【第二章開幕】男子大学生は二度召喚される

皇める

文字の大きさ
6 / 33
第一章 一度目の異世界

04.優しい匂い

しおりを挟む
ユリウスside


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「ユリウス……あなたをひとり置いて逝ってしまう母を許してほしいとは言いません……」

「っ…かあさま!いやです、ぼくをひとりぼっちにしないでっ」

 かあさまの体が黒くて嫌なものにのまれていく。

「うっ…ユリウス、愛しています。私とあの人との最愛の子……」

「かあさまああああああああっ!」




◇◆◇



 カーン、カーン——

 ザッ、ザッ……

 かあさまが埋められていく。

「ユリウス……アトラの事、残念でした。不治の病だなんて……うぅ」

 シスターが僕を抱きしめながらそう言った。

 不治の病?シスターはなにを言ってるの?かあさまはあの黒くて嫌なものに殺されたんだ。

「ユリウス、今日からここの孤児院でみんなと一緒に暮らしましょう」

 一緒に暮らす?僕の家はかあさまと一緒に暮らしたあの家だけだ!

「あっ、ユリウス!何処へ行くのです」

 僕はシスターを振り切って、家へ帰った。

 かあさま、かあさま!ひとりぼっちは嫌だよ、寂しいよ……




 暗くて静かな家、かあさまの優しい匂いが日に日に消えていく。

 何もする気が起きない……ご飯も食べたいとも思わない。このまま何日も食べなければ死ぬだろう。そしたら、かあさまの所へいける。




 コンコン——

「ユリウス?ユリウス居ますか?ご飯、ちゃんと食べていますか?」

 毎日のようにシスターが訪ねてくる。

「ユリウス!お願いだからここを開けてください」

 僕はシスターを無視し続けた。

 ドアの前に食べ物を置いていってくれるが、僕はそれに手をつけなかった。


 あれから何日が経っただろうか、もう母さまの匂いはしなくなった……


「ぐすっ、かあさま……かあさまぁ」

 寂しいよ、ひとりぼっちは嫌だよ。誰か、誰かぁ……!


 その時、体の底から何かが溢れてきた。同時に体が焼けるような痛みが襲ってきた。

「かはっ、ゔぅ……」

 あぁ、やっと死ねる……そう思った時——
 優しい匂いがした。




 そして光の中から誰かが現れた。

 僕はそのまま意識を失った。
 でも誰かが僕の頭をずっと優しく撫でてくれていたのは知っている。

 かあさまよりも濃くて優しくていい匂い。





 ◇◆◇





 誰かが僕の頭を優しく撫でてくれている。

(あったかくてきもちいい……)


「あっ起こしちゃったね、ごめ……」

 この人は誰だろ?なんで固まってるの?

 はっ、しまった!僕の目は誰にも見せちゃいけないんだった。



『ユリウス、あなたのこの目をかあさま以外に見せちゃダメだよ。約束出来る?』

『それはぼくのめが、ほかのひととちがって、へんだから?』

『どうしてそんな事を言うの?誰かに何か言われたの?』

『……こじいんのこに、へんだっていわれた』

『そうだったの……かあさまはこの愛くるしいお目め、凄く綺麗で大好きだよ。でもあなたの安全のために、むやみに見せないで』

『はい、かあさま』


(どうしよう、どうしよう!かあさまとのやくそく、やぶっちゃった。へんっていわれるかな)


「きれい……」

「っ!」

 僕は慌てて布団の中に隠れた。

(え? いまなんて?)


「怖がらせてごめんね。えっと……俺の名前は秋也っていうんだ」

「……シューヤ」

「うん。君のお名前は?」


 あの時と同じ優しくていい匂いがした。


「……ユリウス」

「ユリウスくんか!いいお名前だね」


 この人はかあさまと同じで僕の目をみて綺麗と、言ってくれる。それが凄く嬉しかった。





 それからシューヤは僕のお世話をしてくれた。

 シューヤは僕のためにぜりーというものを食べさせてくれた。甘くて美味しかった。シューヤと居るとかあさまとの日々に戻れた気がして、心が暖かくなった。



「もふもふ……最高」

 シューヤは僕の耳が好きみたいでよく撫でてくれる。暖かくて凄く気持ちいい。


「ユリウスくんはいま、いくつなのかな?ちなみに俺は19歳だよ」

「ご、5さい……」

「そっか~、ねぇここには両親……お父さんとお母さんと住んでるのかな?」

(かあさまは……)

「……かあさまとすんでた。とうさまは……しらない」

「そうなんだ。お母さんは今どこに居るのかな?」

 かあさまは死んでしまった。あの黒くて嫌なものにのまれて、もう二度と会えない。

(かあさま…かあさまっ!)

 体が震え、涙が溢れてくる。

 その時、優しい匂いが僕を包みこんだ。

「ひっく……うぅ、あ〝あ~」

 もう涙なんてとっくに枯れたと思ってた。


「大丈夫、俺が側にいるよ」

 シューヤはずっと僕の背中を優しく撫でてくれた。

 もうひとりぼっちは嫌だ。シューヤお願い、ずっと僕の側にいて——













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足:ユリウスの家には結界が張ってあります。そのためシスターはドアを開ける事はできません。

葬儀の時、ユリウスはフードをかぶっていたので、シスターは知りません。

母親は魔法使いでした。ユリウスを守るためにいろいろと残しているので、それは追々出てきます。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜

BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。 婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。 しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。 王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。 転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。 リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて…… 婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。 仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。 2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

処理中です...