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もやもや6
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仕事を終えて家に帰ると家の中は真っ暗だった。結婚してから今まで真っ暗な家に帰ったことは千景のヒートのときぐらいだ。何時に帰ろうと家の中の電気は明るかった。間違えて電気を消して寝てしまったんだろうか。クラス会ならお酒も出るから酔ってつい消してしまったのかもしれない。そう思って玄関の明かりをつけると、そこに千景の靴はなかった。まさか、まだ帰っていないのか? 腕時計を見ると23時を回っている。それなら、もうそろそろ帰ってくるだろうか。タクシーで帰ってこいとは言ったけれど、あいつのことだから電車で帰ってくることもなくはない。終電にはまだまだ時間はあるけれど、まだ帰ってきていないことが心配で鞄をソファーに置いてから1階ロビーでに降りる。自分でなにをしているんだと思うけれど、家にいても落ち着かなさそうなので、それならここで待っていた方がいい。
そうやってロビーで待つこと30分。さすがに疲れたなと思ったときにマンションの前にタクシーが止まった。さっき止まったタクシーは千景ではなかったが、今度は千景だろうか。そう思って目を凝らすと1人の若い男が、正体をなくしている人間をかついで降りてくる。顔が下を向いているからハッキリとは見えないけれど、あれは千景だ。そう思って立ち上がり、マンションの入り口を開ける。あれでは鍵を出すのも大変だろう。
「千景」
そう呼ぶと、若い男が俺を見る。
「あの、宮村さん、ですよね? 俺、天谷、あ、千景の中・高のクラスメートで来生と言います。お酒を飲んだら寝ちゃったみたいなのでここまで送ってきました」
酒を飲んで寝たのか。一緒に飲んだことはないからわからないが、酒には弱いのだろう。そう言えば純一さんは正月でも酒は飲まなかったなと思い出す。あれは親子して酒に弱いからだろうか。
「わざわざ送って貰ってありがとう。君は方向は同じだったのか?」
「あー、いえ……」
言いよどんでいるところを見ると方向は違ったのだろう。それをわざわざここまで送ってきてくれたのだ。それならば、とポケットから財布を出す。
「これで足りるかはわからないが、ここまで送ってくれて感謝する」
「あ、こんなにいいのに」
そう言って返そうとする彼に言った。
「正体をなくした人間をここまで連れてくるのは大変だっただろう。だから多少多くても貰ってくれ。それより、申し訳ないが上まで一緒に連れて行ってくれないだろうか。鍵をあけるのにちょっと」
「あ、はい。じゃあ行きましょう」
そう言って家まで一緒に連れて行ってくれる彼に感謝した。わざわざ送ってきてくれたということは一番親しい友人だったのだろうか。
「今日、学生時代に仲の良かったメンバーで天谷が幸せみたいで、つい飲ませてしまったんです。止めきれずに申し訳ありませんでした」
「いや、君が謝ることじゃない」
お正月でも飲まなかった千景が飲んだということはきっと楽しかったのだろう。それでも、安心しきって来生くんに寄りかかっている姿を見てどうももやもやする。なんでだろう。それより今は千景を家に連れていかなくてはいけない。2人がかりで家まで連れて行き、ソファーに座らせる。
「じゃあ、俺、ここで。タクシー待たせているので」
「そうか。なのにここまでわざわざ申し訳なかった。ありがとう。今後共仲良くしてくれたら嬉しい」
「もちろんです。じゃあお休みなさい」
そう言って帰っていく彼の後ろ姿を見送り、リビングのソファーを見ると千景はまだ寝ている。このまま転がしているわけにはいかないので、今まで開けたことのない千景の部屋を開け、千景を抱きかかえて連れて行く。こんなに正体を失うくらい飲んだということはよほど楽しかったのだろう。そうは思うけれど、どこか気に入らない自分がいた。
そうやってロビーで待つこと30分。さすがに疲れたなと思ったときにマンションの前にタクシーが止まった。さっき止まったタクシーは千景ではなかったが、今度は千景だろうか。そう思って目を凝らすと1人の若い男が、正体をなくしている人間をかついで降りてくる。顔が下を向いているからハッキリとは見えないけれど、あれは千景だ。そう思って立ち上がり、マンションの入り口を開ける。あれでは鍵を出すのも大変だろう。
「千景」
そう呼ぶと、若い男が俺を見る。
「あの、宮村さん、ですよね? 俺、天谷、あ、千景の中・高のクラスメートで来生と言います。お酒を飲んだら寝ちゃったみたいなのでここまで送ってきました」
酒を飲んで寝たのか。一緒に飲んだことはないからわからないが、酒には弱いのだろう。そう言えば純一さんは正月でも酒は飲まなかったなと思い出す。あれは親子して酒に弱いからだろうか。
「わざわざ送って貰ってありがとう。君は方向は同じだったのか?」
「あー、いえ……」
言いよどんでいるところを見ると方向は違ったのだろう。それをわざわざここまで送ってきてくれたのだ。それならば、とポケットから財布を出す。
「これで足りるかはわからないが、ここまで送ってくれて感謝する」
「あ、こんなにいいのに」
そう言って返そうとする彼に言った。
「正体をなくした人間をここまで連れてくるのは大変だっただろう。だから多少多くても貰ってくれ。それより、申し訳ないが上まで一緒に連れて行ってくれないだろうか。鍵をあけるのにちょっと」
「あ、はい。じゃあ行きましょう」
そう言って家まで一緒に連れて行ってくれる彼に感謝した。わざわざ送ってきてくれたということは一番親しい友人だったのだろうか。
「今日、学生時代に仲の良かったメンバーで天谷が幸せみたいで、つい飲ませてしまったんです。止めきれずに申し訳ありませんでした」
「いや、君が謝ることじゃない」
お正月でも飲まなかった千景が飲んだということはきっと楽しかったのだろう。それでも、安心しきって来生くんに寄りかかっている姿を見てどうももやもやする。なんでだろう。それより今は千景を家に連れていかなくてはいけない。2人がかりで家まで連れて行き、ソファーに座らせる。
「じゃあ、俺、ここで。タクシー待たせているので」
「そうか。なのにここまでわざわざ申し訳なかった。ありがとう。今後共仲良くしてくれたら嬉しい」
「もちろんです。じゃあお休みなさい」
そう言って帰っていく彼の後ろ姿を見送り、リビングのソファーを見ると千景はまだ寝ている。このまま転がしているわけにはいかないので、今まで開けたことのない千景の部屋を開け、千景を抱きかかえて連れて行く。こんなに正体を失うくらい飲んだということはよほど楽しかったのだろう。そうは思うけれど、どこか気に入らない自分がいた。
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