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木蓮の花咲く頃4
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声の主はタキシードで正装をしてはいるが、髪はツーブロックでトップはパーマをかけ後ろで結わいている。色も金髪に近いので普段着だったら怖くて近寄れなかっただろう。
「薬井、待たせたな。今日はサングラスはナシか」
「タキシードだからね」
「でも、色は抜いたのか。ほぼ金髪じゃないか」
「ちょっとした気分転換だよ」
俺がビビった格好も千屋にとってはなんでもないらしい。というより普段はサングラスまでしてるのか。それじゃあまるでチンピラじゃないか。俺だったらとてもじゃないが近寄れない。
「お前が会いたいって言ってた都谷先生を連れてきたよ。都谷、このけったいな頭してるのがあの画集の薬井直人だ。いかにも自由人な格好してるが、人畜無害だから安心しろ」
この格好を自由人と言える千屋がすごいと思う。
「ちょ。千屋さん、まともな紹介してよ。はじめまして、薬井直人です。デビュー作からずっと都谷先生の大ファンで千屋さんに無理を言って会わせて貰いました」
「はじめまして、都谷です」
格好はちょっと驚くけれど、話し方はきちんとしている。人畜無害というのは本当だろう。しかし、笑顔で挨拶をされたけれど、人見知りゆえに笑顔で挨拶は返せなかった。
いくら友人の友人とはいえ、俺にとっては見知らぬ他人なのだから人見知りは遺憾なく発揮される。これだけは何歳になっても変わらない。
「こいつ、いい歳していまだに人見知りなんてしてるけど、悪いやつじゃないから」
おい! 人見知りする人間がいつ悪い人間扱いされるようになったんだ。そんなことを言う人間がいるのか? 第三者がいなければ、ここで突っ込んでいた。もっとも、人が多くパーティーという場所ではできないけれど。
「千屋さん、人見知りの人をそんなふうに言ったらダメだよ。繊細っていうことだよ。あの、実は俺、先生に会うの2度目なんです」
俺の突っ込みたい気持ちは、目の前の男が代わって言ってくれた。それにしても会うのが2度目? 記憶力は悪い方ではないけれど会った記憶がない。
「あ、会ったって言ってもサイン会なんですけど」
そういうと頬を赤らめた。
サイン会といえば、3作目が賞を受賞し、そのときにサイン会を開いた記憶はあるが、もう随分と前の話だ。
「俺、その頃、画家として全然ダメで結構腐ってたんですよね。そのときに大好きな作家である都谷先生が受賞して。歳もそんなに違うわけじゃないのに違う次元にいるみたいで、すっごく悔しかったんです。それで、いつか先生の本の表紙を描けるようになろうと思ってそれから必死に描きまくったんです。そしたら先日千屋さんが先生の担当してるって知って、会わせて欲しくて頼み込んだんです」
「なにが頼み込んだんだよ。半分脅しだろうがよ」
「えー、人聞き悪いなぁ。対価じゃん」
何やら言い合っているが、どうも普通に話しをしていてと言うわけではなさそうだ。
「何の対価だ、千屋?」
少し声を低くして訊くと千屋がわかりやすくびくりとした。
「薬井、待たせたな。今日はサングラスはナシか」
「タキシードだからね」
「でも、色は抜いたのか。ほぼ金髪じゃないか」
「ちょっとした気分転換だよ」
俺がビビった格好も千屋にとってはなんでもないらしい。というより普段はサングラスまでしてるのか。それじゃあまるでチンピラじゃないか。俺だったらとてもじゃないが近寄れない。
「お前が会いたいって言ってた都谷先生を連れてきたよ。都谷、このけったいな頭してるのがあの画集の薬井直人だ。いかにも自由人な格好してるが、人畜無害だから安心しろ」
この格好を自由人と言える千屋がすごいと思う。
「ちょ。千屋さん、まともな紹介してよ。はじめまして、薬井直人です。デビュー作からずっと都谷先生の大ファンで千屋さんに無理を言って会わせて貰いました」
「はじめまして、都谷です」
格好はちょっと驚くけれど、話し方はきちんとしている。人畜無害というのは本当だろう。しかし、笑顔で挨拶をされたけれど、人見知りゆえに笑顔で挨拶は返せなかった。
いくら友人の友人とはいえ、俺にとっては見知らぬ他人なのだから人見知りは遺憾なく発揮される。これだけは何歳になっても変わらない。
「こいつ、いい歳していまだに人見知りなんてしてるけど、悪いやつじゃないから」
おい! 人見知りする人間がいつ悪い人間扱いされるようになったんだ。そんなことを言う人間がいるのか? 第三者がいなければ、ここで突っ込んでいた。もっとも、人が多くパーティーという場所ではできないけれど。
「千屋さん、人見知りの人をそんなふうに言ったらダメだよ。繊細っていうことだよ。あの、実は俺、先生に会うの2度目なんです」
俺の突っ込みたい気持ちは、目の前の男が代わって言ってくれた。それにしても会うのが2度目? 記憶力は悪い方ではないけれど会った記憶がない。
「あ、会ったって言ってもサイン会なんですけど」
そういうと頬を赤らめた。
サイン会といえば、3作目が賞を受賞し、そのときにサイン会を開いた記憶はあるが、もう随分と前の話だ。
「俺、その頃、画家として全然ダメで結構腐ってたんですよね。そのときに大好きな作家である都谷先生が受賞して。歳もそんなに違うわけじゃないのに違う次元にいるみたいで、すっごく悔しかったんです。それで、いつか先生の本の表紙を描けるようになろうと思ってそれから必死に描きまくったんです。そしたら先日千屋さんが先生の担当してるって知って、会わせて欲しくて頼み込んだんです」
「なにが頼み込んだんだよ。半分脅しだろうがよ」
「えー、人聞き悪いなぁ。対価じゃん」
何やら言い合っているが、どうも普通に話しをしていてと言うわけではなさそうだ。
「何の対価だ、千屋?」
少し声を低くして訊くと千屋がわかりやすくびくりとした。
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