切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜

水無瀬 蒼

文字の大きさ
17 / 74

霧雨が降るように6

「でもさ、ほんとに大輝でいいのか?」
「大輝でいいんじゃなくて大輝がいいんだよ」
「ほんと……。湊斗も一途だな」
「大輝だからだよ。大輝は嘘つかないから。だから信じられる。それは涼だって幼馴染みなんだからわかってるだろ」
「そうだけどさ。でも、俺は大輝の友人でもあるけど同時に湊斗の友人でもあるんだよ。友人が辛い思いしてるのを見ていられないよ」
「ありがと。でも、俺は大丈夫だよ。さすがにそろそろ現役引退の頃だろうし。だから残り何年になるかわからないけど、ここまで待ってた年数よりは短いと思うから」
「湊斗も可愛い顔して頑固だよな。でもさ、そこまで言ってくれる人であれば考えてみたっていいんじゃないかと俺は思うよ。大輝が心変わりしているかもしれないんだぞ」
「大輝はそんな人じゃないよ」

 そうは言ったものの不安がないわけじゃない。もしかしたら現地で綺麗な人と出会って付き合っているかもしれない。もう俺のことなんてなんとも思ってないかもしれない。でも、信じるしかないじゃないか。

「とりあえず、その優馬さんっていう人のこと知ってみてもいいんじゃない?」

 涼のその言葉を聞きながら最後の一口を飲みきり、同じく空になった涼のカップも回収し洗い物を始める。

「知ったとしても大輝しかいないと思うよ」
「意外と今大輝に会ったら幻滅するかもしれないだろ」
「だとしたらそのときに考えるよ」
「自分が幸せになることを考えろよ」
「うん……」

 この手の話しは何度しても平行線だ。大輝。迎えに来てくれるよな? 今年来てくれる? 俺たちももう27歳だ。そろそろ現役引退だろう。

「でもさ、涼はそんなに大輝が許せない?」
「そりゃそうだろ。だって会えないのは仕方ないにしてもさ、連絡のひとつもよこさないとか俺には理解不能。友人だからこそ許せない。まして湊斗に辛い思いさせてるんだし」
「だけど、もう現役引退も近いんじゃないかな」
「確かにな。今年か来年か。まさか30歳過ぎてまではやらないよな?」
「どうかわからないけど、30歳にしたって後3年だよ。ここまで待ったこと考えたら、あっという間だよ」

 そう。ここまで待ってた年数の方が長いんだ。だから迎えに来てくれるのは待てる。
 ただ、俺がひとつ怖いことはと言えば、大輝が心変わりしていないか、ということだ。俺じゃない他の誰かを好きになっているかもしれないし、それはないにしてももう俺に対しての気持ちが消えてなくなっているかもしれない。それだけが不安だ。
 そしてそんな気持ちが顔に出ていたんだろう。涼が言った。

「不安が残るなら、ほんとにその優馬さんのこと考えてみた方がいいと思う」
「そんなの優馬さんに失礼だよ」
「湊斗。そんなことで嫌がる相手なら、それもやめた方がいいけどな。俺はさ、大輝に幸せでいて欲しいと思うけど、湊斗に対しても思うんだよ。で、この件に関しては俺は大輝のやり方が気に入らないだけ」

 俺に幸せでいて欲しいと言ってくれる涼に対してありがたいと思う。

「大丈夫。今、幸せとはさすがに言えないけど、大輝のことは信じてる。ただそれだけだよ」
「そっか。そこまで言うなら俺はもうなにも言わないよ。でも、ほんとに辛くなったらその優馬さんにしとけ。って、俺、こんど早い時間に来てみよう。優馬さんって人に会ってみたい」
「穏やかで優しいイケメンだよ。どことなく優雅で素敵な人」
「へー。余計に会ってみたい。今度早くに来るわ」
「うん、待ってる」
「そのときは紹介してくれ」
「もちろん」

 涼はきっと優馬さんのことを気に入ると思う。というか優馬さんのことを気に入らないという人はいるんだろうか。仕事をしているときはどうかわからないけど、オフではそう感じる。
 もし大輝がいなかったら、きっと嬉しいことなんだよな。そう思うと優馬さんに申し訳なく思った。
 
感想 2

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

伝導率30%の体温

温 詩夏
BL
良太は優しくて真面目な、普通の会社員。 一人で生きると決めていたけれど、同期だった修真に恋をした。 好きだと気づくまでに時間がかかって、 好きだと分かってからも心が追いつくのには時間がかかる。 そんな、初めての恋の温度に静かに触れていく物語です。 * 読んでくれる方にこの子の背中をそっと見守ってもらえたら嬉しいです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

この冬を超えたら恋でいい

天気
BL
本編完結済み 夜の街で、凪は人生の底にいた。 古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。 そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。 偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。 事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。 一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。 危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。 冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。 大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。 しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。 それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。 一方、鷹宮は気づいてしまう。 凪が笑うだけで、胸が満たされることに。 そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、 凪を遠ざけてしまう。 近づきたい。 けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。 互いを思うほど、すれ違いは深くなる。 2人はこの冬を越えることができるのかーー

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中