うさぎのキセル屋

夕霧

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キセル屋とぬらりひょん

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キセル屋
煙管を作って売っている兎。キセルの他に刻み煙草や香炉、お香を作っている。
煙管の修繕や掃除も受ける職人。
人望が厚く、世話焼き。べらんめぇ調でしゃべる、喧嘩っ早い江戸っ子。

ぬらりひょん
妖たちのご意見番のような存在。目が悪くあまり出歩かない。
物静かで思慮深く、知識が豊富。その知恵を求めて妖たちが彼の庵を訪ねてくる。

+++

キセル屋「ぬらりひょんの旦那、今いいかい?」

ぬらりひょん「おや。兎の。拙僧になにか用事かな?」

キセル屋「ああ、ちいとばかし話を聞いてもらいたくてよ…」

ぬらりひょん「なるほど。では、聞こうか。茶請けを用意するから、待っていておくれ」

キセル屋「(お茶を飲む)…旦那、このお茶渋すぎねぇか?」

ぬらりひょん「うん?そうかい?拙僧はちょうどいいが…そんなに渋いなら淹れなおそうか」

キセル屋「ああ、いいよいいよ。有難くいただくからよ…」

ぬらりひょん「…拙僧の味覚に合わせたから、味が濃いと感じるかもしれないな。配慮が足りなくてすまんな」

キセル屋「気にしなさんなって。それより…話なんだが…」

ぬらりひょん「おお、すっかり忘れていた。では、改めて聞こうか」

キセル屋「旦那も知っての通り、あっしはキセル屋だが、最近香炉や香木を売っているのさ。そうしたらどうだ。キセルよりも香炉のほうが飛ぶように売れていく。猫又の薬屋にも香使にでもなれば、と言われる始末…自信を無くしちまいそうでね…」

ぬらりひょん「ほぉ…そりゃ、ゆゆしき問題だな」

キセル屋「だろう?」

ぬらりひょん「それで、キセル屋の看板をたたむか悩んでいるのかい?」

キセル屋「…需要がない商売をしていても生活につながらねぇ。それなら、趣味の延長だがうまく軌道に乗り始めた香炉なんかで商売を進めたほうがいいのかなって思っちまってよ」

ぬらりひょん「だが…お前さんがキセルを売らなくなれば、常連は悲しむだろうな」

キセル屋「…ああ、確かに。九尾の旦那なんかは大泣きしそうだぜ。煙草が吸えなくなったら、俺はどうすりゃいいって、そこら中暴れまわりそうだ」

ぬらりひょん「なら、そういう客を大事にすればいい。一見客にこだわらず、お前さんのキセルを求めてくれる客にキセルや煙草を売ればいいさ。香炉や香木…いわゆる香使の商売は副業程度に構えておけばいい」

キセル屋「…そうか。そうだな。大事なことを見落としそうになってた。ありがとよ、旦那。そう言ってもらえて少し気分がよくなったぜ」

ぬらりひょん「この老いぼれが役にたったのなら本望だよ。また話を聞いてほしくなったら訪ねてくればいい」

キセル屋「ああ、頼らせてもらうよ、旦那」


数日後


キセル屋「ぬらりひょんの旦那のほうからあっしを呼ぶとは、何事かね?」
(ぬらりひょんの屋敷に入るキセル屋)

キセル屋「旦那、キセル屋。参りましたぜ?」

ぬらりひょん「おお、兎の。待っていたよ」

キセル屋「一体全体どうしたんです?…なんか、部屋ん中、花の甘ったるい匂いがするんだが…」

ぬらりひょん「ついさっき、ぬえがやってきてね。生け花が趣味のお前ならこの花々も生かせるだろう、と持ってきたんだ」

キセル屋「ぬえの旦那が?いったい何を思ってこんなに…しかも、こんなに乱暴に摘まれた花じゃ生け花なんてできないでしょう…」

ぬらりひょん「拙僧もそう思ってな。生け花には向かないといったのだが、いつものように話を聞かずに去っていった」

キセル屋「ぬえの旦那らしい、といえばらしいな。人の話を聞かず、嵐のように去っていく」

ぬらりひょん「うむ…。生け花にはできない花だが…このまま捨てるのも忍びなくてね…そこで、兎の。お前さんの技術を貸してほしいんだ」

キセル屋「あっしの?」

ぬらりひょん「この花を香り袋に詰めることができないだろうか。とてもいい香りがするし…難しい願いだとは承知しているが、頼めないだろうか」

キセル屋「花を、香り袋に?うーん…あっしの持っている技術じゃあ、ちょいとできないかもしれない…」

ぬらりひょん「そうか…いや、無理を言ってすまなかったな。これは、押し花にして栞にでもしておこうか…」

キセル屋「でも、旦那。目が悪いし、本なんて数える程度しか持ってねぇだろう?この部屋に大量にある花、枯れる前に押し花にできるのかい?」

ぬらりひょん「それは…」

キセル屋「…なぁ、旦那。置物って形だったらこの花たちを生かせるかもしれねぇ」

ぬらりひょん「置物?」

キセル屋「おう!あっしに任せてくれよ!」

間を空けます


ぬらりひょん「兎の…これは一体なんだ?瓶の中で、花が浮いているように見えるが…」

キセル屋「おうとも!文字通り瓶の中で花が浮いているのさ!こいつは植物標本と言ってな。西洋の妖ものに作り方を教わったのさ!確かハーバリウムっていう名前らしい!」

ぬらりひょん「はーばりうむ…ほぉ、西洋には本当にいろいろなものがあるな…興味深い」

キセル屋「これでぬえの旦那が持ってきた花も無駄にならねぇ。旦那の部屋も少し彩りがよくなった、一石二鳥ってやつさ」

ぬらりひょん「ああ、ありがとう兎の。…はーばりうむ、か…。兎の、拙僧にもこの花の瓶の作り方を教えてくれないか?拙僧も自分で作ってみたい」

キセル屋「もちろんですよ!旦那、いくらでもお教えします!」
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