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急にそんなことを訊かれる。
「そんなことないですよ」
「そしたら、今日は月でも見ながらゆっくり歩いて帰らないか?」
「そうですね。たまにはいいな」
いつもなら、もう車を呼んでいる頃だ。しかし、今日はまだ呼んでいない。たくさん食べたし、運動のためにも歩いて帰るのもいいだろう。大体、少し距離はあるけれど歩ける距離なのだ。
「今日は雲がかかってないから、月も星も綺麗に見えるな」
「そうですね。東京でこんなに星が見えるなんて珍しい。神宮寺さんはいつも車だから、あまり空って見ないんじゃないですか?」
「それはあるな。こうやって空を見上げることは滅多にないな」
神宮寺は出社もそれ以外の外出も全て車だ。会社の経営者と言えば車での送り迎えというイメージがあるから、そうなのだろうし、得意先とか、よくわからないが、社外の色々な人と会ったりするには車の方が便利なのだろう。しかし、神宮寺は仕事が終わったであろう時間も車を使っている。
「東京の空を見上げても綺麗じゃないから、と思って見上げなくなったのはあるな」
「確かに。今日みたいなのは珍しいですよね」
「ああ。だから歩いてみたくなった」
そう話ながらゆっくり歩く。神宮寺には車だから空を見ないんじゃないか、と言ったけれど考えてみたら直生もあまり空を見ていなかったことに気づく。
「考えてみたら、俺もあまり空見てなかったかもしれないです」
「そう?」
「綺麗な空見てみたいですよね。降るような星とか」
「そうだな。プラネタリウムもあるが、やはり本物がいいな」
今にも降ってきそうな星と静かに空を照らす月。そんな景色は東京では望めない。どこか空気の綺麗なところに行かなければ。
そんなことを考えていると、そんな夜空が見られるところへ旅行へ行きたくなる。そして、もう何年も旅行に行っていないことに気づいた。
「旅行行ってないなぁ」
横断歩道で歩を止めて、空を見上げながら直生は呟いた。
「俺も行ってないな」
「忙しくてですか?」
「それもあるが、一人だとな」
「海が綺麗で空も綺麗なところに行きたいなぁ」
最後に旅行に行ったのはいつだろうかと考えて、社会人になってからはほとんど行っていないことに気づいた。大学時代は一人でのんびり行ったこともあるけれど、社会人になってからはそんなゆっくりする時間もないし、そんなことを考えたりもしなくなっていた。有給はあまっているから、そのうちどこかにのんびり行くのもいいかもしれない。そんなことを考えながら横断歩道を渡ろうとしたところでヘッドライトがすごい勢いで近づいてくる。
危ない!
そう思いながらも直生は、あまりのことに立ち尽くしてしまう。
「危ない!」
「そんなことないですよ」
「そしたら、今日は月でも見ながらゆっくり歩いて帰らないか?」
「そうですね。たまにはいいな」
いつもなら、もう車を呼んでいる頃だ。しかし、今日はまだ呼んでいない。たくさん食べたし、運動のためにも歩いて帰るのもいいだろう。大体、少し距離はあるけれど歩ける距離なのだ。
「今日は雲がかかってないから、月も星も綺麗に見えるな」
「そうですね。東京でこんなに星が見えるなんて珍しい。神宮寺さんはいつも車だから、あまり空って見ないんじゃないですか?」
「それはあるな。こうやって空を見上げることは滅多にないな」
神宮寺は出社もそれ以外の外出も全て車だ。会社の経営者と言えば車での送り迎えというイメージがあるから、そうなのだろうし、得意先とか、よくわからないが、社外の色々な人と会ったりするには車の方が便利なのだろう。しかし、神宮寺は仕事が終わったであろう時間も車を使っている。
「東京の空を見上げても綺麗じゃないから、と思って見上げなくなったのはあるな」
「確かに。今日みたいなのは珍しいですよね」
「ああ。だから歩いてみたくなった」
そう話ながらゆっくり歩く。神宮寺には車だから空を見ないんじゃないか、と言ったけれど考えてみたら直生もあまり空を見ていなかったことに気づく。
「考えてみたら、俺もあまり空見てなかったかもしれないです」
「そう?」
「綺麗な空見てみたいですよね。降るような星とか」
「そうだな。プラネタリウムもあるが、やはり本物がいいな」
今にも降ってきそうな星と静かに空を照らす月。そんな景色は東京では望めない。どこか空気の綺麗なところに行かなければ。
そんなことを考えていると、そんな夜空が見られるところへ旅行へ行きたくなる。そして、もう何年も旅行に行っていないことに気づいた。
「旅行行ってないなぁ」
横断歩道で歩を止めて、空を見上げながら直生は呟いた。
「俺も行ってないな」
「忙しくてですか?」
「それもあるが、一人だとな」
「海が綺麗で空も綺麗なところに行きたいなぁ」
最後に旅行に行ったのはいつだろうかと考えて、社会人になってからはほとんど行っていないことに気づいた。大学時代は一人でのんびり行ったこともあるけれど、社会人になってからはそんなゆっくりする時間もないし、そんなことを考えたりもしなくなっていた。有給はあまっているから、そのうちどこかにのんびり行くのもいいかもしれない。そんなことを考えながら横断歩道を渡ろうとしたところでヘッドライトがすごい勢いで近づいてくる。
危ない!
そう思いながらも直生は、あまりのことに立ち尽くしてしまう。
「危ない!」
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