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デートみたいで4
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車は五反田から首都高に入り、南下していく。どこをどう走っているのか僕にはわからないけれど、首都高と東名高速だけはわかった。土曜日の高速は車が多い。でも、止まってしまうほどでもなく、順調に進んで行く。
ナビは道順だけじゃなく、混雑状況まで知らせてくれるのだとそのとき初めて知った。車を運転する人なら当然知っていることなのかもしれないけれど、車を運転しようにも免許もない僕には運転のしようがない。
「免許、取ろうかな……」
僕が小さくポツリとこぼした呟きは陸さんに聞こえたようだ。
「免許ないのか」
「はい。普段とくに車が必要と思われることがなかったし、お父さんが危ないからと反対していたので」
そう言うと陸さんは小さく笑って言った。
「確かにお前だと危なっかしいな。で、今は車が必要か? 必要なようなら教習所に通うのもいいと思うが。でも、たまになら俺が車を出す」
え? 今、ちょっと笑ったよね? で、俺が車を出すって言った? たまに車が必要だなと思ったときに陸さんが? 陸さんをタクシー代わりに使うなんて贅沢、僕にはできないよ。それに、特に車が必要とは思っていない。
マンションは立地のいいところにあるから、都心部にも出やすいし、神奈川にも出やすい。電車も何本か乗り入れているから特に車を必要としていることはない。それどころか、都心に出かけるのに車でなんて出かけたら駐車場に困る。
「いえ、特に必要としていることはないんですけど、あったらいいのかな? というレベルで」
「週末なら車を出すから言え。平日ならタクシーを使えばいい」
週末なら車を出す、なんて言葉が陸さんから出たことに僕は驚いた。だって、結婚したときはお互いに干渉ナシでって言ってた。そうなれば当然、僕が車が必要だと思ったときは自分で免許を取りに行くかタクシーを使うかするしかない。どうしたって陸さんに車を出して貰うだなんてあり得ないことだ。でも、陸さんは車を出すと言った。それも2度も。その言葉に陸さんとの距離がほんの少し近づいた気がした。
でも、そこで陸さんの好きな人のことを思い出す。陸さんには好きな人がいると思っていたけど、付き合ってはいないのだろうか? 週末に会っている素振りもないし。もしかしたら別れた? それとも好きな人がいると思っていたのは僕の気のせい? どう考えたって僕にはわからないことだけど。それに考えると少し悲しいので僕は黙って窓の外を見た。
左手側には海が広がっている。海なんて久しぶりに見るのでテンションが上がる。そんな調子で1人で窓の外を見てわくわくしていたら陸さんの声が聞こえた。
「海が好きか?」
隣で見ていてもわかるくらいだっただろか、僕は。ちょっと恥ずかしくて顔を赤くしてしまう。
「好きです」
「近くだと港になるからな。海とは言えないか。お台場にしたってビルの合間だからな」
そうなんだ。一番近くは海外との輸出入のための倉庫街だし、少し足を伸ばしたお台場だとビルの谷間だから海を見たと言う気がしない。ここみたいに自然の中の海が好きだ。
「海が好きなら、ここはベストチョイスだったな。ずっと海を見ていられるぞ」
そうなの? ずっと海を見ていられるって浜辺にずっといるわけではないだろう。もっとも熱海は海に面したところだからちょっと行けば海が見られるのだろう。そう考えていると車は駐車場の中に入っていく。もう着いたのだろうか。
「着いたぞ。今日はここでゆっくりしろ。平日はわからないが、週末はいつも忙しくしているからな」
看板を見るとオーシャンスパと書かれていた。こんな海の前にスパがあるなんて僕はびっくりして陸さんを見る。
「今日は2人とも休みだ。なにもしなくていい。お前もたまには休め。働きすぎだ」
陸さんが働きすぎなのはわかる。でも僕まで……。陸さんは僕のことも見ているんだなと思う。働きすぎという言葉が出るほどには見てくれているんだ。そうわかると僕は泣きそうになる。やっぱり陸さんは優しい。そう思った。
ナビは道順だけじゃなく、混雑状況まで知らせてくれるのだとそのとき初めて知った。車を運転する人なら当然知っていることなのかもしれないけれど、車を運転しようにも免許もない僕には運転のしようがない。
「免許、取ろうかな……」
僕が小さくポツリとこぼした呟きは陸さんに聞こえたようだ。
「免許ないのか」
「はい。普段とくに車が必要と思われることがなかったし、お父さんが危ないからと反対していたので」
そう言うと陸さんは小さく笑って言った。
「確かにお前だと危なっかしいな。で、今は車が必要か? 必要なようなら教習所に通うのもいいと思うが。でも、たまになら俺が車を出す」
え? 今、ちょっと笑ったよね? で、俺が車を出すって言った? たまに車が必要だなと思ったときに陸さんが? 陸さんをタクシー代わりに使うなんて贅沢、僕にはできないよ。それに、特に車が必要とは思っていない。
マンションは立地のいいところにあるから、都心部にも出やすいし、神奈川にも出やすい。電車も何本か乗り入れているから特に車を必要としていることはない。それどころか、都心に出かけるのに車でなんて出かけたら駐車場に困る。
「いえ、特に必要としていることはないんですけど、あったらいいのかな? というレベルで」
「週末なら車を出すから言え。平日ならタクシーを使えばいい」
週末なら車を出す、なんて言葉が陸さんから出たことに僕は驚いた。だって、結婚したときはお互いに干渉ナシでって言ってた。そうなれば当然、僕が車が必要だと思ったときは自分で免許を取りに行くかタクシーを使うかするしかない。どうしたって陸さんに車を出して貰うだなんてあり得ないことだ。でも、陸さんは車を出すと言った。それも2度も。その言葉に陸さんとの距離がほんの少し近づいた気がした。
でも、そこで陸さんの好きな人のことを思い出す。陸さんには好きな人がいると思っていたけど、付き合ってはいないのだろうか? 週末に会っている素振りもないし。もしかしたら別れた? それとも好きな人がいると思っていたのは僕の気のせい? どう考えたって僕にはわからないことだけど。それに考えると少し悲しいので僕は黙って窓の外を見た。
左手側には海が広がっている。海なんて久しぶりに見るのでテンションが上がる。そんな調子で1人で窓の外を見てわくわくしていたら陸さんの声が聞こえた。
「海が好きか?」
隣で見ていてもわかるくらいだっただろか、僕は。ちょっと恥ずかしくて顔を赤くしてしまう。
「好きです」
「近くだと港になるからな。海とは言えないか。お台場にしたってビルの合間だからな」
そうなんだ。一番近くは海外との輸出入のための倉庫街だし、少し足を伸ばしたお台場だとビルの谷間だから海を見たと言う気がしない。ここみたいに自然の中の海が好きだ。
「海が好きなら、ここはベストチョイスだったな。ずっと海を見ていられるぞ」
そうなの? ずっと海を見ていられるって浜辺にずっといるわけではないだろう。もっとも熱海は海に面したところだからちょっと行けば海が見られるのだろう。そう考えていると車は駐車場の中に入っていく。もう着いたのだろうか。
「着いたぞ。今日はここでゆっくりしろ。平日はわからないが、週末はいつも忙しくしているからな」
看板を見るとオーシャンスパと書かれていた。こんな海の前にスパがあるなんて僕はびっくりして陸さんを見る。
「今日は2人とも休みだ。なにもしなくていい。お前もたまには休め。働きすぎだ」
陸さんが働きすぎなのはわかる。でも僕まで……。陸さんは僕のことも見ているんだなと思う。働きすぎという言葉が出るほどには見てくれているんだ。そうわかると僕は泣きそうになる。やっぱり陸さんは優しい。そう思った。
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