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俺と彼女の、せいしをかけた戦い
帆乃の家で
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「ここ、が吉良坂さんの家」
学校の最寄り駅から三駅。そこからさらに徒歩十分の場所に、吉良坂さんの住むマンションはあった。
いかにも億越えですって感じの豪華な建物が威圧的に聳え立っている。
メインエントランスまで伸びている石畳の両側に等間隔で植えられている木は丸みを帯びた形に枝葉を刈られているし、設置されている水景からは心地よい水の音が聞こえてくる。
「お待ちしておりました。宮田下様」
石畳の上を歩いてメインエントランスまで向かうと、そこには草飼さんが立っていた。
「帆乃様からお出迎えに上がるよう申しつかっております」
その言葉を聞いて少しだけほっとする。ってかそりゃそうか。メイドなんだから草飼さんも一緒に住んでるに決まっているか。
「では、まいりましょう」
草飼さんがオートロックの自動ドアを開けてくれ、俺を先導してくれる。ってかすごすぎじゃね? 天井高すぎだし、シャンデリアあるし、常駐のコンシェルジュいたんですけど? この床はもしかして大理石ってやつですか? オートロックこれで三つ目ですよ? エレベーターホールはまだですか?
「なんか、すごいとこに住んでますね?」
「帆乃様が住む場所ですから、当然です」
「ははは。ですよね」
ようやくエレベーターホールにたどり着き、最上階の五階に向かう。このマンションには二階から五階の計四フロアに部屋が二つずつしかないらしい。
この広さでその部屋数コスパ悪すぎじゃない? なんて思ってしまいがちだが、それだけこのマンションの家賃が高いということなのだろう。
エレベーターが五階に到着する。
扉が開くと、そこには高級そうな赤い絨毯が敷かれていた。歩いてすぐの場所にダブルロックの深緑の扉が一つだけ壁に取りつけられている。ここが吉良坂さんの部屋ってことだろうか?
「あれ? さっき各階に部屋が二つあるって言いましたよね?」
俺はあたりを見渡しながら尋ねる。
「もう一つの部屋が見当たらないんですけど」
「当然です。私たちが乗ったエレベーターはこのお部屋に行くための専用機ですので」
「せ、専用?」
「一階のエレベーターホールにはエレベーターが計八基ありましたよね?」
「ってことは? 部屋ごとにエレベーターがあるってこと?」
「そういうことです」
なにそれどういうこと? 意味はわかるけど意味がわからない! 要するに、吉良坂さんの住む部屋に行くことのできるエレベーターは一基だけってことだよね? つまり他人と乗り合わせる心配もないってことか。
なーんだ金持ちってみんな人見知りだったんだ!
俺がカルチャーショックを受けている間に、草飼さんが部屋の扉を開け、
「どうぞ、お入りください」
と身体を開いた。
「あ、ありがとうございます」
恐縮しながら、部屋の中に足を踏み入れる。玄関は当然大理石。正面と右手に廊下が二つ伸びている。その廊下の壁には絵画がいくつも飾られていた。
「その廊下をまっすぐ行くとリビングです。帆乃様もその中にいらっしゃるはずです。他は必要に応じてご案内いたします」
草飼さんに急かされるようにして廊下を進み、リビングの扉を開ける。学校の教室を四つくらい並べてもまだ足りないくらいの広さに、思わず息をのむ。黒革のソファやおしゃれな形をしたダイニングテーブル、大型テレビ、おしゃれな照明器具がセンス良く配置されている。
「ん? これはなんですか?」
俺は部屋の右隅に歩いていく。そこには濃い磨りガラスで囲まれた謎の空間があった。入り口がないため入ることができないし、当然中も見えない。
「その空間は気にしないでください」
草飼さんの返事はそっけないものだった。ってか気にしないでと言われたら余計気になる。だって部屋の隅にポツンとあるんだよ? 俺はそのガラスの中にあるものが気になって、目を細めてみたり顔を近づけたりしたが、結局中は見えなかった。
そんな俺の行動が面白かったのか、草飼さんが後ろでくすくすと笑っている。
「覗こうとしないでください。後でご案内いたしますから、そちらのソファにお掛けになってお待ちください」
「わかりました」
もどかしさを抱えつつ、俺は磨りガラスから離れてソファに座る。
ただ、やはり気になってその磨りガラスの方をちらちらと見てしまう。
ってかその謎の空間もそうだけど、この部屋広すぎて全然落ち着かないな!
俺は気を紛らわすために背伸びをしてみた。
「……あれ? 吉良坂さんはどこにいるんですか? 待ってるって言ってましたよね?」
そういえばと草飼さんに尋ねる。部屋で待っていると言っていたのに、吉良坂さんはどこにもいない。
「なにをおっしゃっているんですか?」
草飼さんがきょとんと首をかしげる。
「帆乃様ならこの部屋にいるじゃありませんか?」
学校の最寄り駅から三駅。そこからさらに徒歩十分の場所に、吉良坂さんの住むマンションはあった。
いかにも億越えですって感じの豪華な建物が威圧的に聳え立っている。
メインエントランスまで伸びている石畳の両側に等間隔で植えられている木は丸みを帯びた形に枝葉を刈られているし、設置されている水景からは心地よい水の音が聞こえてくる。
「お待ちしておりました。宮田下様」
石畳の上を歩いてメインエントランスまで向かうと、そこには草飼さんが立っていた。
「帆乃様からお出迎えに上がるよう申しつかっております」
その言葉を聞いて少しだけほっとする。ってかそりゃそうか。メイドなんだから草飼さんも一緒に住んでるに決まっているか。
「では、まいりましょう」
草飼さんがオートロックの自動ドアを開けてくれ、俺を先導してくれる。ってかすごすぎじゃね? 天井高すぎだし、シャンデリアあるし、常駐のコンシェルジュいたんですけど? この床はもしかして大理石ってやつですか? オートロックこれで三つ目ですよ? エレベーターホールはまだですか?
「なんか、すごいとこに住んでますね?」
「帆乃様が住む場所ですから、当然です」
「ははは。ですよね」
ようやくエレベーターホールにたどり着き、最上階の五階に向かう。このマンションには二階から五階の計四フロアに部屋が二つずつしかないらしい。
この広さでその部屋数コスパ悪すぎじゃない? なんて思ってしまいがちだが、それだけこのマンションの家賃が高いということなのだろう。
エレベーターが五階に到着する。
扉が開くと、そこには高級そうな赤い絨毯が敷かれていた。歩いてすぐの場所にダブルロックの深緑の扉が一つだけ壁に取りつけられている。ここが吉良坂さんの部屋ってことだろうか?
「あれ? さっき各階に部屋が二つあるって言いましたよね?」
俺はあたりを見渡しながら尋ねる。
「もう一つの部屋が見当たらないんですけど」
「当然です。私たちが乗ったエレベーターはこのお部屋に行くための専用機ですので」
「せ、専用?」
「一階のエレベーターホールにはエレベーターが計八基ありましたよね?」
「ってことは? 部屋ごとにエレベーターがあるってこと?」
「そういうことです」
なにそれどういうこと? 意味はわかるけど意味がわからない! 要するに、吉良坂さんの住む部屋に行くことのできるエレベーターは一基だけってことだよね? つまり他人と乗り合わせる心配もないってことか。
なーんだ金持ちってみんな人見知りだったんだ!
俺がカルチャーショックを受けている間に、草飼さんが部屋の扉を開け、
「どうぞ、お入りください」
と身体を開いた。
「あ、ありがとうございます」
恐縮しながら、部屋の中に足を踏み入れる。玄関は当然大理石。正面と右手に廊下が二つ伸びている。その廊下の壁には絵画がいくつも飾られていた。
「その廊下をまっすぐ行くとリビングです。帆乃様もその中にいらっしゃるはずです。他は必要に応じてご案内いたします」
草飼さんに急かされるようにして廊下を進み、リビングの扉を開ける。学校の教室を四つくらい並べてもまだ足りないくらいの広さに、思わず息をのむ。黒革のソファやおしゃれな形をしたダイニングテーブル、大型テレビ、おしゃれな照明器具がセンス良く配置されている。
「ん? これはなんですか?」
俺は部屋の右隅に歩いていく。そこには濃い磨りガラスで囲まれた謎の空間があった。入り口がないため入ることができないし、当然中も見えない。
「その空間は気にしないでください」
草飼さんの返事はそっけないものだった。ってか気にしないでと言われたら余計気になる。だって部屋の隅にポツンとあるんだよ? 俺はそのガラスの中にあるものが気になって、目を細めてみたり顔を近づけたりしたが、結局中は見えなかった。
そんな俺の行動が面白かったのか、草飼さんが後ろでくすくすと笑っている。
「覗こうとしないでください。後でご案内いたしますから、そちらのソファにお掛けになってお待ちください」
「わかりました」
もどかしさを抱えつつ、俺は磨りガラスから離れてソファに座る。
ただ、やはり気になってその磨りガラスの方をちらちらと見てしまう。
ってかその謎の空間もそうだけど、この部屋広すぎて全然落ち着かないな!
俺は気を紛らわすために背伸びをしてみた。
「……あれ? 吉良坂さんはどこにいるんですか? 待ってるって言ってましたよね?」
そういえばと草飼さんに尋ねる。部屋で待っていると言っていたのに、吉良坂さんはどこにもいない。
「なにをおっしゃっているんですか?」
草飼さんがきょとんと首をかしげる。
「帆乃様ならこの部屋にいるじゃありませんか?」
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