画廊に住む魔術師

夕霧

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画廊に住む魔術師~空白の額縁~

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いらっしゃい。
 おや?この前のお客さんじゃないか
 もう体調はいいのかい?そう。ならいいのだが…。今日はどういった用向きで?
 改めて絵画を見に来た?
 そうか。ふふ。
 いや、失礼。先日は気分を悪くしていたから、もうここには来ないものだと思っていたんだ。
 来てくれて嬉しいよ。
 見ての通り、お客さんは今日も君しかいない。じっくりと見ておくれ、そうすれば絵も喜ぶ

 (一枚一枚熱心に絵を見る客。絵の飾られていない額縁の前で立ち止まる)

どうかしたかい?
 ああ、その額縁か。外し忘れた訳じゃないよ。
 この額縁にはしばらく絵を飾らないと決めているんだ。
 特別な理由はない。
ただ、どんなにいい絵を飾ってもしっくりこなくてね。
 どうしても絵が額縁に負けてしまう。
 本来なら額縁が絵を立てるのだけれど、どうもこれはその役目を放棄しているようでね。
 放棄、というより拒絶に近いかもしれない。
 緻密な彫刻や模様など一切入っていない、どこにでもあるようなフレームなのに、不思議だよ。
 さぁ、ここで立ち止まっていないで次の絵を見てくれよ。隣にある作品もとても素晴らしいものだからさ

 (客が店から出た後)

 この額縁に飾られた絵は絵としての命を食われてしまう。
 命を食われた絵は作者から吹き込まれた思念がなくなり、絵に込められた意図がなくなってしまう。
 やっぱりあの子、魔法士の素質があるのかもしれないな。
 絵に吹き込まれた残留思念だけじゃなく、持ち主の生命エネルギーまで食ってしまう曰く付きの額縁。あれを前にして平然としていられるなんて、魔力があるか、霊力によって守られているか、どちらかだな。
 もしあの子に興味があるようなら今度は魔法薬を見せてみようか
ふふ、楽しみが尽きないねぇ
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