画廊に住む魔術師

夕霧

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画廊に住む魔術師~月の国のアリス~

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ウスイ
画廊『翡翠堂』のオーナーで画廊に住む魔術師。縁のある客に魔法薬を売っている。
基本は画家として活動し、プロアマ問わず、画廊に様々な作品を展示している。
飄々としてて掴みどころがない。

カケル
美術部の女子高生。
男らしい名前を気にしている。
潜在的に魔力がありいわく付きのモノがそばにあってもその効果を一切受け付けない。
画家になるために翡翠堂に通う

アリス
金髪碧眼の少女
アリスの絵を探していると画廊に訪れる。
まるで絵の中から抜け出してきたような可愛らしい少女。

『』⟵心の声

+++

カケル「あの、貴方の事をなんて呼べばいいですか?」

ウスイ「そうだねぇ…。会う人からは印象が濃いって言われるから『ウスイ』って呼んでくれるといいかな」

カケル「これは私とウスイさんが体験した、絵を探しに来たお客さんの不思議なお話」

+++

カケル、翡翠堂を訪れる。

ウスイ「いらっしゃい。おや?またきたんだね、お客さん」

カケル「こんにちは、ウスイさん」

ウスイ「今日も絵を見に来たのかな?」

カケル「いえ、実は…」

+++

ウスイ「まさか、絵のモデルになってくれと頼まれるとは。面白い驚きだね」

カケル「すみません…」

ウスイ「いいさ、遠慮せず描いてくれ。ただし、他のお客さんが来た時はモデルを降りさせてもらうよ?」

カケル「はい、わかっています」

ウスイ「お客さんは、高校生なんだっけ?美術部に入ってるの?」

カケル「はい。あと、私、カケルっていいます」

ウスイ「カケル…。へぇ、意外と男らしい名前なんだね」

カケル「もっと女の子らしい名前をつけて欲しかったんですけどね」

ウスイ「いいじゃないか、カケルって名前。1度聞いたら忘れないよ」

カケル「…褒めてます?」

ウスイ「君が褒めていると感じたなら、そうなんじゃないかな」

カケル「ウスイさんって、結構意地悪ですね」

ウスイ「そうかな?普通だと思うけど?」

カラン、と画廊の扉が開く

ウスイ「おっと、お客さんだ。悪いけどモデルはここまで」

カケル「は、はい…!」

ウスイ「いらっしゃい。おや、随分小さなお客さんだね」

カケル「……小さな?」

カケル、ウスイの後ろからお客を窺いみる

カケル『うわぁ…!金髪に青い目の女の子だ…!絵本の主人公みたい』

ウスイ「こんにちは。可愛らしいお客さん。うちに何かご用かな?」

アリス「あの…ここにアリスの絵はある?」

カケル「アリスの絵?」

アリス「うん、アリスの絵」

ウスイ「アリス、というと不思議の国のアリスかな?それを題材にした絵ならいくつかあるけど…」

アリス「そうじゃなくて、アリスの絵なの」

ウスイ「うーん…そうか。不思議の国のアリスじゃなくて、『アリスの絵』なんだね」

アリス「うん」

カケル「不思議の国のアリスじゃない、アリス?……鏡の国のアリスとか?」

ウスイ「さあ、それはどうかな?うちの画廊は広くないけど色んなものを飾っているから探しておいで。きっと『アリスの絵』もみつかるかもしれないよ」

アリス「うん、ありがと!」

アリスはそのまま展示ブースに駆け出した。

カケル「ウスイさん、いいんですか?あんな小さい子、展示ブースに行かせて…絵を破られたりするんじゃ…」

ウスイ「大丈夫だよ。あの子の身長じゃまず届かないしね。気になるなら、あの子と一緒に絵を見てきたらどうだい?カケルくん」

カケル「え?わ、私ですか?」

ウスイ「『アリスの絵』がなんなのか気になってるんだろ?」

カケル「うっ…バレてました?」

ウスイ「バレバレだったかな。遠慮せず行っておいで」

カケル「はい…」

+++

カケル、アリスと一緒に絵を見ていく

カケル「『アリスの絵』中々見つからないね。どういうのを探してるのかな?」

アリス「……」

カケル『あれ…?ノーリアクション?子供受けはいい方だったんだけどな…なんか、嫌われるようなことしたかな…』

アリス「あっ…!」

月にハシゴがかかっている絵の前で立ち止まる

アリス「あった!『アリスの絵』!」

カケル「え?これが『アリスの絵』?月にハシゴがかかっているけど…。でも、不思議の国のアリスとも鏡の国のアリスとも雰囲気が違うような…」

アリス「お姉ちゃん、この絵、タイトル見て」

カケル「『月の国のアリス』?」

アリス「うん。だから、不思議の国のアリスとも鏡の国のアリスとも違うの。これは、月の国に来たアリスの絵なんだよ」

カケル「そうなんだ。じゃあ、これが探してた絵?」

アリス「うん、そうだよ」

カケル「そっか。探してた絵が見つかってよかったね。……って、あれ?」

カケルが隣を見ると既にアリスがいなくなっている。

カケル「あれ?あの子は?」

+++

カケル、走ってウスイの元へ

カケル「ウスイさん!」

ウスイ「おや?どうしたんだい、カケルくん。絵は見つかったの?」

カケル「見つかったんですけど、さっきの子がいなくなっちゃったんです!展示ブースの中、何回も探し回ったんですけど全然いなくて…!」

ウスイ「そうなのかい?」

カラン、と出入口のベルが鳴る。

ウスイ「今の音…。帰ったんじゃないかい?」

カケル「帰った!?」

カケル、画廊の出入口の扉を開けて周囲を確認する。やがて、納得いかない顔でウスイの元へ戻ってきた

カケル「本当に帰ったのかな…?10歳くらいの女の子が曲がり道もない直進の道ですぐいなくなります?」

ウスイ「さぁね。でも展示ブースにはいなかったんだろ?それなら、帰ったって考えた方が自然だろう?」

カケル「うーん、そうなのかな?」

ウスイ「ところでカケルくん。お客さんは今のところ再び君一人になったわけだ。今だったらモデルになってあげられるよ?」

カケル「え、あ、じゃあお願いします」

+++

カケルが帰ったあと、ウスイが『月の国のアリス』の絵を見に来る

ウスイ「月にかかるハシゴ。そのハシゴに腰掛ける少女の絵。これが君の本来の姿なんだね。画廊に来ていた少女はこの『月の国のアリス』の主人公、アリス。この画廊に絵が運び込まれる途中で抜け落ちてしまったのかな?」

アリス「うん、ここに来る途中ではぐれてしまった」

ウスイ「元の姿に戻ってよかったね」

アリス「うん、よかった」

絵の中のアリスが僅かに微笑む

ウスイ「カケルくんには苦しい言い訳を使ってしまったな。でも、絵からはぐれたアリスを見ることが出来たのは、やっぱり彼女には魔力があるんだろうね。いつ魔法薬の作り方について教えよう。その前に絵を教えることかな。せっかく出来た彼女との縁。大切に育てないとね」

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