愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

文字の大きさ
10 / 106

新婚旅行らしくない新婚旅行3

しおりを挟む
 翌日21時羽田発のフライトで僕と陸さんはホノルルへと来た。マウイ島にある別荘でも良かったのだけど、僕が本屋さんに行きたいがためにオアフ島のコンドミニアムにして貰ったのだ。僕のわがままだ。
 オアフ島と言ってもワイキキから少し離れたカハラ地区にあるので観光客もワイキキほど多くなく、比較的ゆっくりできる場所だ。
 ダニエル・K・イノウエ国際空港に着くと空港にリムジンで迎えが来ていて、カハラのコンドミニアムまで連れてきてくれた。
 コンドミニアムに着くと陸さんは、

「俺は俺で楽しむからお前はお前で楽しめばいい。本屋に行きたいんだろう」
「わかりました。陸さんの邪魔はしません。あの、食事はどうしますか? 昼はそれぞれ食べるとして朝食と夕食は……」

 日中はそれぞれ楽しむとしても夕食くらいは一緒に食べれるだろうか。それにカハラ地区はワイキキのようにレストランが数多くあるわけではない。カハラモールにレストランはあるけれど、数はそんなにない。となるとコンドミニアムだからスーパーで食材を買って来て作るのが一番いいのだけど、陸さんは僕が作った食事を食べてくれるだろうか。
 僕の提案に陸さんはしばらく考えていた。そして、

「カハラだとレストランが少ないか……」
「はい。だから食材を買って来て作ろうと思うのですが……」
「昼間に夜どうするか連絡する。一応フードコートもあるし、毎日部屋で食べるかはわからない。だからお前も好きに食べろ」
「わかりました……」
「朝はシリアルとフルーツだけでいいから作らなくていい」

 やっぱり夕食もそれぞれ。朝食はシリアルだから作る必要がない。本当に一緒に来ただけであって一緒に食事すら食べられない。それが少し残念だけど仕方がない。1人でレストランはちょっと寂しいし、かといってフードコートも毎食と言うのは飽きてしまうから、夜はほとんどコンドミニアムで自炊して1人で食べることになりそうだ。それで1日でも一緒に食べられたらそれでいい。欲張りになったらダメだ。
 食事のことが決まったら寝室はまた別々。寝室が1つしかなければ同室にもなるけれど、幸か不幸か2ベッドルームなので寝室はわけられる。
 僕は寝室に入ると荷ほどきをする。と言ってもあまり荷物を持つのが好きではないので着替えくらいのものだ。着替えをクローゼットのハンガーにかけると本をバックに入れて出かける準備をする。カフェでコーヒーを飲んで休んでから本屋に行ってなにか面白そうな本がないか探してからフードコートでお昼を済ませてからスーパーで夕食用に食材を買って帰ってこよう。そう決めて陸さんに声をかける。

「あの、出かけてきます。それで夕食の食材を買ってこようと思うんですが、今夜はどうされますか?」
「そうだな。今日は少し疲れたし食べるよ。作って貰えるか?」

 作って貰えるか。
 陸さんが僕にそう言ってくれた! 
 そのことが嬉しくてニヤニヤしそうになるのを必死で堪える。

「はい! 和食と洋食、どちらがいいですか?」
「どっちでもいい。カハラのスーパーだと和食の食材もなかなか揃っていないだろうから」

 確かにその通りだ。そうしたら今日は洋食にして、明日にでもワイキキの日系スーパーにでも買い物に行こうか。お肉や魚、野菜はカハラモールでも買えるが調味料がないと作れない。いや、陸さんが食べてくれるかはわからないけれど。

「じゃあ今日は洋食にします。和食の食材は明日にでも買ってきます」
「わかった。ああ、ちょっと待て」

 出て行こうとする僕を陸さんは呼び止める。なんだろう? そう思っていると陸さんはクレジットカードとお財布を僕に渡してきた。

「これから買い物をするのにこのカードを使うといい。もちろん現金も必要だろうからこの財布にハワイに滞在中の現金としてドルを入れてある。お前が本を買ったり個人的に欲しいものがあってもこれを使え。帰国したら円を渡す」

 「わかりました」

 家族カードを渡されて本当に結婚したんだな、と思う。それがちょっと嬉しい。
 
「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」

 そう言って僕は部屋を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神託にしたがって同居します

温風
BL
ファンタジー世界を舞台にしたオメガバースです。 アルファ騎士×美人ベータ(?)  【人物紹介】 受け:セオ(24歳)この話の主人公。砂漠地帯からの移民で、音楽の才がある。強気無自覚美人。 攻め:エイダン(28歳)王室付き近衛騎士・分隊長。伯爵家の三男でアルファ。料理好き。過労気味。 【あらすじ】 「──とりあえず同居してごらんなさい」 国王陛下から適当な神託を聞かされたセオとエイダン。 この国にはパートナー制度がある。地母神の神託にしたがって、アルファとオメガは番うことを勧められるのだ。 けれどセオはベータで、おまけに移民。本来なら、地位も身分もあるエイダンと番うことはできない。 自分は彼の隣にふさわしくないのになぜ? 神様の勘違いでは? 悩みながらも、セオはエイダンと同居を始めるのだが……。 全11話。初出はpixiv(別名義での投稿)。他サイト様にも投稿しております。 表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。 追記:2024/3/10開催 J. Garden55にて、『神託にしたがって同居します』の同人誌を頒布します。詳しい内容は、近況ボードにまとめます。ご覧頂ければ幸いです!

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

俺の好きな人は誰にでも優しい。

u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。 相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。 でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。 ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。 そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。 彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。 そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。 恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。 ※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。 ※中世ヨーロッパ風学園ものです。 ※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。 ※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。

Ωだから仕方ない。

佳乃
BL
「Ωだから仕方ない」 幼い頃から自分に言い聞かせてきた言葉。 あの人と番うことを願い、あの人と番う日を待ち侘びていた僕は今日もその言葉を呟く。 「Ωだから仕方ない」 そう、Ωだから仕方ないのだから。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

処理中です...