春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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プリクラの距離2

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 エスカレーターの手すりに手を置き、上へと運ばれていく。ラジオ会館は外から見るよりもずっと奥行きがある。入口の明るさから一歩踏み込むと、空気はひんやりとしていて、まるで別世界に来たかのようだった。
 2階には、プラモデルがある。ガラスケースぎっしりとプラモデルの箱が詰められている。戦艦、戦闘機、戦車。まるで博物館のカタログをそのまま並べたようだ。イジュンは戦艦模型のパッケージに足を止めてまじまじと見ている。

「ここ、韓国人怒りそうだね」
「なんで? ああ、戦艦とかそういうのがあるからか。軍国主義を捨ててないとか言うなよ」
「俺は言わないけど、他の韓国人来て怒ってないかな」
「さあな。怒ってたら韓国のネット荒れてるんじゃん? そしたら絶対お前が来ようと思ったときに気づいてると思うけど」
「確かに。これ、日本の船?」
「そう。これが戦艦大和だ」
「へぇ……。こういう細かいの日本人得意だよね」

 イジュンはそう言ってケースに顔を近づけ、目をキラキラとさせている。まるで子供が初めて見るおもちゃを前にしたときの顔だ。その無邪気さに、俺は思わず笑ってしまった。韓国にはあんまりこういうのはないんだろうか。
 3階は鉄道模型のフロアだ。レールが組まれ、ミニチュアの列車が展示されている。こういうの子供の頃持ってたな。
 ジオラマの街には小さな駅や住宅、信号機まで精巧に作られていて、時間が止まった街のようだ。イジュンは中腰になって目線を合わせ、すごい! と関心して見ている。こういうのを作れるのってすごいよなーと関心してしまう。
 さらに上の階に進むと、アニメやゲームのキャラクターグッズが並ぶ。ポスターやフィギュア、ぬいぐるみ。海外でも有名なタイトルが多く、イジュンの目はさらにキラキラとしている。ほんとにアニオタじゃないんだろうか。俺から見たら結構好きそうだけど。それは俺がそこそこしかハマってないからそう見えるだけだろうか。

「これ、韓国でも人気だよ。特にフィギュアは高く売られてる」

 そう言って指指したのは、細かく塗装された人気キャラのフィギュアだった。俺はイジュンが楽しそうに見ているのを眺めていた。俺が思っている以上に日本のカルチャーは韓国に浸透しているらしい。
 そんな俺が反応したのは、そのさらに上のフロアで、レトロゲーム売り場だった。黄ばんだファミコンのカセットやスーパーファミコン本体が整然と並んでいる。それらの懐かしいパッケージに俺は思わず手を伸ばす。

「これ、小学生のころ友だちの家でやったやつだ」

 箱を手にして呟くと、イジュンが不思議そうな顔をする。

「昔のゲームなのに、なんで売ってるの?」
「好きな人が多いんだよ。新品じゃなくても遊べるし、コレクションとして集める人もいるし」
「コレクターか。日本人、集めるの好きなんだな」
「そうかな? どこの国でも一緒じゃん?」

 そんなふうに話しながら、さらに上へと行く。階ごとに違う空気と色彩があって、飽きることがない。イジュンはどこへ行っても必ず何かしらに反応し、感想を言ってくる。たまに質問をされるので、俺はそれに答える。ラジオ会館なんて、と思っていたけれど、意外と自分が楽しんでいることに気づく。もちろん、イジュンと回っているからというのもあるだろう。そして、出口近くまで戻ってきたときだった。右手に小さなコーナーがあり、派手なライトと賑やかな音楽が耳に飛び込んでくる。プリクラ機が何台か並び、女子高生や観光客が入れ替わり立ち替わり中に入っていく。そこを素通りしようとしたら、イジュンが足を止めた。

「明日海。これ、やろう」
「え? プリクラ? 撮ったことないのか?」
「あるけど、多分韓国のと雰囲気が違う。日本のは、もっと……なんていうか派手で可愛い」
「そうか……」

 俺はプリクラなんて高校のとき以来だ。そのときの彼女と撮ったのを覚えている。でも、男2人でプリクラもないだろう、という気がするが、イジュンの目は完全にやる気モードだ。これは撮らないと終わらなさそうだ。なので、1回だけな、と言って列に並んだ。
 
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