春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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すれ違いの再会1

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「当機は間もなく金浦きんぽ国際空港に到着いたします……」

 飛行機が着陸態勢になり、下降していく。よく飛行機の下降を怖いという人がいるけれど、それほど怖いとは思わなかった。なんなら上昇の方が怖かったような気がする。だけど、そんなことはどうでもいい。空港について無事にイジュンに会えるだろうか。フライトを知らせたときに、迎えに行くと言っていたけれど、空港は広い。いや、それを言うなら羽田空港で会えたのは奇跡のような物だけど、そんなのが続くとも思えない。だけど、空港からソウル市内への行き方とかは、ぼんやりとしかわからない。というか、韓国語がわからないで行けるとは到底思えない。だからイジュンに会えないと困るんだけど。
 そんなことをグルグル考えていると機体は無事着陸し、順番に空港建物とを結ぶガラス張りの搭乗通路へと出て行く。ここがもう韓国だと思うとドキドキしてきた。イジュンの生まれ育った国。そう思うとまだ街中を見ていないというのに愛おしく感じる。だって、今、このときだってイジュンはここにいるんだ。そう考えるとドキドキして当然だと思う。 
 そして、そんなドキドキした状態で入国審査を済ませ、スーツケースをピックアップする。自動ドアの向こうが空港ロビーだ。イジュンが待っていてくれるところだ。ドアが開き、俺は空港ロビーに足を進める。イジュン曰く金浦空港は狭いからと言っていたが、それでもたくさんの人がいる。まさに、人、人、人だ。こんなたくさんの人の中からイジュンを探すのなんて大変だ。そう思い、人の邪魔にならないところで足を止め、イジュンの姿を探す。すると、ロビー奥の中央辺りにイジュンの姿を見つけた。良かった、これで安心だ。……と足を踏み出そうとしたところで足を止めた。なぜなら隣には綺麗な女性がいたからだ。
 長くストレートな髪の毛を真っ直ぐに背へと垂らしている姿は、俺の中の、ザ・韓国女性というイメージだ。色白で少しキツめの顔をしているけれど、美人の部類に入るだろう。イジュンはそんな女性と親しげに話し、笑っている。そのイジュンの顔は力が抜けていて、2人がただの顔見知りではないことが見てとれる。そんな光景を目にして胸がざわつく。その女性は誰? イジュンの元へ行ってそう訊けばいいだけだけれど、それが出来ない。その場に足が縫い付けられたように動けない。

「来るんじゃなかったかも……」

 日本と韓国と離れている間に、彼女が出来たのかもしれない。そして、その彼女を俺に紹介しようと思って2人で空港に迎えに来たのかもしれない。そんな最悪なシーンを想像してしまったら余計に声などかけられなくなってしまった。

「彼女がいるなら、俺の出番なんてないよな。そもそも俺、男だし。日本に帰りたいな……」

 これが予約が必要な飛行機でなければ、ここでUターンして日本に帰るのに。でも、そうも行かないので、ひとまずホテルへ行こう。韓国語は話せないから電車やバスは無理だ。となると、選択肢はタクシーしかない。重い足をなんとか動かしてタクシー乗り場へ行ったけれど、世の中はそんなに甘くなかった。ホテル名を告げても発音が違うからか、タクシーの運転手は疑問顔だ。えっと、確か予約したときの紙は……。鞄の中をあさり、それを運転手に見せる。それでやっと車が発車した。後はイジュンに断りのメッセージでも入れればいいだけだ。そして明日からは1人でソウル観光をすればいい。ガイドブックが手元にないからわからないけれど、観光ツアーバスくらいはあるだろう。それを探して観光すればいい。

「イジュンの馬鹿……」

 なんで日本を出発する前に教えてくれなかったんだよ。なにも考えずに来た俺って馬鹿みたいじゃないか。そう思うと涙が出そうになって歯を食いしばる。こんなところで泣くんじゃない。ホテルの部屋に入るまで泣くのは我慢だ。でも、そう思っている自分が惨めに感じた。
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