っていこうとする。

「そろそろいきましょうか」

「いきましょうって、いったいどこへだよ」

 ……あれ、なんか嫌な予感がするんだけど。

「そんなの決まってるじゃないですか」

 振り返ったミライは、つながっている手を少しだけ上に持ち上げて。

「カップルしか参加できない、ホンアさんのライブですよ」

「……そういえば」

 そんな話もあったっけ?

 今日の昼にあったことなのに、ものすごく遠い日の出来事のように感じられる。

「せっかく参加条件を満たしたんですから、二人で、彼氏彼女として参加しましょう」

「そうだな。いくか」

 もしかすると、ホンアちゃんはこうなることを予想していたのかもしれない。

 いや、ここまでがミライの筋書きなのか?

 どっちでもいいや。

 ミライと一緒なら、何をしていたってきっと楽しい。

 もっと楽しい。

 最高に楽しい。

「誠道さん。もし彼女を差し置いてホンアちゃんに声援を送るようなら、どうなるかわかりますね?」

「アイドルのライブに参戦する人のセリフじゃないな。でも大丈夫だよ」

 俺はミライの手をぎゅっとした。

「ミライが一番好きだから、安心してくれ」

「私も、誠道さんのことが一番大好きです」

 互いに抑えきれなくなった感情を伝え合い、はにかみ合う。

 この笑顔をずっと守りたい。

 このつながっている手を離したくない。

 ミライは一生側にいてくれると言ってくれたが、結局のところ本当にそうなるかは、俺の行動次第なのだ。

 大切な人と一緒にいられる幸せを噛みしめて、その現実に甘えないようにする。

 かけがえのないことなのだと夜眠る前に必ず思い出そう。

 そうやって大切を噛みしめていけば、その大切はもっともっと大切なものに育っていくはずだから。

 俺は、ミライを幸せにしつづける覚悟を胸に深く刻み込んだ。

 ぷりちーアイドルホンアちゃんの生ライブに熱狂して我を忘れていたら、ミライに頬をつねられ、二日間、口を聞いてもらえなかった。
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