愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

文字の大きさ
40 / 106

もやもや5

しおりを挟む
「はぁーー。だから止めたのに」

 電話の向こうの来生が言う。お昼を食べ終わって来生にメッセージを送ったら電話がかかってきたので二日酔いで目が覚めたこと。昨日の記憶がないことを正直に話した。そうしたらため息をつかれてしまった。そうだよね。来生は止めてたんだし。

「うん。ごめん。で、クラス会のことも途中から覚えてないんだけど、僕、なにかしちゃったりはしてない?」
「それは大丈夫。なにかする前に寝ちゃってたから」
「え! 僕、寝ちゃったの?」

 寝ちゃったら、それは記憶ないだろうなと思う。え? でも、僕、きちんと家に帰って来てるよ? そう疑問に思っていると来生が言う。

「クラス会が終わるまでは寝かせておいて、終わったら俺がタクシーで送っていったから」

 え! 来生に送って貰ったの? それは陸さんの前に来生に迷惑をかけてる。確かに来生も今は都内在住だけど、僕の家とは途中から方向が違う。

「迷惑かけちゃってたんだね。ごめんね、逆方向なのに」
「まぁ俺はタクシー代も貰っちゃったからいいけどさ。それより陸さんだっけ? 心配してたみたいだぞ。きちんと謝ったか?」
「え? 陸さんに会ったの?」
「それは会うさ。だって帰るときもほぼ寝てたんだぞ」
「あ、そうか」

 寝てたのなら、1人でタクシーなんて乗れない。誰かに支えて貰わないと。そこで来生に迷惑をかけたのはわかるけど、陸さんに心配かけちゃったのか。それは温度が昨日と違っても当然だ。確かに翌日が休みとは言え、何時に帰ってくるかわからない僕を待っていたなんて疲れただろうし、心配もかけただろう。昨日だって仕事で疲れてるのに。あぁ、ほんとに僕は馬鹿だ。昨日にタイムスリップできるなら、昨日の自分に言いたい。来生にも陸さんにも迷惑かけるからお酒はやめておけって。

「天谷の顔を見たとき、ホッとした顔をしてたからな。で、送っていった俺にタクシー代もくれてさ。すごい気を使わせたなって。天谷からも言っておいて、ありがとうございますって」
「あ、うん。まずは僕が謝ってからだね」
「怒られたか?」
「ううん。その前に陸さんの纏う空気が冷たい」
「あーー。それはな……」
「うん。僕が悪いんだけどね」

 やっぱりきちんと昨日のこと謝って、それで夜はしっかりと美味しいものを作りたい。そう思っていると来生が続ける。

「でも、俺は安心したよ。天谷が心のない結婚だって言ってたから、さぞかし冷たいのかと思ったら心配した顔でロビーで待ってたんだぞ」

 え? 陸さん、ロビーで待っててくれたの? 僕が帰り遅かったから。やっぱり陸さんって優しいな。って、だから今日は昨日の朝のような温かい温度がなかったんだなって当然だ。

「だからまずはきちんと謝れよ?」
「うん。そうする」
「でさ、今度は2人で会おうぜ。今度はアルコール抜きでさ」
「うん!」

 来生にだって迷惑かけたのにそう言ってくれることが嬉しくて、言葉が弾んでしまった。僕は恵まれてるんだなとしみじみ思う。でも、ほんと今度は絶対にアルコールは飲まない。これ以上陸さんに迷惑をかけたくはない。

「またメッセージ送るよ。じゃ、きちんと謝れよ」
「うん。ありがとう。またね」

 そう言って電話を切るとリビングに行くと、まだ陸さんはソファーにいた。ローテーブルにはカップはないからコーヒーはないみたいだ。なので陸さんの好きなブルマンを淹れて、陸さんに謝る。

「陸さん。あの、昨日は迷惑をかけてしまったようでごめんなさい。今後気をつけます。後、来生がタクシー代をありがとうございますって言ってました」
「彼も方向が違うのにわざわざ送って来てくれたからな。タクシー代は当然だ」

 ほんとだよ。ほんとなら僕が出すべきものだ。

「来生にはきちんと謝りました。だから陸さんにも謝りたくて……」
「俺のことはいい」

 陸さんはそれ以上なにも言ってくれなくて、僕は落ち込んだ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

俺の好きな人は誰にでも優しい。

u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。 相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。 でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。 ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。 そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。 彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。 そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。 恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。 ※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。 ※中世ヨーロッパ風学園ものです。 ※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。 ※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

処理中です...