春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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また会う日のために1

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 イジュンの日本旅行最終日は俺の部屋で将来のことを話してから、イジュンをホテルに送るついでに明治神宮へと寄った。恋愛は成就しているけれど、ずっと仲良くいられますように、と祈ってきた。
 将来のことを話したけれど、将来のことは1日で決められることじゃない。でも、イジュンは少し前から起業しようかと考えてはいたらしい。就職して大学で学んだことを活かすことはまず無理だということ。かといって、大学時代必死に勉強したのに、それが全て無駄になるのは嫌だったらしい。それで、勉強したことを活かすなら起業するしかないと思ったという。職種は飲食業。韓国で飲食業で起業するとなると、チキン屋が定番らしいけど、好きな食べ物を、と考えるとクレープが浮かんだらしい。日本でクレープを食べて美味しかったのに韓国には少ないから。そして、もし、俺と一緒に起業するなら日本料理屋もいいと思ったらしい。だけど、残念なことに俺は料理が苦手だ。1人暮らしだから作ってはいるけれど、レパートリーは少ないし、簡単なものしか作れない。だから日本料理屋は無理だと答えた。そうしたら、韓国では少ないクレープ屋さんがいいかなと言っていた。クレープを選ぶあたりイジュンらしい。
 イジュンに起業の話しを持ちかけられても俺はすぐに返事は出来なかった。俺は公認会計士を目指していたし、なにより、イジュンは韓国で起業することを考えているけれど、それだと俺が韓国へ行かなくてはいけない。別に海外に住むのが嫌なわけじゃない。でも、1度も韓国に行ったことがないから、韓国でやっていけるかどうかがわからない。もちろん、イジュンは隣にいてくれる。だけど、それだけで問題がないわけではないだろう。そうしたときに大丈夫なのかどうか。そして、日本で就職すると考えている両親に説明しなくてはいけない。それは簡単なことではない。だからイジュンには、保留にして貰った。イジュンが起業するのはいいと思う。韓国は母国だし。だけど俺は韓国人じゃない。日本人だ。だから簡単には決められないんだ。将来のことはじっくり考えたい。
 そんな話しを部屋でしてから、あの殿堂によってお土産を買い、そして明治神宮に寄ってから上野のホテルへと送った。最後の日は長い時間一緒にいた。夜だってイジュンが泊まったから一緒に寝た。それなのに離れがたくて。一緒にいるとダメだと思った。

「明日、空港まで見送りに来てくれる?」
「……行かない」
「……そっか。わかった。じゃあ手紙書くね。とりあえず韓国に着いたらメッセージするよ」
「うん」
「おやすみ。明日海、韓国に旅行おいでね」
「うん」
「じゃあね。おやすみ」

 そう言ってホテルに入っていくイジュンを見送る。昨日は、空港まで見送りに行こうと思ってた。だけど今日になって、離れがたい気持ちになったことで、行くのをやめようと思った。今だって離れるのが寂しかったんだ。空港に見送りになんて行ったら泣いてしまいそうで。そう思ったら、行くのはやめようと思った。薄情だと思われるだろうか。それでも、寂しいんだ。
 一緒にいたのは数日だ。そんなに長い時間じゃない。それなのに、生活の中にイジュンがいるのが当たり前になっていた。だからこそ見送りには行けない。でも、不思議だ。確かにガイドと称して毎日会ってはいた。でも、丸一日一緒にいたのは今日だけで、あとの日は数時間だ。なのに、イジュンが俺の生活の中で欠かせない存在になっていた。イジュンといたいのなら、一緒に起業すればいいんだと思う。そうすれば離れる寂しさを感じなくてすむ。
 イジュンがホテルに入り、姿が見えなくなると、俺は駅へと向かった。卒業後のことはもう少し考えよう。とりあえず、その前に冬休みに韓国へ行こう。住むのなら、どんなところなのか見ておきたいから。
 イジュンと出会って数日。なのに俺の人生がひっくり返りそうなほどの出会いになった。イジュンとの出会いは運命だったんだろうか。電車の中でそんなことを考えながら家へと帰った。
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