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沈黙の婚約2
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午後。アフタヌーンティーの時間に近くなった頃、リシア嬢が来た。
「ごきげんよう。レオニス様」
笑顔を顔に貼り付けて挨拶をしてくる。綺麗なドレスを着て、アクセサリーも身につけて、それでもちっとも綺麗に見えないのは意地の悪そうな表情のせいだろうか。これでもっと清楚であれば、婚約だってそんなに嫌がらずに受け入れただろうに、リシア嬢は性格がいいとはお世辞にも言えない。ヴァルター侯爵の姪だということだが、リシア嬢の両親がどんな方かは存じ上げないが、ヴァルター侯爵に似ているのではないかと思っている。そんなリシア嬢に意地の悪いことを思ってしまうのは、私も性格が悪いということか。でも、とてももてなす気はないのだから仕方がない。
「お久しぶりですね。何ヶ月ぶりになるでしょうか」
「半年ぐらいかしら。これでもなにかと忙しくて、なかなかこちらへ顔を出すことができなくて」
何が忙しいだ。何をしているわけでもなく、毎日お茶をしているだけで忙しいわけもないだろう。そんなことを思いながら相手をしていると、ニコラスが紅茶と焼き菓子を持ってきた。きっと、午後に来るというのでアベルが作ってくれたのだろう。体は大柄だが、繊細で細かいところに気のきく男だから。
「私も貴族院で忙しくてなかなかそちらへ伺うこともできず申し訳ない」
「貴族院は荒れていると叔父に聞きましてよ」
法案を提出しているのは私だけれど、貴族院を荒らしているのは反対派が牙を剥いてきているからだと言いたい。とにかく気性が荒いのが問題だ。貴族らしくもっと紳士的にできないのかと思ってしまうが、できないのだろう。侯爵という貴族の中でも地位が高いにもかかわらず下位貴族と変わらない。いや、それ以下かもしれない。
ところで急に来たわけはなんだ? 早く用を済ませて早く帰って欲しい。名ばかり婚約者とはいえ、冷たいことを思っている自覚はあるが、こんなことをしている暇があるのならタクヤといたい。
「ところで今日はなにかありましたか?」
自分から用事を言い出さないので、冷たいようだが、こちらから切り出す。
「あら。婚約者のところへ来るのに用事が必要かしら? でも、そうね。今日は異世界からの者に挨拶に来たんですわ」
やはりタクヤのことが漏れている。ヴァルター侯爵が来たときはタクヤには一目あっただけで、異世界人とは知らない。知っているとすれば、私とタクヤを襲った賊、そしてそれを雇ったオマンド子爵と、オマンド子爵から報告を受けたヴァルター侯爵だけだ。つまり、あの賊が絡まなければ知るはずもないことだ。語るに落ちるとはこのことか。
「なぜ、ここに異世界の者がいると?」
「え? それは、叔父から聞いて」
「ヴァルター侯爵から? 私は侯爵にはお話をしていないのですが不思議ですね」
「そ、そうかしら? では他の人だったかしら?」
「私は異世界の者が屋敷にいると話したことはないんですよ、誰に対しても」
「……」
ほんとに頭の悪い女だなと思う。もっとうまく話さないとダメだろう、と私が駄目だしをしてしまう。
「と、とにかく会いたいんですわ」
嘘がうまくつけずに、真正面から来たか。
「あなたが会う必要はありますか?」
「あるわよ! だって結婚するんですもの」
驚いた。こんなにお互いに人として好意すら持てないのに結婚する気でいるのか。ヴァルター侯爵としては私を押さえつけるつもりだろうし、リシア嬢にとっては私の金目当てだろう。貴族としては侯爵家には敵わないものの、財産はあると思っている。だからリシア嬢としてはそれしか目当てがないと思っている。
「今、腕に酷い怪我をしていて、あまり本調子ではないので、また後日にしていただきたいのですが」
「一目会って挨拶をするだけですのよ。それくらい良いのではないかしら? 今日、ご挨拶できないのなら、また日を改めて伺いますけれど」
つまり会うまでは何回でも来るということか。しつこい。タクヤに会わせたくはないけれど、何回も来られるのも迷惑なので、仕方ない、タクヤを呼ぶか。
「ニコラス。タクヤを連れてきてくれ。リシア嬢が挨拶をしたいようだ」
「かしこまりました」
「ああ、猫も一緒に」
「かしこまりました」
そうしてニコラスにタクヤを呼んで来て貰うと、数分でタクヤはニコラスと共に来た。その顔は強張っていた。そうだろう。名ばかりとはいえ私の婚約者が会いたいなどと言うのだから。ルナも一緒にと言ったのは、神の使いを連れた救世主だという無言のアピールだ。
「あの……」
「ああ、あなたが異世界の者なの? 普通なのね。なに? 黒猫なんて連れて」
「彼は黒猫を連れて来たのですよ」
「……黒猫を連れてくるなんて生意気な……」
その言葉は小さく呟いたものだろうが、私にははっきり聞こえた。意地の悪い性格が丸見えだ。
「彼があなたが会いたがった来訪者のタクヤですよ」
「……はじめまして。タクヤ・キヨイシと申します」
「私はレオニス様の婚約者のリシアと申します。これからよろしくお願いしますわ。で、異世界の者ってなにをするのかしら? 救世主とか言われていますけれど。特に仕事もせずにふらふらしているのかしら?」
「あの……」
「リシア嬢。彼は神の使いを連れた救世主です。存在しているだけで十分なのですよ。タクヤ。急に呼び出して済まなかった。戻っていい」
「はい。では、失礼します」
私は挨拶だけさせると、すぐにタクヤを返した。でもリシア嬢はそれが面白くなかったみたいだ。けれど、タクヤに会ってとりあえず満足したらしく、少しすると帰っていった。
「ごきげんよう。レオニス様」
笑顔を顔に貼り付けて挨拶をしてくる。綺麗なドレスを着て、アクセサリーも身につけて、それでもちっとも綺麗に見えないのは意地の悪そうな表情のせいだろうか。これでもっと清楚であれば、婚約だってそんなに嫌がらずに受け入れただろうに、リシア嬢は性格がいいとはお世辞にも言えない。ヴァルター侯爵の姪だということだが、リシア嬢の両親がどんな方かは存じ上げないが、ヴァルター侯爵に似ているのではないかと思っている。そんなリシア嬢に意地の悪いことを思ってしまうのは、私も性格が悪いということか。でも、とてももてなす気はないのだから仕方がない。
「お久しぶりですね。何ヶ月ぶりになるでしょうか」
「半年ぐらいかしら。これでもなにかと忙しくて、なかなかこちらへ顔を出すことができなくて」
何が忙しいだ。何をしているわけでもなく、毎日お茶をしているだけで忙しいわけもないだろう。そんなことを思いながら相手をしていると、ニコラスが紅茶と焼き菓子を持ってきた。きっと、午後に来るというのでアベルが作ってくれたのだろう。体は大柄だが、繊細で細かいところに気のきく男だから。
「私も貴族院で忙しくてなかなかそちらへ伺うこともできず申し訳ない」
「貴族院は荒れていると叔父に聞きましてよ」
法案を提出しているのは私だけれど、貴族院を荒らしているのは反対派が牙を剥いてきているからだと言いたい。とにかく気性が荒いのが問題だ。貴族らしくもっと紳士的にできないのかと思ってしまうが、できないのだろう。侯爵という貴族の中でも地位が高いにもかかわらず下位貴族と変わらない。いや、それ以下かもしれない。
ところで急に来たわけはなんだ? 早く用を済ませて早く帰って欲しい。名ばかり婚約者とはいえ、冷たいことを思っている自覚はあるが、こんなことをしている暇があるのならタクヤといたい。
「ところで今日はなにかありましたか?」
自分から用事を言い出さないので、冷たいようだが、こちらから切り出す。
「あら。婚約者のところへ来るのに用事が必要かしら? でも、そうね。今日は異世界からの者に挨拶に来たんですわ」
やはりタクヤのことが漏れている。ヴァルター侯爵が来たときはタクヤには一目あっただけで、異世界人とは知らない。知っているとすれば、私とタクヤを襲った賊、そしてそれを雇ったオマンド子爵と、オマンド子爵から報告を受けたヴァルター侯爵だけだ。つまり、あの賊が絡まなければ知るはずもないことだ。語るに落ちるとはこのことか。
「なぜ、ここに異世界の者がいると?」
「え? それは、叔父から聞いて」
「ヴァルター侯爵から? 私は侯爵にはお話をしていないのですが不思議ですね」
「そ、そうかしら? では他の人だったかしら?」
「私は異世界の者が屋敷にいると話したことはないんですよ、誰に対しても」
「……」
ほんとに頭の悪い女だなと思う。もっとうまく話さないとダメだろう、と私が駄目だしをしてしまう。
「と、とにかく会いたいんですわ」
嘘がうまくつけずに、真正面から来たか。
「あなたが会う必要はありますか?」
「あるわよ! だって結婚するんですもの」
驚いた。こんなにお互いに人として好意すら持てないのに結婚する気でいるのか。ヴァルター侯爵としては私を押さえつけるつもりだろうし、リシア嬢にとっては私の金目当てだろう。貴族としては侯爵家には敵わないものの、財産はあると思っている。だからリシア嬢としてはそれしか目当てがないと思っている。
「今、腕に酷い怪我をしていて、あまり本調子ではないので、また後日にしていただきたいのですが」
「一目会って挨拶をするだけですのよ。それくらい良いのではないかしら? 今日、ご挨拶できないのなら、また日を改めて伺いますけれど」
つまり会うまでは何回でも来るということか。しつこい。タクヤに会わせたくはないけれど、何回も来られるのも迷惑なので、仕方ない、タクヤを呼ぶか。
「ニコラス。タクヤを連れてきてくれ。リシア嬢が挨拶をしたいようだ」
「かしこまりました」
「ああ、猫も一緒に」
「かしこまりました」
そうしてニコラスにタクヤを呼んで来て貰うと、数分でタクヤはニコラスと共に来た。その顔は強張っていた。そうだろう。名ばかりとはいえ私の婚約者が会いたいなどと言うのだから。ルナも一緒にと言ったのは、神の使いを連れた救世主だという無言のアピールだ。
「あの……」
「ああ、あなたが異世界の者なの? 普通なのね。なに? 黒猫なんて連れて」
「彼は黒猫を連れて来たのですよ」
「……黒猫を連れてくるなんて生意気な……」
その言葉は小さく呟いたものだろうが、私にははっきり聞こえた。意地の悪い性格が丸見えだ。
「彼があなたが会いたがった来訪者のタクヤですよ」
「……はじめまして。タクヤ・キヨイシと申します」
「私はレオニス様の婚約者のリシアと申します。これからよろしくお願いしますわ。で、異世界の者ってなにをするのかしら? 救世主とか言われていますけれど。特に仕事もせずにふらふらしているのかしら?」
「あの……」
「リシア嬢。彼は神の使いを連れた救世主です。存在しているだけで十分なのですよ。タクヤ。急に呼び出して済まなかった。戻っていい」
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