春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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いつか君を見る3

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 浅草神社は浅草寺の右側にある。
 浅草寺はいつも多くの人で賑わっているけれど、浅草神社はひっそりとした佇まいだ。
 浅草寺の本堂を右手に折れると朱塗りの社殿が見えてくる。

「ここが浅草神社。浅草寺のすぐ隣だけど、こっちは神道の神社だよ」
「神道ってなに?」
「神道は日本固有の民族宗教で、自然や祖霊を神として崇拝する信仰だよ。他の宗教みたく教祖や経典はないし、古代から続く自然崇拝や祖霊信仰が基盤。祀ってる神様も神社によって違うから御利益も違う」
「へー。神道って宗教なのに特殊なんだね」
「日本は八百万の神だからね。神様は沢山いる。山には山の神様がいるし、草花には草花の神様がいる。なににだって神様はいるって考えるんだよ」
「ねぇ。この門みたいなのが鳥居?」
「そう。入ってみようか」
「うん」

 イジュンは頷くと堂々と真ん中を通って行こうとするので、俺は止めた。

「イジュン、待って!」
「なあに?」
「まず鳥居に入る前に一礼してから左を歩いて。真ん中は神様の通るところだから」
「そうなんだ。それは神様に失礼だ」

 そう言うとイジュンは鳥居の前で小さく一礼し、左側を歩いていった。俺もその後を続き、イジュンの左側に立つ。

「ねぇ。神社とお寺がすごい近いね。それはなんで?」
「ここのご祭神はね、浅草寺を建てたきっかけになった3人の人なんだ」
「3人?」
「そう。飛鳥時代、といってもイジュンにはわからないか。えっと西暦でいうと628年に、隅田川で観音像を引き上げた漁師の兄弟と、その像をお寺にした土地の長。彼ら3人を祀っているから、”三社様”とも呼ばれてる」
「628年? そんなに昔?」
「そう。でも、浅草神社として今の形になったのは江戸時代。江戸時代はわかる?」
「うん、なんとなく。徳川って言う人が偉かったとき」
「そう。徳川家光が社殿を建てたんだ。だから、今の建物は400年くらい前のものだから新しいね」
「え! 400年で新しいの?」
「新しいよ。もっと古い寺社はたくさんあるからね」
「日本ってすごい」

 そうか。400年って言ったら普通は古いって思うのか。イジュンに言ったけれど、もっと古いお寺や神社はたくさんあるから徳川って言ったら新しいなって思ってしまうのは日本人の感覚か。

「でも、400年っていうけど、綺麗だよ」
「そうだね。国の重要文化財になってるから、修復を重ねながら大事に守られてる。観音信仰と地元の信仰が一緒になってるちょっと特別な神社だ」
「神と仏が一緒にあるって日本っぽいな」
「明治時代に”神仏分離”っていう政策があったんだけど、浅草はそれでもこの並びのまま残った。だから今でもこの土地では神様も仏様も一緒に敬ってる」
「柔らかい感じだね。なんかいいな、そういうの。でも、そういうところが日本っぽいね」
「そうかな?」
「うん。なんかそんな感じがする」

 そういうイジュンの目は正面の社殿を見ている。

「参拝する?」
「うん」
「そうしたらそこで手と口をゆすごう」

 俺は手水舎を指指し、手を洗い、口をゆすいだ。それを見たイジュンは俺の真似をして手と口をゆすいだ。こういうのがあるのは神社ならではだ。
 そしてお賽銭を入れ、二礼二拍手一礼をする。

「願いごとをしてもいいの?」
「うん。感謝してからな」
 
 俺がそう言うと、イジュンは俺がしたように仁礼二拍手してなにかをお願いしてから一礼していた。

「これでお参りできたの?」
「そう」
「なんか神様だけでなく、他のことも他の宗教とは違うんだね。でも、浅草寺にはみんな行くけど、こっちには来ないんだね」
「浅草神社なんて言い出したお前にびっくりしたよ」
「だって、ガイドブックに載ってたんだよ。だから来ようと思ったんだ」
「そっか。神様もきっと喜んでるよ」

 参拝を終えたイジュンは今日買ったばかりの写ルンですで写真を撮っていた。俺はそれを黙って見ている。撮ったあとイジュンはなにも言わずに俺をみて笑う。写ってなくても、それでも楽しかったって言いそうな顔をしてるな、とイジュンを見ながら思った。
 
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