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「美味しかった~。腹いっぱい」
神宮寺とメキシコ料理の店に食事に行った帰りだ。
前菜にあたるワカモーレに始まり、デザートのフラン(メキシコ風プリン)まで平らげた直生はご機嫌だった。
ネオン街の外れにできたその店は、定番のタコスはもちろん美味しかったが、セビーチェという海の幸のマリネとチーズをトルティーヤで巻き、エンチラーダソースをかけてオーブンで焼きあげたチキンエンチラーダが気に入った。
「トルティーヤがあれば家でもエンチラーダが食べられるのかな? でも、エンチラーダソースがないから無理か。残念」
と直生が一人、残念そうに呟いた横で神宮寺は隣でスマホをいじっていた。
「トルティーヤもエンチラーダソースも家で作れるみたいだな」
「!!」
「今度、休みの日にでも作ってみる。そうしたらいつでも食べられるだろう」
「やった!!」
美味しいメキシコ料理に舌鼓をうった後に、自宅でも作れると聞いた直生はさらにご機嫌になった。
いくら料理が趣味で気分転換になると言っても、いつも忙しくしている神宮寺に作って貰うのは申し訳ないと思う。そう思って、一度遠慮をしたことがある。けれど神宮寺はそれを喜ばなかった。それどころか、直生に美味しい料理を振る舞うのが気分転換で楽しみなのだから寂しい、と言われてしまったのだ。だから、それからは遠慮せずに、食べたいものは食べたいと言い、神宮寺が作る、と言ったときは、ありがとうと言って甘えるようにしている。
「神宮寺さん、どんどんレパートリー増えますね」
「お前に食べて貰えるものが増えるのは嬉しいな」
そういう神宮寺は、とても嬉しそうだった。その神宮寺の表情を見て直生は恥ずかしくなった。いや、恥ずかしくなるようなことはなにひとつないのだけれど、神宮寺の表情に照れて恥ずかしくなるのだ。それは、神宮寺への気持ちに気づいたからだろうか。きっとそうなのだろう。
あのとき気づいた気持ちは確かなものとして心の中にあって。けれど、伝えられるだけの覚悟はまだない。だから神宮寺にはまだ何も伝えていない。
神宮寺が気持ちを滲ませてくると、嬉しいけれど申し訳ない気持ちになる。思われるほどのものが自分にあるとは思えない。神宮寺ほどのイケメンが直生を想ってくれているであろう。そのことが申し訳ないと思ってしまうのだ。
大体、好きだと言ったところで、覚悟ができる日が来るかさえわからない。臆病者の自分が逃げずに神宮寺に好きだと伝える日が来るなんて想像もできない。いつか神宮寺の気持ちに答えられる日が来たら、神宮寺は今よりも明るい表情を見せるのだろうか。神宮寺のそんな笑顔を見てみたいと思う。でも、それには自分が神宮寺の気持ちに答えられることが条件になってしまうけれど。それでも、心の中ではほんの少し、神宮寺と番になれたら幸せだろうな、と思っている。やくざでなければ……そう思ってしまうのだ。
「どうかしたか?」
神宮寺と話しているうちに、ごちゃごちゃと考えてしまっていたようだ。
「いいえ。楽しみだな、と思っただけで」
「土曜にでも作ってみる」
今日が木曜日。土曜日まであと二日だ。
「楽しみにしてます」
そう言って直生は小さく笑う。
「疲れてるか?」
神宮寺とメキシコ料理の店に食事に行った帰りだ。
前菜にあたるワカモーレに始まり、デザートのフラン(メキシコ風プリン)まで平らげた直生はご機嫌だった。
ネオン街の外れにできたその店は、定番のタコスはもちろん美味しかったが、セビーチェという海の幸のマリネとチーズをトルティーヤで巻き、エンチラーダソースをかけてオーブンで焼きあげたチキンエンチラーダが気に入った。
「トルティーヤがあれば家でもエンチラーダが食べられるのかな? でも、エンチラーダソースがないから無理か。残念」
と直生が一人、残念そうに呟いた横で神宮寺は隣でスマホをいじっていた。
「トルティーヤもエンチラーダソースも家で作れるみたいだな」
「!!」
「今度、休みの日にでも作ってみる。そうしたらいつでも食べられるだろう」
「やった!!」
美味しいメキシコ料理に舌鼓をうった後に、自宅でも作れると聞いた直生はさらにご機嫌になった。
いくら料理が趣味で気分転換になると言っても、いつも忙しくしている神宮寺に作って貰うのは申し訳ないと思う。そう思って、一度遠慮をしたことがある。けれど神宮寺はそれを喜ばなかった。それどころか、直生に美味しい料理を振る舞うのが気分転換で楽しみなのだから寂しい、と言われてしまったのだ。だから、それからは遠慮せずに、食べたいものは食べたいと言い、神宮寺が作る、と言ったときは、ありがとうと言って甘えるようにしている。
「神宮寺さん、どんどんレパートリー増えますね」
「お前に食べて貰えるものが増えるのは嬉しいな」
そういう神宮寺は、とても嬉しそうだった。その神宮寺の表情を見て直生は恥ずかしくなった。いや、恥ずかしくなるようなことはなにひとつないのだけれど、神宮寺の表情に照れて恥ずかしくなるのだ。それは、神宮寺への気持ちに気づいたからだろうか。きっとそうなのだろう。
あのとき気づいた気持ちは確かなものとして心の中にあって。けれど、伝えられるだけの覚悟はまだない。だから神宮寺にはまだ何も伝えていない。
神宮寺が気持ちを滲ませてくると、嬉しいけれど申し訳ない気持ちになる。思われるほどのものが自分にあるとは思えない。神宮寺ほどのイケメンが直生を想ってくれているであろう。そのことが申し訳ないと思ってしまうのだ。
大体、好きだと言ったところで、覚悟ができる日が来るかさえわからない。臆病者の自分が逃げずに神宮寺に好きだと伝える日が来るなんて想像もできない。いつか神宮寺の気持ちに答えられる日が来たら、神宮寺は今よりも明るい表情を見せるのだろうか。神宮寺のそんな笑顔を見てみたいと思う。でも、それには自分が神宮寺の気持ちに答えられることが条件になってしまうけれど。それでも、心の中ではほんの少し、神宮寺と番になれたら幸せだろうな、と思っている。やくざでなければ……そう思ってしまうのだ。
「どうかしたか?」
神宮寺と話しているうちに、ごちゃごちゃと考えてしまっていたようだ。
「いいえ。楽しみだな、と思っただけで」
「土曜にでも作ってみる」
今日が木曜日。土曜日まであと二日だ。
「楽しみにしてます」
そう言って直生は小さく笑う。
「疲れてるか?」
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