45 / 86
プリクラの距離7
しおりを挟む
「日本では最初からわさびが入ってるんだね」
「うん、そうだけど。え? なにか違う?」
「韓国では、わさびは入ってないんだ。醤油をつけるときにわさびを溶いてつけるんだ。でも、最初からわさび入ってたら、子供やわさびが苦手な人はどうするの? それとも日本ではわさびが苦手な人はいないの?」
「そういう場合はさび抜きを頼んでおくんだ。そうするとわさび抜きで握ってくれる。もしかしてわさび辛かった?」
「ちょっと辛いけど大丈夫」
そう言いながらちょっと辛そうにお茶を飲む姿を見て、思わず笑いがこみ上げた。イジュンは拗ねたように「笑うなよ」と口を尖らせる。その姿が可愛くて、大人びた様子もいいけれど、心を許したようなその姿をずっと見ていたいと思った。
次に出されたのは巻物だった。細巻きの中にたっぷりと詰まったきゅうりが覗く。巻物は韓国でも食べられてるからなじみ深いだろうな。そう思っていると、イジュンは箸でつまみ上げ、一口でかぶりついた。
「お寿司にキンパッて出るんだね」
「キンパッって今のだよね?」
「そう」
「かっぱ巻きとかの細巻きは必ず出るよ」
「そうなんだ。回転寿司だとわざわざ頼まないからな。普通の寿司屋はどうなんだろう。そのうち行ってみようかな」
「行ってみて。韓国のお寿司屋さんが気になる」
「そしたら、明日海が韓国に来たら行ってみよう」
俺は韓国に行くなんて一口も言ってない。確かにちょっと興味出てきたし、就職前に行くのもいいなとは思ってる。でも、なんでもう韓国に行くことになってるんだ? それは、明後日韓国に帰国しても、それで終わりではないっていうことでいいのかな?この旅の終わりが2人の終わりにならないということが、なんだか嬉しかった。
「次はなんだろう」
そう言って次を待っていると、いくらが出てきた。
「イジュンが楽しみにしてたいくらだよ」
「なんだかキラキラしてる。これが鮭の卵か。結構粒大きいんだね」
「まぁ食べてみて」
「うん」
そう言うと、いただきますと一言日本語で言ってから、ぱくりと一口で口の中に入れた。そして次の瞬間、目が丸くなった。その表情が面白くて、俺はつい笑ってしまった。
「口の中が花火会場になった!」
面白い表現に俺は笑ってしまう。ぷちぷち弾けた、とは言うだろうなとは思っていた。でも、花火会場っていうとは思わなかった。
「だって、笑ってるけど、ほんとに口の中で弾けたんだ」
「うん。わかるよ。でも、花火会場って表現するとは思わなかった。で、どう? 初めてのいくら体験は」
「これは癖になるね。次にお寿司を食べるときにも頼んじゃうだろうな。って韓国ではないんだけど」
「いくらがないなんて寿司とは言えないよ」
「明日海はいくら好き?」
「好き! 寿司のときは必ず食べる」
「じゃあ韓国の寿司は物足りないかもしれないね」
「回らない寿司屋にもないの?」
「それは行ったことないからわからないな。明日海が来たら行って答えを見よう」
うん。イジュンの中で俺は韓国に行くことになってる。冬休みにでも行こうかな。ほんとに大学生活最後の休みに。
「じゃあ連れて行ってね」
俺がそう言うと一瞬驚いた顔をしてから、嬉しそうに笑った。うん。イジュンは笑った顔が一番だと思う。
「明日海。連れてきてくれてありがとう。こんな経験、1人だったら出来なかったし、韓国と日本の違いも知らないままだった。それもこれも、明日海と来れたからだ。明日海と一緒だから特別に思える」
穏やかな笑みと、真剣な響きを含んだ声。イジュンの黒い瞳がまっすぐに俺を見ていた。それに胸がくすぐられるようで言葉に詰まる。それにどう返したらいいのかわからなくて、ただ「良かった」と言うしかなかった。
食事が終わり、湯飲みのお茶を飲みながら、2人で満足気にため息をつく。
「ほんとに美味しかった。次に日本に来ることがあっても、また絶対食べる」
「そのときも案内するよ」
自然に口をついて出た言葉にイジュンが嬉しそうに笑う。その笑顔を見た瞬間、胸の奥が甘く締め付けられる。出会ったばかりなのに、なんでこんなに心が惹かれるんだろう。
隣を歩くイジュンの肩が時折触れ、その度に俺の心臓は小さく跳ねる。胸に芽生えたばかりの思いが確かにそこにあった。
「うん、そうだけど。え? なにか違う?」
「韓国では、わさびは入ってないんだ。醤油をつけるときにわさびを溶いてつけるんだ。でも、最初からわさび入ってたら、子供やわさびが苦手な人はどうするの? それとも日本ではわさびが苦手な人はいないの?」
「そういう場合はさび抜きを頼んでおくんだ。そうするとわさび抜きで握ってくれる。もしかしてわさび辛かった?」
「ちょっと辛いけど大丈夫」
そう言いながらちょっと辛そうにお茶を飲む姿を見て、思わず笑いがこみ上げた。イジュンは拗ねたように「笑うなよ」と口を尖らせる。その姿が可愛くて、大人びた様子もいいけれど、心を許したようなその姿をずっと見ていたいと思った。
次に出されたのは巻物だった。細巻きの中にたっぷりと詰まったきゅうりが覗く。巻物は韓国でも食べられてるからなじみ深いだろうな。そう思っていると、イジュンは箸でつまみ上げ、一口でかぶりついた。
「お寿司にキンパッて出るんだね」
「キンパッって今のだよね?」
「そう」
「かっぱ巻きとかの細巻きは必ず出るよ」
「そうなんだ。回転寿司だとわざわざ頼まないからな。普通の寿司屋はどうなんだろう。そのうち行ってみようかな」
「行ってみて。韓国のお寿司屋さんが気になる」
「そしたら、明日海が韓国に来たら行ってみよう」
俺は韓国に行くなんて一口も言ってない。確かにちょっと興味出てきたし、就職前に行くのもいいなとは思ってる。でも、なんでもう韓国に行くことになってるんだ? それは、明後日韓国に帰国しても、それで終わりではないっていうことでいいのかな?この旅の終わりが2人の終わりにならないということが、なんだか嬉しかった。
「次はなんだろう」
そう言って次を待っていると、いくらが出てきた。
「イジュンが楽しみにしてたいくらだよ」
「なんだかキラキラしてる。これが鮭の卵か。結構粒大きいんだね」
「まぁ食べてみて」
「うん」
そう言うと、いただきますと一言日本語で言ってから、ぱくりと一口で口の中に入れた。そして次の瞬間、目が丸くなった。その表情が面白くて、俺はつい笑ってしまった。
「口の中が花火会場になった!」
面白い表現に俺は笑ってしまう。ぷちぷち弾けた、とは言うだろうなとは思っていた。でも、花火会場っていうとは思わなかった。
「だって、笑ってるけど、ほんとに口の中で弾けたんだ」
「うん。わかるよ。でも、花火会場って表現するとは思わなかった。で、どう? 初めてのいくら体験は」
「これは癖になるね。次にお寿司を食べるときにも頼んじゃうだろうな。って韓国ではないんだけど」
「いくらがないなんて寿司とは言えないよ」
「明日海はいくら好き?」
「好き! 寿司のときは必ず食べる」
「じゃあ韓国の寿司は物足りないかもしれないね」
「回らない寿司屋にもないの?」
「それは行ったことないからわからないな。明日海が来たら行って答えを見よう」
うん。イジュンの中で俺は韓国に行くことになってる。冬休みにでも行こうかな。ほんとに大学生活最後の休みに。
「じゃあ連れて行ってね」
俺がそう言うと一瞬驚いた顔をしてから、嬉しそうに笑った。うん。イジュンは笑った顔が一番だと思う。
「明日海。連れてきてくれてありがとう。こんな経験、1人だったら出来なかったし、韓国と日本の違いも知らないままだった。それもこれも、明日海と来れたからだ。明日海と一緒だから特別に思える」
穏やかな笑みと、真剣な響きを含んだ声。イジュンの黒い瞳がまっすぐに俺を見ていた。それに胸がくすぐられるようで言葉に詰まる。それにどう返したらいいのかわからなくて、ただ「良かった」と言うしかなかった。
食事が終わり、湯飲みのお茶を飲みながら、2人で満足気にため息をつく。
「ほんとに美味しかった。次に日本に来ることがあっても、また絶対食べる」
「そのときも案内するよ」
自然に口をついて出た言葉にイジュンが嬉しそうに笑う。その笑顔を見た瞬間、胸の奥が甘く締め付けられる。出会ったばかりなのに、なんでこんなに心が惹かれるんだろう。
隣を歩くイジュンの肩が時折触れ、その度に俺の心臓は小さく跳ねる。胸に芽生えたばかりの思いが確かにそこにあった。
0
あなたにおすすめの小説
カフェ・コン・レーチェ
こうらい ゆあ
BL
小さな喫茶店 音雫には、今日も静かなオルゴール調のの曲が流れている。
背が高すぎるせいか、いつも肩をすぼめている常連の彼が来てくれるのを、僕は密かに楽しみにしていた。
苦いブラックが苦手なのに、毎日変わらずブラックを頼む彼が気になる。
今日はいつもより温度を下げてみようかな?香りだけ甘いものは苦手かな?どうすれば、喜んでくれる?
「君の淹れる珈琲が一番美味しい」
苦手なくせに、いつも僕が淹れた珈琲を褒めてくれる彼。
照れ臭そうに顔を赤ながらも褒めてくれる彼ともっと仲良くなりたい。
そんな、ささやかな想いを込めて、今日も丁寧に豆を挽く。
甘く、切なく、でも愛しくてたまらない――
珈琲の香りに包まれた、静かで優しい記憶の物語。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
悋気応変!
七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。
厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。
──────────
クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。
◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。
◇プロローグ漫画も公開中です。
表紙:七賀ごふん
Candy pop〜Bitter&Sweet
義井 映日
BL
「完璧な先輩」が壊れるまで、カウントはもう、とっくに『0』を過ぎていた。
「185cmの看板男」が、たった一人の恋人の前で理性を失う。
三ヶ月の禁欲を経て、その愛は甘く、激しく、暴走する――。
「あらすじ」
大学の「看板男」こと安達大介は、後輩の一之瀬功(こう)を溺愛している。
ついに迎えた初めての夜。しかし、安達の圧倒的な「雄」の迫力に、功は本能的な恐怖で逃げ出してしまう。
「――お前は俺を狂わせる毒だと思ってた」
絶望した安達と、愛しているのに身体が竦む功。
三ヶ月の「じれったい禁欲生活」を経て、看板男の仮面が剥がれるとき、世界で一番甘い夜が始まる。
★本編全6話に加え、季節を巡る濃密な番外編1本も公開中!近日最新エピソードも追加予定!
(2月の看病編/3月のホワイトデー編公開予定です)
お話が気に入った、面白かった、と思ってくださったら、お気に入り登録、いいね、をお願い致します!
作者の励みになります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる