6 / 15
キセル屋とぬらりひょん
しおりを挟む
キセル屋
煙管を作って売っている兎。キセルの他に刻み煙草や香炉、お香を作っている。
煙管の修繕や掃除も受ける職人。
人望が厚く、世話焼き。べらんめぇ調でしゃべる、喧嘩っ早い江戸っ子。
ぬらりひょん
妖たちのご意見番のような存在。目が悪くあまり出歩かない。
物静かで思慮深く、知識が豊富。その知恵を求めて妖たちが彼の庵を訪ねてくる。
+++
キセル屋「ぬらりひょんの旦那、今いいかい?」
ぬらりひょん「おや。兎の。拙僧になにか用事かな?」
キセル屋「ああ、ちいとばかし話を聞いてもらいたくてよ…」
ぬらりひょん「なるほど。では、聞こうか。茶請けを用意するから、待っていておくれ」
キセル屋「(お茶を飲む)…旦那、このお茶渋すぎねぇか?」
ぬらりひょん「うん?そうかい?拙僧はちょうどいいが…そんなに渋いなら淹れなおそうか」
キセル屋「ああ、いいよいいよ。有難くいただくからよ…」
ぬらりひょん「…拙僧の味覚に合わせたから、味が濃いと感じるかもしれないな。配慮が足りなくてすまんな」
キセル屋「気にしなさんなって。それより…話なんだが…」
ぬらりひょん「おお、すっかり忘れていた。では、改めて聞こうか」
キセル屋「旦那も知っての通り、あっしはキセル屋だが、最近香炉や香木を売っているのさ。そうしたらどうだ。キセルよりも香炉のほうが飛ぶように売れていく。猫又の薬屋にも香使にでもなれば、と言われる始末…自信を無くしちまいそうでね…」
ぬらりひょん「ほぉ…そりゃ、ゆゆしき問題だな」
キセル屋「だろう?」
ぬらりひょん「それで、キセル屋の看板をたたむか悩んでいるのかい?」
キセル屋「…需要がない商売をしていても生活につながらねぇ。それなら、趣味の延長だがうまく軌道に乗り始めた香炉なんかで商売を進めたほうがいいのかなって思っちまってよ」
ぬらりひょん「だが…お前さんがキセルを売らなくなれば、常連は悲しむだろうな」
キセル屋「…ああ、確かに。九尾の旦那なんかは大泣きしそうだぜ。煙草が吸えなくなったら、俺はどうすりゃいいって、そこら中暴れまわりそうだ」
ぬらりひょん「なら、そういう客を大事にすればいい。一見客にこだわらず、お前さんのキセルを求めてくれる客にキセルや煙草を売ればいいさ。香炉や香木…いわゆる香使の商売は副業程度に構えておけばいい」
キセル屋「…そうか。そうだな。大事なことを見落としそうになってた。ありがとよ、旦那。そう言ってもらえて少し気分がよくなったぜ」
ぬらりひょん「この老いぼれが役にたったのなら本望だよ。また話を聞いてほしくなったら訪ねてくればいい」
キセル屋「ああ、頼らせてもらうよ、旦那」
数日後
キセル屋「ぬらりひょんの旦那のほうからあっしを呼ぶとは、何事かね?」
(ぬらりひょんの屋敷に入るキセル屋)
キセル屋「旦那、キセル屋。参りましたぜ?」
ぬらりひょん「おお、兎の。待っていたよ」
キセル屋「一体全体どうしたんです?…なんか、部屋ん中、花の甘ったるい匂いがするんだが…」
ぬらりひょん「ついさっき、ぬえがやってきてね。生け花が趣味のお前ならこの花々も生かせるだろう、と持ってきたんだ」
キセル屋「ぬえの旦那が?いったい何を思ってこんなに…しかも、こんなに乱暴に摘まれた花じゃ生け花なんてできないでしょう…」
ぬらりひょん「拙僧もそう思ってな。生け花には向かないといったのだが、いつものように話を聞かずに去っていった」
キセル屋「ぬえの旦那らしい、といえばらしいな。人の話を聞かず、嵐のように去っていく」
ぬらりひょん「うむ…。生け花にはできない花だが…このまま捨てるのも忍びなくてね…そこで、兎の。お前さんの技術を貸してほしいんだ」
キセル屋「あっしの?」
ぬらりひょん「この花を香り袋に詰めることができないだろうか。とてもいい香りがするし…難しい願いだとは承知しているが、頼めないだろうか」
キセル屋「花を、香り袋に?うーん…あっしの持っている技術じゃあ、ちょいとできないかもしれない…」
ぬらりひょん「そうか…いや、無理を言ってすまなかったな。これは、押し花にして栞にでもしておこうか…」
キセル屋「でも、旦那。目が悪いし、本なんて数える程度しか持ってねぇだろう?この部屋に大量にある花、枯れる前に押し花にできるのかい?」
ぬらりひょん「それは…」
キセル屋「…なぁ、旦那。置物って形だったらこの花たちを生かせるかもしれねぇ」
ぬらりひょん「置物?」
キセル屋「おう!あっしに任せてくれよ!」
間を空けます
ぬらりひょん「兎の…これは一体なんだ?瓶の中で、花が浮いているように見えるが…」
キセル屋「おうとも!文字通り瓶の中で花が浮いているのさ!こいつは植物標本と言ってな。西洋の妖ものに作り方を教わったのさ!確かハーバリウムっていう名前らしい!」
ぬらりひょん「はーばりうむ…ほぉ、西洋には本当にいろいろなものがあるな…興味深い」
キセル屋「これでぬえの旦那が持ってきた花も無駄にならねぇ。旦那の部屋も少し彩りがよくなった、一石二鳥ってやつさ」
ぬらりひょん「ああ、ありがとう兎の。…はーばりうむ、か…。兎の、拙僧にもこの花の瓶の作り方を教えてくれないか?拙僧も自分で作ってみたい」
キセル屋「もちろんですよ!旦那、いくらでもお教えします!」
煙管を作って売っている兎。キセルの他に刻み煙草や香炉、お香を作っている。
煙管の修繕や掃除も受ける職人。
人望が厚く、世話焼き。べらんめぇ調でしゃべる、喧嘩っ早い江戸っ子。
ぬらりひょん
妖たちのご意見番のような存在。目が悪くあまり出歩かない。
物静かで思慮深く、知識が豊富。その知恵を求めて妖たちが彼の庵を訪ねてくる。
+++
キセル屋「ぬらりひょんの旦那、今いいかい?」
ぬらりひょん「おや。兎の。拙僧になにか用事かな?」
キセル屋「ああ、ちいとばかし話を聞いてもらいたくてよ…」
ぬらりひょん「なるほど。では、聞こうか。茶請けを用意するから、待っていておくれ」
キセル屋「(お茶を飲む)…旦那、このお茶渋すぎねぇか?」
ぬらりひょん「うん?そうかい?拙僧はちょうどいいが…そんなに渋いなら淹れなおそうか」
キセル屋「ああ、いいよいいよ。有難くいただくからよ…」
ぬらりひょん「…拙僧の味覚に合わせたから、味が濃いと感じるかもしれないな。配慮が足りなくてすまんな」
キセル屋「気にしなさんなって。それより…話なんだが…」
ぬらりひょん「おお、すっかり忘れていた。では、改めて聞こうか」
キセル屋「旦那も知っての通り、あっしはキセル屋だが、最近香炉や香木を売っているのさ。そうしたらどうだ。キセルよりも香炉のほうが飛ぶように売れていく。猫又の薬屋にも香使にでもなれば、と言われる始末…自信を無くしちまいそうでね…」
ぬらりひょん「ほぉ…そりゃ、ゆゆしき問題だな」
キセル屋「だろう?」
ぬらりひょん「それで、キセル屋の看板をたたむか悩んでいるのかい?」
キセル屋「…需要がない商売をしていても生活につながらねぇ。それなら、趣味の延長だがうまく軌道に乗り始めた香炉なんかで商売を進めたほうがいいのかなって思っちまってよ」
ぬらりひょん「だが…お前さんがキセルを売らなくなれば、常連は悲しむだろうな」
キセル屋「…ああ、確かに。九尾の旦那なんかは大泣きしそうだぜ。煙草が吸えなくなったら、俺はどうすりゃいいって、そこら中暴れまわりそうだ」
ぬらりひょん「なら、そういう客を大事にすればいい。一見客にこだわらず、お前さんのキセルを求めてくれる客にキセルや煙草を売ればいいさ。香炉や香木…いわゆる香使の商売は副業程度に構えておけばいい」
キセル屋「…そうか。そうだな。大事なことを見落としそうになってた。ありがとよ、旦那。そう言ってもらえて少し気分がよくなったぜ」
ぬらりひょん「この老いぼれが役にたったのなら本望だよ。また話を聞いてほしくなったら訪ねてくればいい」
キセル屋「ああ、頼らせてもらうよ、旦那」
数日後
キセル屋「ぬらりひょんの旦那のほうからあっしを呼ぶとは、何事かね?」
(ぬらりひょんの屋敷に入るキセル屋)
キセル屋「旦那、キセル屋。参りましたぜ?」
ぬらりひょん「おお、兎の。待っていたよ」
キセル屋「一体全体どうしたんです?…なんか、部屋ん中、花の甘ったるい匂いがするんだが…」
ぬらりひょん「ついさっき、ぬえがやってきてね。生け花が趣味のお前ならこの花々も生かせるだろう、と持ってきたんだ」
キセル屋「ぬえの旦那が?いったい何を思ってこんなに…しかも、こんなに乱暴に摘まれた花じゃ生け花なんてできないでしょう…」
ぬらりひょん「拙僧もそう思ってな。生け花には向かないといったのだが、いつものように話を聞かずに去っていった」
キセル屋「ぬえの旦那らしい、といえばらしいな。人の話を聞かず、嵐のように去っていく」
ぬらりひょん「うむ…。生け花にはできない花だが…このまま捨てるのも忍びなくてね…そこで、兎の。お前さんの技術を貸してほしいんだ」
キセル屋「あっしの?」
ぬらりひょん「この花を香り袋に詰めることができないだろうか。とてもいい香りがするし…難しい願いだとは承知しているが、頼めないだろうか」
キセル屋「花を、香り袋に?うーん…あっしの持っている技術じゃあ、ちょいとできないかもしれない…」
ぬらりひょん「そうか…いや、無理を言ってすまなかったな。これは、押し花にして栞にでもしておこうか…」
キセル屋「でも、旦那。目が悪いし、本なんて数える程度しか持ってねぇだろう?この部屋に大量にある花、枯れる前に押し花にできるのかい?」
ぬらりひょん「それは…」
キセル屋「…なぁ、旦那。置物って形だったらこの花たちを生かせるかもしれねぇ」
ぬらりひょん「置物?」
キセル屋「おう!あっしに任せてくれよ!」
間を空けます
ぬらりひょん「兎の…これは一体なんだ?瓶の中で、花が浮いているように見えるが…」
キセル屋「おうとも!文字通り瓶の中で花が浮いているのさ!こいつは植物標本と言ってな。西洋の妖ものに作り方を教わったのさ!確かハーバリウムっていう名前らしい!」
ぬらりひょん「はーばりうむ…ほぉ、西洋には本当にいろいろなものがあるな…興味深い」
キセル屋「これでぬえの旦那が持ってきた花も無駄にならねぇ。旦那の部屋も少し彩りがよくなった、一石二鳥ってやつさ」
ぬらりひょん「ああ、ありがとう兎の。…はーばりうむ、か…。兎の、拙僧にもこの花の瓶の作り方を教えてくれないか?拙僧も自分で作ってみたい」
キセル屋「もちろんですよ!旦那、いくらでもお教えします!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる