29 / 106
歩み寄り1
しおりを挟む
5日後の金曜日の朝。
ダイニングで朝食を食べていると千景が部屋からでてきた。そして顔を赤くして俺に謝ってくる。きっと俺にヒートだったとわかってしまったのが恥ずかしいのだろう。
「陸さん、お昼を作るって言った翌日に作れなくてごめんなさい。あの……ヒートになってしまって。食事、大丈夫でしたか? もうヒートも終わったので今週末はお昼も夕食も作れるので作らせてください」
案の定ヒートという言葉を言うだけで赤くなってる。俺は千景がオメガだということを知っているんだからヒートを起こすことがあるのなんて百も承知だ。大体、いい歳してヒートというだけで顔を赤くするやつがいるか? 別に抱いてくれと言うわけじゃあるまいし。そんな事くらいで恥ずかしがるのは千景ぐらいじゃないか?
そして食事を作れなかったことを詫びてくる。確かに週末の夜は作って貰っていたし、前日には昼も作ってくれるという話をしていた。けれど、それは俺が千景の親切に甘えているだけで、それだって千景が作れるときだけでいいと話している。俺だって外で食べるときだってあるのだから。それでも謝るのが千景だ。
「ヒートだったんだろう。それなら仕方がないだろう。もう大丈夫なのか?」
「はい。もう終わりました。なので陸さんが家にいらっしゃるのなら今週末はお昼も作らせてくださいね」
こいつは作ってやる、っていう考え方はしないのだなと思う。確かに自分から作らせてくれ、とは言ったのだけど。それでも食事を作るのなんて面倒だろうにと思う。確かに1人分作るのも2人分作るのも大差はないのかもしれないが、それも料理をしない俺には良くわからない。
「今週は出かける予定はないから、作って貰っていいか?」
「はい!」
俺が作って貰って、千景の方が作る方だというのに嬉しそうにするのはどうしてだ? 作るのは楽しいのか? 俺には面倒くさそうにしか思えないが。それでも、それが嬉しいというのならお願いする。
今週は仕事が忙しいので、休日出勤をしようかと思っていたけれど、家で出来る仕事ではあるので家で仕事をしようと思っていたので、外出しろと言われても時間がない。だから作って貰えるのなら助かるのは事実だ。
「なにか食べたいものはありますか?」
「いや、特にない。おまえの気の向いたもので構わない」
「わかりました。では、適当に作らせて貰いますね」
「ああ」
「あ! 時間大丈夫ですか? 寺岡さんが待っているのでは?」
言われて時計を見ると、確かにそろそろ寺岡が来る時間だ。
「もうそんな時間か。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
そう言う千景の顔は明るい。昔からそうだ。俺が思春期を迎えて、こいつと遊ばなくなって、素っ気なくなってからもこいつは俺を見ると嬉しそうに笑っていた。それは今もそうだ。なんでだろうと思う。俺は千景になにかしてやっている、ということはない。ろくに話もしないやつだ。そんなやつと会って何が嬉しいのかとずっと思っていた。そして、それは今も続いている。
と、そこまで考えてふと思った。ヒートは性行為に明け暮れてしまう時期だろう。それを自分でなんとかするのは辛いのではないだろうか。だからヒート期にセックスをしたくてそういう店に行っているやつもいると聞く。まさか千景がそんな店に行くことはないだろうし、実際昼間はどうしていたか知らないけれど、朝晩は部屋から出ていなかった。
ということは自分でなんとかしていたのだろうか。俺と結婚しているのだから、抱いてくれとよく言わなかったなと思う。まぁ、ヒートという単語を言うだけで恥ずかしがるやつだから、どう頑張ったって抱いてくれと言えないだろうけれど。でも、万が一抱いてくれと言われたら俺はどうするだろうか。
ダイニングで朝食を食べていると千景が部屋からでてきた。そして顔を赤くして俺に謝ってくる。きっと俺にヒートだったとわかってしまったのが恥ずかしいのだろう。
「陸さん、お昼を作るって言った翌日に作れなくてごめんなさい。あの……ヒートになってしまって。食事、大丈夫でしたか? もうヒートも終わったので今週末はお昼も夕食も作れるので作らせてください」
案の定ヒートという言葉を言うだけで赤くなってる。俺は千景がオメガだということを知っているんだからヒートを起こすことがあるのなんて百も承知だ。大体、いい歳してヒートというだけで顔を赤くするやつがいるか? 別に抱いてくれと言うわけじゃあるまいし。そんな事くらいで恥ずかしがるのは千景ぐらいじゃないか?
そして食事を作れなかったことを詫びてくる。確かに週末の夜は作って貰っていたし、前日には昼も作ってくれるという話をしていた。けれど、それは俺が千景の親切に甘えているだけで、それだって千景が作れるときだけでいいと話している。俺だって外で食べるときだってあるのだから。それでも謝るのが千景だ。
「ヒートだったんだろう。それなら仕方がないだろう。もう大丈夫なのか?」
「はい。もう終わりました。なので陸さんが家にいらっしゃるのなら今週末はお昼も作らせてくださいね」
こいつは作ってやる、っていう考え方はしないのだなと思う。確かに自分から作らせてくれ、とは言ったのだけど。それでも食事を作るのなんて面倒だろうにと思う。確かに1人分作るのも2人分作るのも大差はないのかもしれないが、それも料理をしない俺には良くわからない。
「今週は出かける予定はないから、作って貰っていいか?」
「はい!」
俺が作って貰って、千景の方が作る方だというのに嬉しそうにするのはどうしてだ? 作るのは楽しいのか? 俺には面倒くさそうにしか思えないが。それでも、それが嬉しいというのならお願いする。
今週は仕事が忙しいので、休日出勤をしようかと思っていたけれど、家で出来る仕事ではあるので家で仕事をしようと思っていたので、外出しろと言われても時間がない。だから作って貰えるのなら助かるのは事実だ。
「なにか食べたいものはありますか?」
「いや、特にない。おまえの気の向いたもので構わない」
「わかりました。では、適当に作らせて貰いますね」
「ああ」
「あ! 時間大丈夫ですか? 寺岡さんが待っているのでは?」
言われて時計を見ると、確かにそろそろ寺岡が来る時間だ。
「もうそんな時間か。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
そう言う千景の顔は明るい。昔からそうだ。俺が思春期を迎えて、こいつと遊ばなくなって、素っ気なくなってからもこいつは俺を見ると嬉しそうに笑っていた。それは今もそうだ。なんでだろうと思う。俺は千景になにかしてやっている、ということはない。ろくに話もしないやつだ。そんなやつと会って何が嬉しいのかとずっと思っていた。そして、それは今も続いている。
と、そこまで考えてふと思った。ヒートは性行為に明け暮れてしまう時期だろう。それを自分でなんとかするのは辛いのではないだろうか。だからヒート期にセックスをしたくてそういう店に行っているやつもいると聞く。まさか千景がそんな店に行くことはないだろうし、実際昼間はどうしていたか知らないけれど、朝晩は部屋から出ていなかった。
ということは自分でなんとかしていたのだろうか。俺と結婚しているのだから、抱いてくれとよく言わなかったなと思う。まぁ、ヒートという単語を言うだけで恥ずかしがるやつだから、どう頑張ったって抱いてくれと言えないだろうけれど。でも、万が一抱いてくれと言われたら俺はどうするだろうか。
78
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた
いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲
捨てられたΩの末路は悲惨だ。
Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。
僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。
いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
生き急ぐオメガの献身
雨宮里玖
BL
美貌オメガのシノンは、辺境の副将軍ヘリオスのもとに嫁ぐことになった。
実はヘリオスは、昔、番になろうと約束したアルファだ。その約束を果たすべく求婚したのだが、ヘリオスはシノンのことなどまったく相手にしてくれない。
こうなることは最初からわかっていた。
それでもあなたのそばにいさせてほしい。どうせすぐにいなくなる。それまでの間、一緒にいられたら充分だ——。
健気オメガの切ない献身愛ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる