愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

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デートみたいで5

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 駐車場から建物の中に入り2階でチェックインをし、館内着とタオルの入ったバッグを受け取る。そしてエレベーターで5階まで上がり、ロッカールームで館内着に着替える。

「ランチは予約を取ってある」

 え? 予約なんて取ってくれていたの? 僕はなにもわからないので前を歩く陸さんの後をついて行く。
 エレベーターで3階に降り、扉を開けるとそこは海を一望できる広いレストランがあった。

「サラダやパン、飲み物は食べ放題だ。メインメニューは勝手だが真鯛のソテーを予約してある」

 真鯛のソテー。それで陸さんが海鮮物は大丈夫か聞いたんだな。
 通された席は外のテラス席で何にも邪魔されることなく海を真正面に見れる席だ。確かに館内席でも海は見られるけれど、何にも邪魔されないのはテラス席だけだ。
 こんなに良い席でランチが食べられるなんて最高だ。しかも海のあるここで海鮮だなんて新鮮に決まってる。ソテーは家でも出来る。でも、鮮度はこことは大違いだ。こんなところで食べられるなんて贅沢だ。

「陸さん。ありがとうございます」
「礼を言う必要はない。こちらが礼を言わなくてはいけない立場だ」

 やっぱり陸さんは優しい。それは子供の頃からなにも変わらない。だから僕は陸さんが好きなんだ。憧れても当然だろう。こんなにスマートにエスコートしちゃう人なんだ。

「サラダバーにでも行くか」

 そこでふと気づく。僕、お財布持って来てないし、陸さんも持っていない。お会計はどうするんだろう。

「陸さん、お会計はどうするんですか? お財布持って来てませんけど。持ってきた方がいいですよね?」

 必要なら急いで取りに行こう。そう思っていると陸さんは小さく笑って手首にはめたリストバンドを指指す。

「リストバンドで精算する。それはここだけじゃない。館内の有料のものは全てこのリストバンド精算だ。そして帰りに窓口で支払う」

 あ、そうなのか。それでリストバンドは失くすなって言われたのか。全くスマートじゃない自分につい恥ずかしくなる。どこの田舎者なんだろう。でも、こんなところ来たのは初めてなんだ。家族でくることはなかったし、陸さんとの結婚が決まっていた僕は誰かと付き合ったりしたことはない。だけど陸さんは慣れているみたいだし、やっぱり付き合っていた人いたよね?
 そう考えると少し胸が痛かったけれど、陸さんに呼ばれて思考を捨て去る。

「だから、ほらサラダバーに行くぞ」

 そう促されて僕は席を立って陸さんの後をついて行く。建物の中に入った真ん中らへんにあるサラダバーは野菜も新鮮でパンやスープの種類も豊富だった。こんなに沢山あったらどれにしようか迷ってしまう。

 僕はクロワッサンを選び、オニオンスープを取って1度席に戻る。そして手に持っていたものをテーブルに置くと、サラダと飲み物を取るのに再度サラダバーへと行く。
 サラダバーの野菜を見るととても新鮮なので美味しそうだ。やっぱり都内のスーパーで買うのとは鮮度が違うなと思って見る。
 フルーツ多めのサラダとアイスコーヒーを手に席に戻ると陸さんは既に席に戻っていた。僕も陸さんの向かいの席に座るとちょうどメインメニューが運ばれてきた。
 真鯛のソテーだけど、端には春野菜とあさりもついていた。それを見て僕はテンションが上がる。鮮度もだけど、盛り付けがとてもしゃれていて、こういうのは外でしか食べられないなと思う。いや、やろうと思えばできるけれど、大体家でフランス料理なんて作らない。

「美味しそう!」
「ああ。美味そうだな」
「いただきます!」

 そう言ってから、まずはサラダに手をつけた。
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