春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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すれ違いの再会3

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 今すぐにでも日本に帰りたいけれど、帰りの予約変更ができないタイプの航空券なので、それまでは韓国にいるしかない。なので数日間この部屋で過ごすことになる。洋服がしわくちゃにならないように、スーツケースから服を取りだし、ハンガーにかける。あとは洗面用具を洗面所に置き、シャンプーやボディーソープなども洗面所に置く。
 荷物を出したりしていても、そんなに荷物があるわけではないからすぐに終わってしまう。嫌なことは忘れたいのに、どうしても頭から離れない。イジュンは綺麗系が好きなんだな。さっきの彼女はちょっときつめだけど綺麗だった。忘れようと思っているのに、頭はすぐに先ほどの映像を映し出してしまう。もう忘れたい。イジュンには綺麗だと言われたことがあるし、なにより最初に声をかけてきたのは俺を女と間違えてだった。でも、そんな外見でも、俺は男なんだ。それは変わらない。だからイジュンだって、日本にいたときは、身近にいたのが俺だったから好きだと勘違いしちゃったけど、現実の韓国に戻ってきて、なんで男なんかにって思ったのだろう。だから綺麗な彼女を作った。ただ、ソウルを案内するのは約束しているから、それだけは守ろうとしたんだろう。
 考えたくないのに頭の中はイジュンでいっぱいだ。もうお昼を過ぎているけれど、お腹は空いていないし、食欲もないから昼は食べなくてもいいだろう。そう思ってベッドに寝転んでいると、部屋のドアがノックされた。ホテルの人だろうか? そう思って薄くドアを開ける。するとそこにいたのは、俺の頭の中を占拠しているイジュンだった。

「明日海! 探したよ」
「俺は探してない。帰れよ」
「怒ってる? 俺が見つからなかったから?」
「いいから帰れ!」
「なんで怒ってるの?」
「なんだっていいだろ。彼女のところへ帰れよ」
「彼女?」

 俺が彼女という単語を出すとイジュンはきょとんとした顔をする。わけがわからないと言った顔だとでも言ったらいいだろうか。知らん顔したって無駄だからな。俺はこの目で見たんだから。イジュンが綺麗な女性と一緒にいるところを。なのに、イジュンは訳がわからないらしい。だから言った。

「空港で! 綺麗な彼女と一緒にいただろ。いくら俺との約束があったからって彼女と一緒にガイドをしようっていうのは、さすがに無神経だろ!」

 そこまで言うとイジュンは笑い出した。なにがおかしいんだよ! さすがに腹がたってきた。

「俺のことなんて放って彼女のところに帰ればいいだろ。俺のガイドなんてしなくていいから。適当にツアーにでも乗るから心配しなくていいよ。それから、もう俺に連絡しないでくれ」
「明日海。それ誤解だから」

 なにが誤解だと言うんだ。こっちは彼女と一緒にいたのをこの目で見ているんだ。

「空港で俺といた女のことでしょう? あれ、彼女なんかじゃないから。従姉妹だよ」
「いと……こ?」
「そう。友だちの帰国で迎えに来てたらしくて偶然会ったんだ」
「ぐう……ぜん?」

 あの女性は彼女じゃなくて従姉妹? え? じゃあ、俺の勘違い? そう思うと恥ずかしくて下を向いてしまう。

「嬉しいなぁ。焼きもち焼くくらい俺のこと思ってくれてるんだ」

 この恥ずかしいのはどうしたらいい? やっぱり帰って貰う? いや、その前に謝るべき?

「ちょっと中に入れて」

 俺がどうしたらいいかと悩んでいると、イジュンはそう言って部屋の中に入ってくる。そうして、ドアを後ろ手で閉めると、俺を抱きしめてきた。

「ごめん。明日海は嫌な思いをしたっていうのに。だけど焼きもち焼いて貰えて俺は嬉しいよ。まぁいくら誤解とは言え、明日海は嫌な思いをしたわけだから、それに関しては謝るよ。誤解されるようなことしてごめんね。だけど、覚えてて。俺は明日海以外好きじゃないから」

 抱きしめられて、耳元でそう言われたら、さっきまでの腹立ちなんて消えてなくなる。逆に1人で勝手にホテルに来て申し訳なかったなと思うけれど、素直には謝れない。

「俺は明日海としか過ごす気ないからね。お昼まだでしょ。そしたらお昼食べて、東大門市場に行って、夜は広蔵市場で麻薬キンパを食べよう。明日海、行くよ」

 そう言って、俺の背を押して、部屋を出て行く。一言も行くなんて言ってないのにイジュンに押されてしまう。でも、相手がイジュンなら、それもいいかなと思ってしまった。
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