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はじめましての誤解から6
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メロンパンを食べ終わったイジュンを次に連れて行ったのは、もんじゃコロッケのお店だ。もんじゃは東京の食べ物で、日本でだってない地域の方が多い。当然、韓国にはないだろう。そんなもんじゃを手軽に食べられるようにコロッケにしたものは、わざわざお好み焼き屋に行かなくても食べられるのはありがたい。
そう考える人は多いのか、もんじゃコロッケの店はいつも行列が出来ている。もちろん、俺とイジュンも並ぶ。そして、番が近づいて来たところで俺はイジュンに訊いた。
「チーズと明太子とどっちが好き?」
「両方とも好きだけど、韓国人は明太子が好きだよ」
「OK。じゃあ明太子だね」
順番が来て、俺はプレーンと明太子を買った。さっき天ぷらを食べたばかりだけど、これくらいは大丈夫だろう。
「これがもんじゃコロッケだよ。こっちがプレーンで、こっちが明太子」
「もんじゃコロッケ? なに、それ?」
イジュンの質問に俺は悩んだ。コロッケは日本の洋食だ。そしてもんじゃは完全に日本のものだ。コロッケは揚げ物として説明できるけれど、もんじゃの説明が難しい。工程を説明するしかないだろう。
「コロッケは日本の洋食で、日本ではよく食べられる揚げ物。もんじゃは、小麦粉を水で溶いて焼いたもの、かな。とりあえず食べてみて」
そういってまずはプレーンを食べて貰う。
「なに、この中身。半生? お店に言った方がいいんじゃない?」
「これでいいんだよ。おいしくない?」
「いや、おいしいといえばおいしいけど、不思議な味だ」
もんじゃは日本でも東京以外の人は驚いたりするから、韓国人のイジュンはもっとだろう。イジュンがプレーンを食べ終わったところで明太子もんじゃコロッケを渡す。こうすると味がまた違って美味しいのだ。俺も明太子もんじゃは好きだ。
「あ、こっちは明太子の味がする。このどろっとした形状はさっきと変わらないけど、美味しい。このもんじゃっていうのは不思議な食べ物だね」
「そうだろうね。もんじゃは日本でも東京の食べ物だから他の地域にはないんだ」
「へぇ。地域限定なのか。面白いね」
「次は……甘いのは大丈夫? いってもそれほど甘くはないと思うけど」
「甘いのは大丈夫だよ」
「よし。じゃあデザートに移ろう」
そういって次に連れて行ったのはクレープ屋さんだ。と言っても普通のクレープを食べるわけじゃない。和風クレープだ。
「俺と半分こでもいい? 俺も食べたい」
「もちろん。俺も大分食べたからね。半分こしよう」
イジュンを店内の席に待たせて、俺はクレープを買いに行く。抹茶を使ったクレープはそれこそ日本ならではだろう。抹茶と生クリームの組合わせがなかなか美味しくて、俺も好きで食べることがある。ただ、お値段がするのが悲しい。でも、今日は韓国人のイジュンを案内しているのだから値段は考えない。
「お待たせ」
「あれ? 明日海。クレープを買いに行ったんじゃないの? これ、抹茶だよね?」
「抹茶クレープだよ」
「抹茶クレープ! 日本の抹茶はクレープにまで進出したのか。抹茶って苦いイメージがあるけど、生クリームがあるなら大丈夫だね」
「まずは一口食べてみて。そしたら俺にも一口ちょうだい」
「わかった」
そう言ってイジュンはクレープにかぶりついた。それはほんとにかぶりついたという表現がぴったりで、俺は小さく笑ってしまった。一口が大きいのだ。
「美味しい! クレープだけど抹茶の味がするなんて。それに抹茶の苦みに生クリームが合うね」
「美味しいだろ? これはたまに食べたくなるんだ」
「うん。わかる。それにこれは韓国では食べられないよ。はい。明日海も食べて」
イジュンがそう言ってクレープを差し出してくる。俺はイジュンが口をつけていない方から食べた。うん。やっぱり美味しい。
「ありがとう。あとは食べていいよ」
「もっと食べればいいのに」
「一口食べれば十分だよ。それに俺はいつでも食べられるから。イジュンは韓国に帰ったら食べられないだろ」
「うん。じゃあ、残りは俺が責任持って食べるよ」
そういうイジュンの目はキラキラとして、クレープを眺めていた。
そう考える人は多いのか、もんじゃコロッケの店はいつも行列が出来ている。もちろん、俺とイジュンも並ぶ。そして、番が近づいて来たところで俺はイジュンに訊いた。
「チーズと明太子とどっちが好き?」
「両方とも好きだけど、韓国人は明太子が好きだよ」
「OK。じゃあ明太子だね」
順番が来て、俺はプレーンと明太子を買った。さっき天ぷらを食べたばかりだけど、これくらいは大丈夫だろう。
「これがもんじゃコロッケだよ。こっちがプレーンで、こっちが明太子」
「もんじゃコロッケ? なに、それ?」
イジュンの質問に俺は悩んだ。コロッケは日本の洋食だ。そしてもんじゃは完全に日本のものだ。コロッケは揚げ物として説明できるけれど、もんじゃの説明が難しい。工程を説明するしかないだろう。
「コロッケは日本の洋食で、日本ではよく食べられる揚げ物。もんじゃは、小麦粉を水で溶いて焼いたもの、かな。とりあえず食べてみて」
そういってまずはプレーンを食べて貰う。
「なに、この中身。半生? お店に言った方がいいんじゃない?」
「これでいいんだよ。おいしくない?」
「いや、おいしいといえばおいしいけど、不思議な味だ」
もんじゃは日本でも東京以外の人は驚いたりするから、韓国人のイジュンはもっとだろう。イジュンがプレーンを食べ終わったところで明太子もんじゃコロッケを渡す。こうすると味がまた違って美味しいのだ。俺も明太子もんじゃは好きだ。
「あ、こっちは明太子の味がする。このどろっとした形状はさっきと変わらないけど、美味しい。このもんじゃっていうのは不思議な食べ物だね」
「そうだろうね。もんじゃは日本でも東京の食べ物だから他の地域にはないんだ」
「へぇ。地域限定なのか。面白いね」
「次は……甘いのは大丈夫? いってもそれほど甘くはないと思うけど」
「甘いのは大丈夫だよ」
「よし。じゃあデザートに移ろう」
そういって次に連れて行ったのはクレープ屋さんだ。と言っても普通のクレープを食べるわけじゃない。和風クレープだ。
「俺と半分こでもいい? 俺も食べたい」
「もちろん。俺も大分食べたからね。半分こしよう」
イジュンを店内の席に待たせて、俺はクレープを買いに行く。抹茶を使ったクレープはそれこそ日本ならではだろう。抹茶と生クリームの組合わせがなかなか美味しくて、俺も好きで食べることがある。ただ、お値段がするのが悲しい。でも、今日は韓国人のイジュンを案内しているのだから値段は考えない。
「お待たせ」
「あれ? 明日海。クレープを買いに行ったんじゃないの? これ、抹茶だよね?」
「抹茶クレープだよ」
「抹茶クレープ! 日本の抹茶はクレープにまで進出したのか。抹茶って苦いイメージがあるけど、生クリームがあるなら大丈夫だね」
「まずは一口食べてみて。そしたら俺にも一口ちょうだい」
「わかった」
そう言ってイジュンはクレープにかぶりついた。それはほんとにかぶりついたという表現がぴったりで、俺は小さく笑ってしまった。一口が大きいのだ。
「美味しい! クレープだけど抹茶の味がするなんて。それに抹茶の苦みに生クリームが合うね」
「美味しいだろ? これはたまに食べたくなるんだ」
「うん。わかる。それにこれは韓国では食べられないよ。はい。明日海も食べて」
イジュンがそう言ってクレープを差し出してくる。俺はイジュンが口をつけていない方から食べた。うん。やっぱり美味しい。
「ありがとう。あとは食べていいよ」
「もっと食べればいいのに」
「一口食べれば十分だよ。それに俺はいつでも食べられるから。イジュンは韓国に帰ったら食べられないだろ」
「うん。じゃあ、残りは俺が責任持って食べるよ」
そういうイジュンの目はキラキラとして、クレープを眺めていた。
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